06



部屋に誰かがいる。
異常な空気の中でなまえはすぐに違和感の理由に気がついた。

自分の家に見知らぬ他人がいるなんて考えたこともなく、
なまえは突然の出来事に思わず立ち尽くす。


回らない頭を必死に働かせてまず思いついたのは、強盗だが
こんな金のなさそうな家に侵入するメリットが全くわからない。


「だ…れ…?」


ようやく口から出た言葉に見知らぬ男はクルリとこちらを見る。

そこには、体中に人の手のようなものをつけた細身の男と黒いもやのものを纏った男。

そしてそのうちの一人が






「待ってたよ



みょうじなまえ」



と、何故か自分の名前を呼んだ。




「私の名前…なんで…?」






「なまえ…なまえ…お願い…お願いたすけて…」



その言葉にハッとしなまえは母親と、床一面に広がる血の海と
人の形をほぼ失った崩れてしまった男の死骸に気が付く。


「ひっ……」




人の死体を見るのはもちろん初めてで、一気に恐怖が身体を支配した。






「なまえ…ごめんね…ごめんね…お母さん、謝るから


お母さんのこと見捨てないで…なまえっ…」



「……っ」


その言葉になまえは思わず目を瞑る。




なまえを長年縛り付けた呪文のようなその言葉を聞くと
意思とは関係なく、勝手になまえの手は母親に向かって伸びる。



「おかあ…さ…ん」








しかし、その手を掴んだのは、母親ではなく



死柄木だった。






そしてなまえをそのまま抱き寄せる。





「やっ…」




「ほんと、呆れるくらい健気で可哀想だなァ。





親から見捨てられて、

頑張って雄英に入ったのに
学校もヒーローも誰も助けてくれない。
嫌になっちゃうよな。






なぁ、なまえ、今から俺が救ってやるよ。」









そう言ってもう片方の4本の指ででなまえの母親の首に触れた。

「たすけ…助けて…」


「だからちゃんと見てろ。」




彼の最後の五本目の指がなまえの母親に触れた瞬間ボロボロと崩れ去る。

その様子を見ていたなまえは

自身を縛りていたものがこの世から確かに消えていく安堵感にも似た感覚を抱きながら
死柄木の腕の中で意識を手放した。






「戻るぞ黒霧」


これでなまえは俺のモノだ。