初コンタクト
アークティック校から留学してきた、ヨハン・アンデルセン。デュエルアカデミアの生徒は、その名前を知っている者がほとんどだろう。もちろん私もその中の一人だった。
ペガサス・J・クロフォードが作った、この世に唯一の宝玉獣カード。彼はその持ち主に選ばれた、ただ一人の少年なのだ。
メディアでもそれは大きく取り上げられ、私の周りでも話題になった。雑誌やインターネットでも彼の写真が出回っていた。デュエリストである者ならば、知らない者はいないといっても過言ではないと思う。
だから、となりに座る十代が「ヨハン?誰だそれ」と発言したのには少なからず驚いた。
「十代はそういうの、無関心そうだもんね」
「なんだ、ユリもヨハンって奴のこと、知ってるのか?」
「当たり前でしょ?知らないのなんて十代くらいー」
その時、扉が大きな音を立てて開いた。その場に集まっていた全員の視線がそこに集中する。
「…はぁ…はぁ」
私はその姿を見て目を丸くした。息を切らして前かがみになっているけれど、あそこにいるのは間違いなく、ヨハン・アンデルセンだった。
「いやぁ遅れた遅れた。オレ、方向音痴だからな。始業式の会場って、ここ?」
てへへ、と照れたように頭に手をやっている。鮫島教頭にこちらに来るように促されると、十代が「あ!」と大きな声を上げた。
「お前さっきの!なぁ、そこらへんでヨハンって奴、見かけなかったか?」
「ヨハン?あぁ、それオレのことなんだ」
「へ?」
どうやら二人はすでに顔見知りらしかった。いつ出会ったのかと十代に聞くと、ついさっきの話らしかった。
階段を下りて台の方へ向かう途中、ヨハンは十代に視線を送り軽く手を振ったあと、となりに座っていた私に視線を寄越し、軽く笑ってみせた。
「ーっ…」
なんて、なんて綺麗な翡翠色の瞳だろう。ほんの少し目があっただけなのに、私の心臓は大きく高鳴った。
『ねぇ、今朝の新聞見た?宝玉獣に選ばれた少年≠チて記事!』
『見た見た!ヨハン君でしょ?かっこいいよねー!私サインほしいーっ』
ふと、同じブルー寮の女生徒たちが騒いでいた光景が頭によぎった。そんな注目の的だった彼が、今目の前にいるなんて。
「ん?どうしたユリ。なんか顔赤いぜ?」
「え!?き、気のせいだよ…」
「ほんとか?」と覗き込んでくる十代をよそに、私は高鳴る胸を抑えていた。たった一瞬目があっただけなのに、こんなに魅了されてしまうなんて。
「(まさか、まさかね)」
ー恋に落ちてしまった、なんて。
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