努力と涙



「なんだ。また泣いてるのか?」


晴れた日の午後。私は木の陰で一人、ひっそりと座り込んで泣いていた。そこへ現れたのは、アークティック校からの留学生である、ヨハン・アンデルセンだった。


「…っ…別に」


横目でその姿を一瞥して確認したけど、声のする方を振り返ることはできなかった。今の私は思いっきり泣き腫らしているため、顔がきっとひどいことになっているだろう。
というか、なぜ「また」と言ったのだろう。私がデュエルで負けるとここで泣いていることを、彼は知っているということじゃないか。


「いいデュエルだったぜ。君も相手も、全力でさ」
「…見てた、の」
「ああ、見てたぜ。すごくワクワクした。あのターンの君が伏せたトラップなんて、オレじゃとても思いつかない」


私の心境とは裏腹に、背後から聞こえてくるヨハンの声色は生き生きとしている。


「…でも、私、また、負け…っ」


そう。負けてしまった。デッキを何度も見直して、何度も組み直して。これこそ私にとって最強のデッキだと、そう思ったのに。そう信じていたのに、負けてしまったのだ。

悔しくて悔しくて涙がでる。決して努力をしていないわけでは無いはずなのに、甘えて怠けているわけでもないのに、どうしてこうも力が及ばないのだろう。自分に足りないのは一体何なのだろう、と考え出すと、いつも止まらなくなってしまう。


「負けて悔しいのは痛いほどわかる。だってオレも、デュエリストだからな」
「…!」
「その…なんだ。何度か泣いてるとこ見かけて、ほっとけなくなってさ」
「…あなたに関係ないでしょ。あなたは首席で私よりずっと優秀なんだから。私なんかに構わないでよ」
「いや、それはできない」
「!」


ヨハンがこちらに近づいてきたのが気配で分かった。私の顔を見て笑いものにでもする気なのだろうか、と思い身を固くしていると、突然頭に柔らかな感触が降ってきた。


「君は頑張ってるよ、ユリ」
「…!」
「オレはちゃんと見てる。だからいつかオレとも、デュエルしてくれよな」


優しく頭を二度ほど撫でられると、その感触は離れていった。私の心臓はドキドキと高鳴り、思わず背後にいるヨハンを振り返った。


「…、い、今、なにして…?!というかどうして私の名前知ってるの?」


私は別に目立つ存在ではない。遊城十代や万丈目君、明日香さんなどと比べるとその存在は希薄であるに違いない。そんな私の名前を、アークティック校主席の彼がどうして知っているのだろう。


「…さあ、どうしてだと思う?」


ヨハンは意味ありげな笑みを浮かべると、踵を返した。そして軽く手を挙げ、「またな、ユリ」と言ってその場を去っていった。

その背中を見送りながら、未だうるさい心臓の音をなんとか収めようと胸に手を当てる。あんなに溢れていた涙は、気づけば止まっていた。


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