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「そろそろ体育祭だから各自そのつもりで準備をする様に。」

なまえは、昼休み前の授業で担任教師が言っていた言葉を思い出す。
準備をする、というのはなまえたち経営科にとって参加する競技を決めるという意味合いではない。
参加自体は自由だったが
経営科のなまえたちに求められていることはそういうことではなかった。

ヒーロー候補生たちを仮に経営者だとして誰をどのように自分だったらマネジメントしたいのか
毎年の体育祭の前に自分達が資料を元に
事前に予測して、
体育祭当日は実際の成績とその答え合わせをする日だった。

その中でも一般的に実は1年生は予測がしにくい。
入学したてで、まだわからないことが多いのだ。

パラパラと今年の1年の資料をめくりながら一人一人の顔と個性を眺めていく。

(……この子…オールマイトの個性と似てない…?)
『緑谷出久』と名前が書かれたページで思わずなまえの手は止まる。



「なまえちゃーん!!チャイムもう鳴ったよ〜お昼行こ!」


「え?あ、うん今行くね。」

「わ!もうさっき配られた1年生の子の資料見てるのえらすぎる!!」

「ねえねえそんなことよりイケメンいた?」

「あはは、どうかな。何人かいたかも。」


そんなあまり中身のない話をしながらなまえたちは食堂へ向かう。


全ての学年、学科が一堂に会する食堂は毎日生徒でごった返している。

空いている席を見つけ、なまえたちが食事をはじめようとしたその時だった。


ーーーセキュリティ3が突破されました。
生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してくださいーーー

「え、なにこれ?!」

「わかんない!でも早くわたし達も行かなきゃ!!なまえちゃんもはやく!!いこ!!」

友人に手を引かれなまえも立ち上がる。
しかし、食堂にいた生徒が一斉に出口に向かうため思うように身動きが取れない。
人の波に流され、なまえは友人達とはぐれてしまった。

「きゃっ……」

ドンッと後ろからの大群に押されその衝撃に耐えきれずよろけてしまう。

(やばっ……倒れるっ…)


そう思い目をギュッと閉じた瞬間




「だ、大丈夫ですか!?!?」

誰かが咄嗟になまえの腕を支えていた。

「ありがとう、助かりまし…あ、」


それはなまえがさっきまで資料で見ていた、

ヒーロー科1年、緑谷出久だった。

思わず彼の顔をじっと見てしまう。


(わわわわ!めちゃくちゃキレイな人だ)

見つめられた出久は顔を真っ赤にしながらなまえを支えていた手を離す。



少し離れたところで、誰かがこれはマスコミが押しかけただけだから安心してくださいと言う声が聞こえ、事態は収束した。


「本当ありがとう。さすがヒーロー科の1年生だね。」

「い、いえ、とんでもないです!」


そう言ってなまえはその場を立ち去る。

(あれ、でもなんであの人、僕が1年ってわかったんだろ)







「「なまえちゃーーーん!!!!!!」」

友人と無事合流すると2人は泣きそうな顔でなまえに謝罪した。

「ごめんね、はぐれちゃって!」

「ケガしてない?!」

「平気平気!ありがと。」

「でもマスコミすごいよね!雄英バリア壊しちゃったんだって」

「え?」

それ、めっちゃ心当たりあるな。
そう思わずにはいられないなまえだった。









帰宅後

「今日うちの学校来て、雄英バリア壊したの弔だよね」

「そうだけど何?」

「そのせいでひどい目にあったんだからね!!!!!!」

ぷんぷん怒るなまえに
怒っても可愛いんだよなと事の元凶の本人は全く見当違いのことを考えていたのだった。






(補足)

なまえちゃんといつもいる友達は2人います。1年の時からずっと変わっていません。
弔のこと以外はどうでもいいって感じのなまえちゃんですが
2人にはそれなりの感謝をしています。
多分なんかあったらこの2人だけは助けてあげるんだろうなと思います。