某月某日四時


働きたくないでござる





「働きたくないでござる……。」





何だこれ。

ずっと朝からぐるぐる回る。

働きたくないでござる





「働きたくないでござる……!」

「文句言っている暇があるなら働け、世田谷。」

「……ブラック企業……!」





ああそうだ。

世田谷がこないだずっと言ってたんだ。

働きたくないでござる。





「手塚先輩」

「手塚せんぱーい」

「これ、代表委員会の女子で作ったんです」

「いつもお世話になってるんで!」

「休憩の時に食べてくださいねー」





出来れば人よりも、誰よりも。

働きたくないでござる。





「なにこれおいしそう!!」

「貰った。」

「は〜、流石会長、モテますなぁ……」

「関係ないだろう。」

「だって、あたしにはプレゼントくれる後輩とかいないもん」

「……。」

「すいませんツッコミお願いします」

「は?なんの?」

「……、じゃあ、」





働きたくないでござる。

人よりも働きたくはないでござる。楽して生きていたいでござる。

毎日何の苦痛もなく、安穏とそしてだらだらと過ごしていたいでござる。

では俺は?





「世田谷にこれをやろう。」

「おいっ!横流し!!」

「いつも付き合ってくれる世田谷にせめてものご褒美ということで。」

「いやいや……これは会長のご褒美だよ……?あとから怖いよ」

「対価として見合わないならもっと要求しても良い。」





自分の仕事を誰かに押し付けられるほど器用ではない。

だからと言って一人ですべてを背負い込むことも現実不可能だ。

働きたくはないと言いつつも君は。

今日もこうやって俺に付き合って居残っている。





「どうしたの会長……ひょっとしてこないだの、働きたくないでござるが効いてる?」

「地味にな。でもそれを俺も、世田谷も、他の誰かに押し付けたりは出来ない性格だろう?なら耐えるしかない。」

「……そうやっていうからサボれないんじゃんもーう」

「世田谷は良い奴だからな。」

「だまされないぞ……!」

「その中身も絶対好きだと思った。」

「モノに釣られるわけじゃないぞ!!ちくしょーう!!」





働くのもたまにはいいものだ。

見合うだけの報酬があるのならね。

さあ、それを俺は世田谷に与えることが出来るのか。

君が望む報いをすべてあげることが出来るのか。





「もー!やるよ!やります!!働きます!もうこれ貰うね!?」

「どうぞ。」

「ああっ、もう、ホントに好きなヤツだし!!」

「やっぱり。絶対世田谷が好きなヤツだと思ったんだ。」

「もう、なんか、悔しい」

「たまには働くのも良いと思わないか?」

「……会長が、……ご褒美くれるんなら」

「さっき物には釣られないって言ったくせに……。」

「あたしが満足できるご褒美頂戴ね?会長」





誰だってみんな出来れば働きたくないのでござる。

でもそういう訳にはいかないから、日々それぞれに報いを求めて働くのでござる。

そうして世の中は今日も成り立っているのでござる。

君は俺に何を求めるのか。

それは、今の俺には想像もつかないのでござる。




某月某日四時
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
161002


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