第66話

二人はしばらく抱き合っていると、カタクリから体を離した。
カタクリは自分の口元を覆っている襟巻に手をかける。
しかし、いざ取ろうとすると手が止まってしまう。





バケモノ!!





カ「………」

『…カタクリさん、お願いします。あなたのすべてが知りたいんです』



そんなカタクリにユキノは微笑み、襟巻に手をかけているカタクリの手に自分の手を優しく重ねた。
カタクリは意を決し、襟巻を引き口元をあらわにした。
その口元は大きな2本の牙が見え、普通の人よりも大きな口がユキノの目に入ってきた。
カタクリは恐る恐るユキノからの言葉を待つ。



カ「(この口のせいでガキの頃からバケモンと呼ばれてきたが、別に気にしていなかったし何かあった時は力でねじ伏せてきた。だからこんなにこの口をあらわにすることがこんなに怖いと思ったことはない…が、こんなにもユキノに見せるのが怖いと思うとはな…)」



自嘲気味にカタクリは心の中で自分の女々しさに笑う。
ユキノはカタクリの頬に掌を添えると、そのままカタクリの口元の牙に口づける。



カ「!!」



突然のことにカタクリはさらに体を強張らせる。



『別にあなたの素顔が人とかけ離れていたって、あなたを嫌いになることはありません。決してあなたのお顔で愛したわけじゃありません。あなたの存在、すべてを愛しているんです』

カ「…俺もだ」



カタクリはフッと口元を緩ませると、今度は自分からユキノの唇に自分の唇を押し付けた。
決して自らの飛び出ている牙でユキノの肌を傷つけないように、とてもやさしく。









カ「ところで…お前のその恰好…」

『//実はスムージーさんから…』





ス「ユキノから兄さんを誘えばいいんじゃないか?ガレットに言って、ベビードールを借りに行くから、それを着ろ。そうすればきっと兄さんは…そのあとは分かるだろう?」





『って…//』

カ「………(スムージーの奴、まったく)ユキノ、その恰好はもう二度とするな」

『え?』

カ「(理性が保たない…)



カタクリは一人、自分の必死に戦っていた。





*