スキマを埋めて
温もりが欲しくてたまらない時がある。
そばにいてくれる人がいるのに、私を好きだと言ってくれる人がいるのに。
それだけじゃ物足りなくて、心の中にポッカリと空いた風穴のような隙間が疼く。こういう気持ちになる時期が、不定期に訪れる。
そんな私の様子に気がついたのか、仗助君は優しく微笑んで私の顔を覗き込んだ。
「どーしたんスか、ユリさん」
「…ん、なんでもないよ」
「なんでもないってツラじゃないっスよ。そんな顔してたらすぐ分かっちゃうって」
年下の恋人である仗助君は、私が出会った人の中でもとりわけ優しい。一緒にいると心が温かくなって、自分が自分でいることを許してくれるような、そんな存在。
一応私は仗助君よりもいくつか年上で、本来なら頼られてもおかしくない立場だというのに、私は彼に頼りっぱなしで、心も委ねっぱなしだ。
「よしよし。俺の胸貸したげるから。んな顔すんなって」
「仗助君…」
ぎゅ、とその大きな身体に抱き締められる。
額から頬、耳朶へ。ちゅ、ちゅ、と音を立てて仗助君の唇が私にキスを落としていく。
「…好きっスよ。ユリさん」
そして至近距離でその綺麗なブルーの瞳と目が合ったかと思うと、半ば覆いかぶさるようにして仗助君が唇を重ねてきた。
「…ん、」
食むようにしながら、吸い付きながら。
お互いの唇を余すことなく、深く感じるようなキス。
これ以上は余計な欲望が生まれてしまいそうだと思い、仗助君と距離を置こうとした。
けれど後頭部と腰にがっちりと回された手は、それを許してくれる気配がない。
「…ん、はぁっ、仗助、く…」
「これで終わるワケないっしょ?」
服の第一ボタンを外された、と思ったら、首筋にちゅうっと吸いつかれる。
ぴくりと肩を震わせておそるおそる仗助君の顔を見上げると、そこには変わらず優しい仗助君の瞳があった。
「寂しいって思ってたんでしょ、ユリさん」
「え、どうして…」
「分かるに決まってるじゃないっスか。俺の大切な人なんだから」
だから、と耳元で仗助君の低い声が響く。
「今からユリさんの事、俺で埋めてくんで覚悟してください」
「…うん…」
満たして欲しかった。
大好きな貴方で、私の空っぽの部分のところを、余すことなく。
少しずつ外されていくボタン。それと同時に、私の心も絆されていくのを感じた。
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