銀のペンダント



休み時間。
岩下さんに呼び出されていた私は、待たせないようにと駆け足で屋上へ向かっていた。
ガチャンと重い扉を開けると、風にそよぐ長い黒髪がまず目に入った。
振り返ったその主は、息を切らす私を見て、目を細め微笑んでいる。

「あら、随分急いだのね」
「岩下さんを、待たせてしまっているかなって…」
「そんなに走って…転んで怪我でもしたら怒るわよ」

階段で一度躓いてしまった数分前を思い出し、苦笑いを返した。
ちょっとムッとしていた岩下さんは一転、くすっと微笑んで私を見つめている。

「倉田さん…今日誕生日なんですって?」
「…そうです、よくご存じですね」
「当然よ。私からはこれをあげるわ」
「…え、いいんですか?」
「私のプレゼントが受け取れないの?」
「いえ、まさか岩下さんから頂けるとは思ってなくて…」

素直に驚いた気持ちを伝えると、満足そうに笑う岩下さんから、小さな箱を手渡された。
紺色の、高級感がある箱だ。
岩下さんからもらうことと見慣れないそれに、受け取った手が少し震えている気がする。
開けてみて、と促され従うと、ワンポイントのあるシルバーネックレスが入っていた。

「え、こんな……いいんですか?」
「私が貴女のために選んだのよ」
「……嬉しい、です」
「そのペンダントを身に付けていれば、悪霊に襲われずに済むし、呪いなんかも跳ね返すわ」
「……え?」
「お守りと思って大切になさい」

何か一瞬、仰々しい単語が聞こえたような…。
それはにっこりと笑う岩下さんの美しさと、その岩下さんからのプレゼントをもらった喜びで、すぐにかき消された。



EHL.