ものの一瞬で変わり果てた景色、消えた海の代わりに現れた砂漠や、それを照らす3つの太陽。疲労を抱える十代を気遣いながら下へ降りると、砂漠のなかにぽつんと佇むデュエルアカデミアは地層が不自然に途切れているのを見た。名前はそれを分析するジムの話を黙って聞いた。


ーーこのデュエルアカデミアごと、どこかへと飛ばされてきてしまったということ
。そしてこの景色に明日香は見覚えが足りないということ。


「明日香、いつの間にそんな大変なことに…」
「この3年間色々あったのよ…でもまさか学園ごと異世界に飛ばされるなんて…」


そのとき、つい先ほどまて立っていたヘリポートの台座が揺らぎ始める。動揺しながらもその場を離れようとするが、不意に翔の足を何者かが掴んだ。そこにはあの時、身を呈して十代達を助けた、オブライエンの姿。崩落する台座から全速力で駆け出した。


そうして駆けぬけ続けてやっと学園が見えてきても、それで終わりではなかった。学園の方から飛び立ってゆくーー


「ハーピィ・レディ…?」


十代の懐から飛び出たハネクリボーがーー何故か他の者の目にも見えるようだーーハーピィ・レディの方へかけてゆくも、はたき落とされて砂漠の上に転がってしまう。


「おそらく、この世界ではデュエルモンスターズのルールがそのまま適用される…」


そのとき、どこかからサファイア・ペガサスの声が聞こえた。自分を召喚するようにと囁くそれの通りにヨハンがサファイア・ペガサスを召喚すれば、サファイア・ペガサスの攻撃にハーピィ・レディは抱えていた2人の男を落とす。そのままハーピィ・レディはどこかへと消えて行った。


精霊の姿を見たことのないものたちは戸惑いながらハネクリボーを見つめていた。


「サファイア・ペガサスの攻撃力が1800で無事ハーピィ・レディの攻撃を退けたということは、やはり…」
「ああ、デュエルモンスターズの法則は変わっていない、ということだ」
「それならまだ対応のしようがあるわ、でもここにこのまま居続けたら次はどんな上級モンスターがくるかしれない…」


彼らを尻目に現状を分析していた名前とヨハンを、気づけば全員が見つめていた。


「あなたは一体誰ナノーネ…?」
「…自己紹介が遅れました。わたしはアカデミアの研究員、藤原名前と申します」
「研究員とは、わたしも把握していないでアール」
「鮫島先生だけがご存知なんです、どうか今は信じていただけないでしょうか?」
「名前はアカデミアが此処へ飛ばされる前からずっとこの島で精霊の研究をしていた。おそらく此処でも多いに役に立つだろう」


不審そうな眼差しを向ける教師2人だったが、ヨハンのその一言に敵意を和らげた。そうして重ねてかけられた校舎のほうへ戻ろうという言葉に従って、一行は再び歩き始めた。



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