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「馬鹿野郎!」


突然叫び声が聞こえて、名前は現実へと引き戻された。


「何をビビってるんだ、十代!」
「ヨハン…」
「お前に背負うものがないだと?…ふざけるな!」


隣に立つヨハンが真剣な表情で十代に語りかけているのを名前はみつめた。


「お前にはいつだって、皆の期待が集まっている!期待しちまった人間はなぁ、その人間の希望を、全部そいつに託すんだ!お前はいつだってそいつを背負ってるじゃないか!」


ーーお前だって、いろんなものを背負ってるんだ。
そう言ったヨハンに、名前は十代とヨハンが2人で交わしていた言葉たちを思い出す。デュエルをする、意味について。ヒーローデッキを使う、文字通りの学園のヒーローである十代のこと。強い瞳を取りもどした十代の、最後のドロー。


きっとこの少年は、こうやって人の期待を背負って、それを力に変えて。そうしていつも奇跡を起こしてきたんだろう、そう思った。本当にヒーローのように強い、けれど。名前は耳に響いていた声が頭から離れない。目の前で戦う少年が何かを握っていて、おそらくこのデュエルの勝敗に関わらずこの声の主は十代を諦めない。その理由は分からないけれど、黒幕の狙いは十代だ。確信を抱いた。


コブラのLPが0になり、デュエルエナジーが抜き取られて座り込んで。唐突に、光り輝く少年がコブラの目の前に現れた。にっこりと笑ってコブラに話しかける。


『約束だったね、コブラ。あの子とずっと一緒にいさせてあげるって』


そういう少年の笑みは悪意に満ちていることなんてすぐに分かるのに、その少年の腕がコブラの顔を抑えると、コブラは憑き物が取れたように幸福そうな顔を浮かべて。


「リック…」


ヨハンは咄嗟に名前を抱き寄せた。
だから名前はそれを直接見なかったけれど、何が起きたのかはすぐにわかった。コブラの名を苦しげに呼ぶ十代の声はこの場にいる全ての人の感情を表しているかのようだったが、それに反して光の少年は楽しげだった。


「さあ、共に行こう!新しい世界へ!」


辺りが光に包まれ、地面が揺れ動く。少年の笑い声が響き渡って、大きな光はアカデミア全体を囲うように広がった。


「…なんだ…此処は…!」


気づいた時に広がっていた光景、それに愕然とした表情でそう呟く十代の言葉が虚しく響く。其処に広がっていたのは、果てしなく続く砂漠であった。



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