キャンディひと粒



「あ、倉田さあん!」

教室から出た直後、不意に後ろから呼ばれて振り向くと、細田くんが大きな手をぶんぶんと振っていた。
踵を返し細田くんの元へ向かうと、彼は軽く息を切らしていた。

「細田くん、どうしたの?」
「今日、誕生日なんだよね?これをあげるよ」

どこから知ったのか、確かに私の誕生日は今日だ。
クラスメートから聞いたのだろうか。
細田くんはズボンのポケットをごそごそとまさぐると、大きな掌に存在感のある飴玉を乗せて見せた。

「…飴玉?ありがとう」
「これはね、ただの飴じゃないんだよ」
「普通の飴玉より大きいね」
「ふっふっふ…それだけじゃないんだな」

にやりと口角を上げる細田くんは、何となく怪しさを潜ませている。
飴玉を眺めてみると、真っ黒な包みに覆われていた。

「…何味なの?」
「ラズベリー味だったと思うよ」
「…すっごい弾けたりしない?食べて痛くならない?」
「普通の飴だから痛くならないよお」
「……?」
「大事な時の前に食べると一番効果があるみたいだよ。
テストの前とか、デートの前とか…。試してみてね」
「…ありがとう」

にっこりと笑みを湛え、細田くんはゆっくりと歩いて去っていった。
私はその大きな背中を暫く見送る。

…気軽な気持ちでは食べられない代物をもらってしまった。
しかしまさか、細田くんからプレゼントをもらえるとは思っていなかった。
でも、大事な時の前に食べると一番効果がある、って…。
どういうことだろう?
首を傾げながら、とりあえずその飴玉をポケットにしまい込んで下校した。



EHL.