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あの後、友達の家に行くから。と連絡する際に何となく気まずくて、
弔ではなく黒霧に電話してしまったなまえ。

しかし、よくよく考えると



(私、何も悪くなくない?!)

と気づいてしまった。



無理やり抱いたのも、
全然目を合わせてくれないのも、
キスしてくれないのも
名前を呼んでくれないのも

弔だし。



そのことが悲しくてご飯が食べれなくなって、寝れなくなって
結果、倒れてしまったのも
自分の頭の中が弔のことでいっぱいなのも


全部全部。

弔のせいだ。




「弔のばかぁ…謝るまで絶対戻らないんだからね…」




ふと隣を見ると
友人2人は先程まで盛り上がって話をしていたがいつの間に寝てしまったらしい。

高校生になって初めてできた友達。
最初は、なんとなく話しかけられて、
特段仲良い訳でない思っていたが、

自然とここまで3年間一緒にいてくれた友人。
自分のことは、殆ど何ひとつ真実を話すことは出来ないのだけれど、
それでもそのことを疑わず、ずっと一緒にいてくれた。
今はこの2人にとても感謝している。



きっともうすぐ、会えなくなるから。
できるだけ早めに感謝は伝えておきたい。


でも、それくらい想像する未来には、弔なしには考えられなかった。




(会いたいよ…)




向こうが謝るまで会わないという決意が揺らいでしまう。



でも!今は我慢!!!
そう言い聞かせてなまえはその日
眠りについた。




そして次の日、当初から予定していた通り木椰区の大型ショッピングモールに向かう3人。

無事に新しくスマホを買い替え、
その後は洋服を買ったり、カフェでお茶をしたりして過ごす。


そんな中。

「え?ショッピングモールが一時閉鎖?」

「なんか敵がこのショッピングモールに来て、うちの生徒に接触する事件が起きたみたい。」


そんな話をする2人に、まさかそれが自分の恋人だと思いもしなかったなまえ。


「そしたら、今日は用事も済んだし帰ろっか。」

と提案した。

「そだね。また明日から学校だ〜。」

「はやく夏休みになってほしいね。3人でどっか行こ!」


「じゃあ私、家逆方面だからこっち行くね。」

「じゃあねなまえちゃん」
「また明日ね〜!」


こうして2人とわかれたなまえ。
今日は自宅に戻ろう。
家を留守にしっぱなしというのもあまり良くないもんな。掃除とか換気とかしないといけないし。

と、一応形式的に存在する殆ど帰らない自分の家に戻ろうと足を進める。










しかし、そこで事件は起きてしまう。
なまえは、突然何者かに口を手で塞がれ、身動きが取れないよう腕を掴まれ
薄暗い、人通りの少ない細道に無理やり連れられてしまったのだ。

拘束されたまま辺りを見回すと面識のない男が数人、そこにはいた。




(なに?!この人達もしかしてさっき言ってたショッピングモールにいるっていう敵??)





「オイオイ!なんだよこの嬢ちゃんまだ意識あるぞ!お前の眠らせる個性はどうしたんだ。」


「知らねーよ!でもコイツめちゃくちゃいい女じゃねーか、もうこのまま意識あるままここでやっちまおーぜ。」



数人の男から逃げる術なんてなくて。
恐怖のあまり声も出ない。



(やだッ…やだよ…)


「たすけて…弔ぁ…」

無意識に名前を呼んでいた。




自分を拘束していた男の手かなまえのシャツに伸び、ボタンを引きちぎり、下着に届きそうになった
その時だった。














「なァ、おまえら何してんの。」

「あぁ?誰だテメ…

うわあああああああああああ…!!!!!!!!!!」


固く目を閉じていたなまえの耳に誰よりも聞きたかった声が届く。
そっと目を開けると目の前の男はボロボロと崩れ、既に死体となっていた。
こんなこと、出来る人は1人しか知らない。

「とむら…?」


あまりの恐怖におかしくなってしまったのだろうか。

そう思ったけれどやっぱり目の前には誰よりも会いたかった彼がいて。


「ッ…ぅ…」


視界が涙で歪む。

助けにきてくれたことが、どうしようもなく嬉しい。


いつだって助けを求めると私を救い出してくれる。




「なんかコイツやべえ逃げろ!!!!」


「はァ?

おまえら、俺の女に手ェ出して生きて帰れると思ってんのか?」

そりゃ無理だろ。




そう言ってあっという間に残りの男も破壊してしまった。


「なまえ、もう終わったよ。」


「ぅん…」


そして弔はなまえに自分の着ていたパーカーを着せた。

「なまえ、一緒に帰ろ。」

そう言ってなまえに手を差し伸べる。



「うん…。うんっ…ありがと…弔…」

なまえはその手を握り返した。






そして、木椰のショッピングモールでのこの事件は死者4名。
目的不明。この日のトップニュースとして報じられたのだった。