意味もなく、二人で笑い合う


「ここ…?」

上京当日。
送られた地図を辿り、なまえはある高層マンションの前まで来ていた。

「さすがプロヒーロー、お金持ちだあ…」

市民の命を守ってるんだもんな、そりゃそうか。と納得しながらオートロックのエントランスで
教えられた部屋番号を押す。


「かっちゃーん、なまえです。着いたよ」

『おう』

一言返事が聞こえ自動ドアが開く。


自宅の大きさ何倍もありそうなエントランスホールを抜け、エレベーターに乗り最上階のボタンを押す。


(耳がキーンってなる!!)


兎に角こんな所に来たことがないので全てが初体験。しかも今日からここでお世話になるなんてにわかに信じられない。

部屋番号を確かめインターホン鳴らすと玄関の扉が開き、
幼馴染みとの久しぶりの再会。
懐かしさより未だにこの環境に慣れなくてぼーっとしてしまう。
「なまえ」

「あ、かっちゃん!」

「突っ立ってないでとりあえず部屋入れ」

「う、うんお邪魔しまーす…」


「迷わずちゃんと来れたんか?」

「うん、もらった地図見たら迷わなかったよ」

「荷物も届いたけどあんな少なくていいのかよ」

「洋服と好きな本くらいだもん。必要なの」

「届いた荷物、なまえの部屋置いといた、部屋ここな」

いくつかある部屋の扉のひとつをあける。

「ここ?!こんな大きな部屋使っていいの?」

「驚きすぎたろ」

「驚くよ!実家の自分の部屋よりずっと広いもん、なんかやっぱり悪い気がする…」

「俺がいいつってんだからいいんだよ」

「もはや私、玄関とかでいいのですが…」

「逆に邪魔だわアホ、いいからこの部屋使え
あと部屋の中の説明するからひとまず手荷物置いてこい」

「はい、分かりました…
あ、これかっちゃんにお土産、地元で有名な辛いお菓子だよ」

手土産を渡し部屋に持ってきた荷物を置く。ベットも机もクローゼットもあって、暮らすには充分だ。
わざわざ用意してくれたのかな、そんなことを思いながら、待たせてはいけないと思い、リビングへ向かう。

「風呂はあっち、洗面台とかも全部その横。まァどっちかが風呂はいってりゃ分かるだろ」


「洗濯物は乾燥機?こういうタワーマンションってベランダに洗濯物干せないんだよね」

「大体はめんどいから乾燥機だな。干すなら風呂場」

「ひゃー私、乾燥機、使うの初めて!」


「キッチンはそこな、勝手に使っていいし、滅多に使わねーし足りないもんあったら買ってこい」

「はい!質問です、かっちゃんはいつも何時に家出る?」

「大体7時半」

「了解しました!」

「食費とか必要なものは俺持ちでいいからこのカード使え」



そう言って合鍵と共に差し出された、魔法のカード(ブラック)。




「だ、ダメだよ!というか食費も水道代とか電気代とかの光熱費も半分払う!」

「光熱費は元々払ってんだし食費もなまえ一人増えたくらいじゃ変わんねぇだろ。今まで外食ばっかだったから家で作る分減るかもしれねーし。なんもいらねェ」

「わかりました…その分、家事は任せて!なんでもする!床舐めて掃除しろって言われたら言う通りにする!」

「んだよソレ…そんなこと言うやつ今どきいねーよ」

「…だよね」

思わず顔を見合わせ、おかしくて声を上げて笑い合う。
それは小さい頃から変わらなくて。

幼馴染みという特別は、大人になっても変わらない。


「かっちゃん、改めてこれからお世話になります」

「おー、世話してやんよ」




こうして2人の共同生活が今日から始まる。




「あのねかっちゃん、ちょっと確認なんだけど付き合ってる人かいる?」

「いねーよ、そんなもん作って遊ぶ余裕ねーわ」

「よ、よかった…さすがに幼馴染みでもかっちゃんが彼女持ちだったらかっちゃんにもお相手の方にも申し訳なかったもん」

「なまえはどーなんだよ、大学時代の彼氏とか」

「いなーい!毎日生活するので精一杯だったもん」

「ふーん。ま、じゃあ一先ず夕飯の買い物行くか」

「うん、かっちゃん何食べたい?」

「麻婆豆腐」

「任せて!得意なやつです」

「激辛で頼むわ」

「はーい」