「お前は、どうする?」
同じ顔をした片割れが困ったように笑ったまま俺を振り返って言ったその声は、今でも脳裏にこべりついている。どうする?と聞かれ、お前たちと同じ道には行かねえよ・と吐き捨てるように言ってやれば、そうかと、またあいつは笑った。いつも、笑ってる奴だった。顔も、声も、髪の色も。全部同じで、家族以外はほとんど見分けがつかないと言われるくらい似ている双子だった。性格も同じだったら、ニールみたいだったら。他の奴らにとって最高に幸せだったんだろうなって、幼い頃からずっと思い続けていた。俺はニールとは違う。あいつみたいに、破壊を壊すために破壊を選んだりしない。こんな世界、変えられない。変えられないのなら、少しでも救える方法を探せばいいだけだ。
「それでも、私たちは戦いました。たとえ偽善だろうが、矛盾していようが、世界を変えたいって思ったから、戦っただけです」
その声が聞こえた瞬間、ライルの目が醒めた。睡眠と覚醒の狭間で味わう独特の気怠さが身体を襲う。肺に溜まった二酸化炭素を総て吐き出し、伸びた前髪をかき上げた。空調は効いているはずなのに背中にびっしょり寝汗をかいている。気持ち悪い。最悪な目覚めにひとつ舌打ちし、枕元のデジタル時計で時刻を確認する。朝の四時過ぎ。起きるにはまだ少し早すぎた。だがこのまま二度寝するにも中途半端な時間なので、そのまま起きていることにした。ベッドから降りてひとつ大きく伸びをする。
目を閉じると鮮明に思い出す。忘れたくて忘れたくてたまらないことなのに。あの女の表情と、声。
ニールの最期を知っている、幼馴染の女。
一時世間を騒がせたソレスタルビーイングに属していた、その生き残り。ソレスタルビーイングは崩壊したと聞いている。その生き残りもほとんどいないらしい。だから彼女は頼るべきものもおらず、ただ広い世界に放り出された小さな存在。だが、その彼女を救おうとか、援助しようとか、そんな気は全く起こらなかった。
ソレスタルビーイングで出会った男(死んだらしいが)の忘れ形見を産んだ直後の彼女と病室で話したのが最後。あれ以来、彼女とは会っていない。むしろ十年間音信不通だったのだから、今更度々会うというのもおかしな話だろう。
…もともと、俺はニールと違ってあいつには嫌われていた。あれから三年。あいつが、ノエルがどこで何をしているのかは知らない。知りたくもない。生きているのか死んでいるのかも大して興味ない。この三年間、ほとんど思い出すこともなく、記憶から消え去っていたことだったのに。どうして今頃夢に見たりするんだろうか。訳が分からない。
微かに残る睡魔と苛立ちに眉を顰めながら、ライルはまだ薄暗い部屋のカーテンを開ける。日の出が遅い季節。まだ、世界は暗いままだった。
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