07


なまえが目が覚めるとそこは見たことがない場所。


「よォ、やっとお目覚めか?」


そして目の前には先程の男。

さっきの出来事は夢じゃないんだと思うと同時に、色々な疑問がなまえの頭を駆け巡る。



というかまず、



「あ、あの……


どちら様でしょうか」






「……」

「……」


2人の間に気まずい沈黙の時間が流れる。

しばらくお互いの顔を見つめあっていた2人だが
男はなまえに
「死柄木弔」

と自身の名前を伝えた。



「死柄木さん…


あの、助けていただいてありがとうございます。でも、何で、
何で私をわざわざ私を助けてくれたんですか?
私を助けたことで死柄木さんにとって有益なことなんてないような気がして。」




というかこの男、冷静に考えると、今は外しているが先程見た時は人の手のようなものをいくつもつけていて、雰囲気的にはどう見ても怪しかった。
何も考えずこの男についてきてしまったが、
この後、この男に人身売買などされてこれまでより劣悪な環境下で生きていくのではないか等と最悪の考えを巡らせ、
なまえは顔面蒼白になった。





「興味をもったきっかけは個性。」


しかし、返ってきたのは予想にしてなかったもので。思わず言葉を遮った。




「個性…?待ってください、私、個性なんて持ってないです。勘違いなんじゃ…」






「……。本当に何も知らないんだな。」




その言葉にきょとんとした顔をして首を傾げるなまえ。


「俺の持つ個性は、五指で触れたものを破壊させる。母親も、隣にいた男もそうやって壊した。見てただろ。

でも、なまえは俺が触れても何もなかった。それがどうしてか、わかる?









それがなまえの個性なんだよ。」



なまえの元々大きな目がさらに大きく見開かれた。


「私の…個性?」


これまで自分に個性があるなんて考えたこともなかった。
学校には高校に入るまでろくに通うことができなかったため、幼い頃から誰かに自分の個性の有無に関して調べてもらう機会がなかった。



そして死柄木曰く、自分の個性は自分の意識に関係なく、なまえに害があるものに作用するもの。

なまえに自覚がなかったのも仕方ないと言えば仕方ないことだった。


未だに信じれない、といったなまえに、

死柄木は自身の手の平をなまえに向ける。
なまえもその手におずおずと自分の手をあわせる。


「ほらな?」



と言って笑う。


なまえとっては、自覚のない個性がきっかけだが、それによって見ず知らずだった死柄木に助けられた。



誰も気づいてくれない。誰も助けてくれない。そう諦めていたのに。



目の前の男は一瞬でいとも簡単にそれを壊してしまった。


もう、それだけで充分だ。


「私は、これからあなたのために何ができますか…?」





そう、ぽろぽろと泣くなまえの姿に、死柄木はこれまで感じたことがないくら程の独占欲がこみ上がるのを感じた。








「俺のモノになって。」





個性だけじゃなくて身体も心も。



なまえの全部を自分のものにしたい。