01
酷く懐かしい夢を見た。
あまりにもリアルで残酷な過去の夢。
「……っ」
一瞬、過去に戻ってしまったのかと錯覚してしまうくらいに。
思わず起き上がったなまえの意識は
自身の身体をまとう気だるさによって一気に現実に戻されていく。
ああ、今見たのは夢だったんだと徐々に実感したところで
腕を軽く引っ張られ、元々、力の入っていなかったなまえの身体は再びベットに沈む。
先程まで隣で寝ていた男
死柄木弔は少し不機嫌そうになまえの腕を引いて再び自分の腕の中に閉じ込めた。
(そういえば)
今日は一緒いたんだった。
雄英高校の生徒であるなまえと敵連合のリーダーとして暗躍する死柄木は現在、
生活のリズムのせいもありそこまでの長い時間を共に過ごしてはいない。
昨晩は、たまたまなまえが死柄木の元に赴き、2人が顔を合わせた途端、死柄木に自室に連れられ、そのまま有無を言わさず
なまえの意識が途切れるまで死柄木に求められ、身体を重ね続けた。
彼は独占欲も支配欲も何もかも一切隠さず彼女を愛し
それを当然のように受け入れる彼女の世界には彼が常に中心にいた。
お互いがお互いに依存していく。
それが2人の当たり前だった。
「ごめんね弔、起こしちゃった。」
「勝手にどっかいくな。」
ああ、機嫌が悪そうなのはそのせいか。
「あのね、そうじゃなくてね。昔の夢をみたの。」
「俺に会う前?」
「そう。
本当にね、昔に戻っちゃったみたいだった。夢って怖いね。」
もしもあなたのいない世界のままだったら私はどうなっていたんだろうね。
そう、ポツリと呟く声ををかき消すようかに
「なまえ」
死柄木はなまえの名前を呼んで唇を重ねた。
そのまま2人は、啄むように何度もキスを重ねる。
しばらくしてようやく静かに2人の唇は離れた。
「これでもまだ俺がなまえの側にいないとか思うなら
今からもっかいするか?」
「……思わないです…というかごめん今はもうそんな体力少しも残ってない!」
何をするつもりなのか理解したなまえは首をブンブンと横に振り焦りながら答えた。
「だろうなァ」
そんな姿に死柄木は満足げに笑いながら、普通の人間なら触れたらいとも簡単に壊してしまう彼の手をなまえの手に重ねた。
その手をなまえも握り返す。
彼女だけが持つ特別。
2人だけの世界。
「あのね、弔。
大好きだよ。」
「知ってる。」
こっちだって好きだなんて簡単な言葉じゃ表せないくらいだ。
「まだ全然起きる時間じゃないね。」
「明日はずっとそばにいろよ。」
「うん。」
明日だけじゃなくて
さいごのさいごまであなたのそばで
「おやすみ」
こうして2人は再び眠りについた。