叶わない恋よりも




世の中、叶わない恋の方が多いと思う。




「あの…え、エレンっ」

「ん、なんだ?ユリ」

「よかったら今度の休日、私と街に出かけない?」

「その日はミカサと訓練の予定があるんだ。悪いな」

「そ………そっか」



あえなく撃沈。
一緒に街に出かけようって誘うまでに費やした勇気と決意と覚悟と時間を、どう処理すればいいんだろう。


片思いの相手は同じ104期のエレン・イェーガー。
彼にとって私は同期であり、それ以上でもそれ以下でもないことはわかっている。


わかっているからこそ、今の状況を脱却するために行動を起こしたというのにこの結果だ。



「はぁ…」



兵団の食堂で落ち込む。
今の時間は昼食時よりも少し遅く、私以外に人は見当たらない。

…やばい、黙って座ってたら泣くかも、これ。




「オイ、何をしている」

「え…?あ、リヴァイ兵長…」



声をかけられて顔を上げると、そこに食事を乗せた盆を持った兵長が立っていた。


途端に緊張が走る。

相手は調査兵団の要、人類最強と謳われるお人だ。私のような下っ端新兵なんかが口を聞いていい相手じゃない。



「なんだ。ずいぶんとシケたツラをしているようだが」

「えっと……その…」



普段、業務以外の会話なんてほぼしない。
それなのに兵長は盆を私の向かいの席に置き、そこに膝を組み、テーブルの上に肘をついて私を見据えた。

わかっていたけど目つきが鋭すぎて怖い。言えないけど。



「大方、エレンのヤツにフラれたか」

「そうなんですー…。って、えぇっ?!なんでそれを?!」

「ハッ、なんだ、図星か」



ちょっと待って欲しい。
どうしてほぼ関わりのない兵長が、私の想いを知っているのだろう。



「なぜ分かったんだ、というカオをしているな」

「そりゃそうですよ…そもそもどうして私の気持ちを知ってるんですか」

「見てたからな。お前が兵団に入った時から」

「え…?」



何を見ていたというんだろう。

まさか、私がエレンにうつつを抜かして訓練をおごそかにしていたのを見張っていたということだろうか。

え?じゃあ大事な作戦会議や集会の時、エレンのことばっかり見てて話がほとんど頭に入って来なくてあとでめちゃくちゃ慌てたのとかも見られてた?



「……」

「汗が出てるぞ。お前何か勘違いしてるだろう」

「勘違い…?」

「まあいい。お前がエレンにフラれたってんなら話は早ぇ」

「は…?」



一体、なんの話をしているんだろう。

混乱で話についていけない私をよそに、兵長はカップに入っていた飲み物を一口飲んで言った。



「俺に惚れさせてやるよ、ユリ」

「………」

「叶わねぇモン追うより、そっちの方が合理的だと思うがな」

「………」

「そういうワケだ。覚悟しとけよ」



そう言い放つと、兵長は食事を始めた。
呆気に取られてその光景を見つめていると、兵長は苛立ったように言う。



「オイ、聞いてんのか」

「え…?えっと、はい…」

「ならいい」



私が小さく頷いたのを見ると、兵長はまた平然と食事を続けた。

結局兵長が何を言っているのか理解ができぬまま。



けれど私は後日、兵長の宣言通り、目の前にいる人類最強のこの人物に、恋をすることになる。



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