綺麗


「きれーい……」





夕暮れの海

抜けるような空

雨上がりの虹

萌え立つ山の緑





「手塚の瞳……」





うすべにの桜

窓際のガラス玉

水溜りに映る月

雪が降った朝





「あの……、」

「なぁに?」

「……近い……。」





君が綺麗と思うもの

この世の中に幾つあるのか

君が綺麗と思うもののひとつ

僕の瞳、を覗き込む世田谷の瞳





「きれい、手塚」

「……。」

「綺麗……」





朝方の靄

天辺からの街並み

星の降る夜

君のいる風景

どんな所にも、時間にも、人にも、誰にでも、綺麗は存在する。

必ず存在する。





「そんなに近づくと射程に入る。」

「……ちゅーする?」

「……したい。」

「ちゅーしたい?」

「もうする。」





滑り落ちた髪も

透き通るような肌も

桃色の口元に浮かべた

花咲くような笑顔も。





「……女子はそうやってすぐ綺麗だとか可愛いとか言うからな。」

「あんまりアテになんないってこと?」

「褒めてもらえるものの中に入れて光栄ですよ?俺は。」





君が称えた僕の瞳に、君の綺麗を灼き付けろ。

姿だけでなく声も、感触も、感情までも。





「女子がきれーいとかかわいい〜とか言うのはね、それを自分のモノにしたーい、って願望が」

「……。」

「少なくともあたしには、あるよ」

「……世田谷、……、」

「……手塚はどうかな……?」





輝く宝石も

煌く朝日も

君の綺麗には敵わない。

肩の細さ

息の温度

潤む瞳

なにもかも、全部





「今の、凄い綺麗だった。」

「……ふふ、でしょ?」

「綺麗だよ、世田谷。世田谷も綺麗だ。」





君の綺麗を俺に灼き付けろ。

忘れられないくらい俺に、強烈に、灼き付けろ。




綺麗
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
161009


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