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「先生は俺となまえがこうなるってわかってたわけ?」

「さあ、それはどうかな、僕は預言者じゃないからね


でも、君にとって彼女は必ずこれから必要な存在になるとは思っていたよ」


これはまだ、本人達が気づいていない部分も含めて。
死柄木弔がこの先ヒーローに仇なす敵の中心人物になる上で、必ず。


「その割には最近全然一緒にいられないんだけど。」


「はは…しょうがないさ。なまえはまだ、自分自身のことについて知らなすぎるからね。ドクターにも色々協力してもらってそのお陰で彼女の持つ個性については大方判明しただろ?」



「ほんと、回復キャラのいいとこ取りだな」


なまえの自身の無意識の無効化する個性は、意識的に他者に使うことで治癒能力を発揮することがわかった。
しかし、例えば死んだ人を生き返らせたり、取れた腕や足を戻通りくっつけるなどといったものではなく、

あくまで怪我を治すレベルのものらしい。



「もうすぐなまえの学校の休みも終わるのに…なあ先生アイツあんなクソ高校に通わせてなんか意味あるのかよ」


以前弔がなまえになんで雄英高校の経営科に通うか尋ねたところ、

「1番の理由は、はやくちゃんとした職業に付いてお金を稼ぎたかったんだよね。」

そのために、雄英に入ったの。雄英の経営科って首席で卒業するとすごくいいとこ就職出来るって聞いたから。


と少し困りながら言っていたのを思い出す。



「意味ならあるよ、弔。


彼女のような『一見普通の子』が実は『普通ではなく』敵側の人間であることの意義は大きい。間違いなく雄英高校に、更にはヒーロー社会に衝撃が走る。


元々なまえは君に出会う前から酷くアンバランスだ。
誰もが彼女を普通の女子高生と思い込んでいる。
誰もこれまで毎晩男の欲の捌け口になっていたなんて信じないだろうね。


それに1番は、ああ見えてなまえ殆ど周りの人間に興味がない。
そうやって育ってきたからね。誰が死のうが消えようが全く関係ないんだ。
なまえは間違いなくこちら側の人間だ。

そして今、君が彼女の特別になった上であの学校に居続けることは充分意味があるよ。」


「なんか先生のがアイツのことよく理解してるような気がして複雑なんだけど。」

「僕は君の、君たちの『先生』、だからね。」

2人が知らないこと、気が付かないことを知っていて当然だ。




「そういえばドクターもなまえの頭の回転の速さに驚いていたよ。えらく気に入って自分の技術をぜひ継がせたいって。」

色々な知識や技術を教えれば、間違いなく彼女は吸収するだろう。
彼女の頭脳は生まれ持っての才能だ。

「あぁ、それで先生たちが今実験してる脳無?だったか?そういうのも手伝ったりするんだっけ。

まあ、アイツ戦闘力はないからその方がいいな。
なるべく危険な目には合わせたくない。」





もっともっとお互いがお互いを必要として依存して離れ難い存在なればいい。

さぁ、死柄木弔。次に君がやることは何か考えるんだ。必要なものはひとつずつ、確実に揃ってきているのだから。