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「っ、…んぅ…っ」
槙島さんの唇が私の唇に押しつけられる。
重なり合うことを繰り返していくうちに、それは段々と水音を含んで空気へと溶けていった。
やめて、離して。
そう言っているつもりなのに、隙間なく重ねられた唇と唇の間で、私の声はただのくぐもった音にしかならない。
「ん、はぁ…っ!」
苦しくて、酸素を求めて口を開く。
すると槙島さんはそれを狙っていたかのように舌をねじ込んで、私の舌を絡めとっていく。
「ん、んん…っ、ふ…」
執拗に口内を弄んでいく舌。
何度も何度も角度を変えていくその口付けに、頭の芯がとろけていきそうになる。
唇を離した槙島さんは、私のシャツブラウスの下から手を滑らせ、その大きな掌で胸の形を確かめるようにゆっくりと揉んでいる。
「ぁっ、待っ…」
「…どうして?」
「どうして…って…そんなの決まって…」
「君のそんな表情を見て、やめろって言う方が無理だと思うけどな」
「まるで、もっとしてほしいって言ってるみたいだ。」そう耳元で囁かれ、吐息が耳にかかってびくりと身体が反応する。
その反応を槙島さんが見逃すはずもない。
「なるほど、君は耳が弱いようだね」
「え?…ん、ぁ…っ!」
ちゅうっ、と耳たぶが吸い上げられたかと思うと、耳の中に生温い感触。槙島さんの舌が耳の中を這いずり回る音で、頭の中が一杯になる。
どうにも言えない、耐えがたい感覚が襲ってきて、我慢しても甘い声が漏れてしまう。
「は、ぁんっ…」
「…ユリ、君は可愛いな」
「も、やめてくださ…、ぁっ…」
耳たぶを甘噛みされたまま、ブラウスをたくし上げられる。現れた薄黄色の下着を見た槙島さんの両眼が、楽しげに細められた。
背中とソファの間に差し込まれた手に、いとも簡単にブラのホックを外される。それすらも上にずり上げられて、私の胸の双方を覆うものは何もなくなってしまった。
「ゃ、ん…っ、は…」
片方を指先で弄ばれ、片方は槙島さんの唇によって吸い上げられる。彼の巧妙な指先が与える快感に、どうしようもなく溺れそうになってしまう。
彼の舌先が胸の頂をぺろりと舐める。
槙島さんは顔を上げると、私の顔を間近で見下ろした。
「そんなに気持ちいいかい?」
「ちがっ…」
「強がらなくていい。こんなに頬を染めた上に目を潤ませて言われても、説得力がないからね」
槙島さんはそう言って、自身のシャツのボタンを上から外し始めた。徐々にあらわになっていく上半身に、私は思わず息を飲む。
服の上からじゃ全然分からなかったけれど、なんて美しくて、鍛え抜かれた肉体なんだろう。
でも身体の線は細く、肌は透き通るように白くて、そのギャップにくらくらする。
シャツを脱ぎ捨てた槙島さんは、少し鬱陶しそうに髪をかき上げた。
「抱かれてみたいと思ってるんじゃないか?」
「?!思ってません…っ」
「そうかい?僕は今、ユリを抱いてみたいと強く思っているけどね」
「…」
今の言葉に何か違和感を感じて、動きが静止する。目の前には変わらず優雅に微笑む槙島さんのカオ。
「ああ、気づいたかな。そう、一昨日君を抱いたというのはウソだよ」
「…え!?」
「ウソをついたのは悪かったと思ってる。でも」
ギシ、とソファが軋む音。
槙島さんが私に再び覆いかぶさり、今にもキスをしてしまいそうな距離まで顔を近づける。
「ユリ。僕はね、君がどんな表情を見せてくれるのか、楽しみで仕方がないんだ」
「表情…?」
そう、と彼は口の端を持ち上げる。
「覚えていないだろうけど、あの夜、君は片思いの相手を想って涙を流していたんだ。それがとても美しくて思えてね、その想いを邪魔したいと、壊してみたいと思ってしまった」
「っ、」
ぐ、と腕が押さえつけられて、再び唇が重ねられる。それはすぐに離れていった。
「君のいろいろな表情が見たい。それを独占したい。…こんな気持ちは初めてだ」
「…」
「僕自身も戸惑っているんだよ。これが恋慕、というやつなのかな。考えてみたけどまだ分からない」
「…んっ…」
首筋に槙島さんの舌が這い、そこにきつく吸い付く音と感触。この吸い方だと、跡が残ってしまっているかもしれない。
「僕に教えてくれるかい?…ユリ」
彼はそう言って美しく微笑む。
どう言葉を返すべきか分からなくて戸惑う私に、槙島さんはためらいなく欲望を振りかざした。
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