服従者
私に注がれる少し熱っぽい視線が、たまらなく好きだ。緒方さんの顔がゆっくりと近づいてきて、私はそんなことを考えながら目をつむる。
望んでいた感触と熱が唇を覆う。
緒方さんの唇が、私の唇を食むようにやんわりと挟み込む。
時々軽く吸われ、もっと、もっと、と思う。
舐めるように滑る唇をさらに深く感じたくて、私からも彼の唇を吸うと、緒方さんがほんの少しだけ唇を離した。
「どうした、今日は積極的だな」
「…そうですか?」
「ああ。いつもそのくらいスナオになってもいいんだぜ」
「…」
そう言って、にやりと口の端を持ち上げる彼はいじわるだ。そんな彼に「もっとキスして欲しい」だなんて乞うのが恥ずかしくて、少し悔しくて、私は視線を逸らした。しかし彼はそれすら許さない。
「俺を見ろ、ユリ」
「!…」
顎を持ち上げられる。
反射的に緒方さんを見ると、もう逃がさないとでもいうように、彼の視線が私の瞳を捕らえた。
どくりと心臓が大きく反応する。
どうしていいか分からずにいると、再び緒方さんが私に口付けた。
「…っ、ん」
さっきよりもずっと深くて、濃い。
貪るというのはこういうことを言うのだろうか、と頭の隅で考えた。
逃れようと緒方さんの肩に手を当てて押し返してみたけれど、そんなものは何の意味も成さない。むしろ彼を煽る材料にしかならなかったようで、私の後頭部は彼の大きな手によってがっちりと抑えられてしまった。
「…緒方さん…っ、苦し…」
「なんだ、求めてきたのはそっちだろ?」
「………意地悪ですね」
「ハハ」
低い笑い声が、私の耳に心地よく響く。
どんな言葉ですら愛おしいと思えてしまうのだから、私はこの恋愛において、すっかり服従者と化してしまっているのだろう。
それでも私は彼が好きだ。
好きで好きで、どうしたらいいのか分からないくらいに。
「ユリ」
名前を呼ばれて顔を上げると、お互いの視線が再び混ざり合う。それが合図だったかのように、緒方さんは再び私に口付けた。