君に愛を贈ろう



「…みんな、準備はいい?」



明日香の声が、万丈目君の広い室内に小さく響く。
入り口の扉の方に身体を向けたまま、私と十代、それに万丈目君、翔君、剣山君が頷き合った。


今日はヨハンのお誕生日。
サプライズでお祝いしたい、と私が協力をお願いしたらみんな快く引き受けてくれた。


テーブルの上に並んだケーキやお菓子、ジュースやノンアルコールのシャンパン。みんな手元にクラッカーを用意して、準備万端だ。


外から足音が近づいてくるのが聞こえる。そして軽くノックの音。



「おーいユリ、いるのか?なんで万丈目の部屋なんかに呼び出して…」



ドアノブを捻ったあとゆっくりと扉が開いて、ヨハンの顔が覗いた。

ー今だ!



「せーのっ、
ヨハン、お誕生日おめでとう!!!」



みんなで口を揃えてお祝いの言葉、それから弾けるクラッカーの音。飛び出す金銀のテープや紙吹雪が辺りをカラフルに彩った。



「…へ?」



当の本人はポカンとしたまま。
私はヨハンに駆け寄って、その手をぎゅっと握った。



「サプライズだよ!!みんなお祝いに協力してくれたの」

「そうだったのか!びっくりしたぜ。みんな、ありがとな!」



ヨハンの手を引いてみんなの元へと向かう。
彼はテーブルの上に並ぶ料理やデザート、飾り付けのロウソクやお花全てに感動してくれた。



「すごいな。これ、全部みんなが用意してくれたのか?」

「お料理は私とユリが作ったわ。ケーキはさすがに作る時間がなくて、万丈目君に調達してもらったんだけど」

「ちなみに花はオレと剣山が山で摘んできた!綺麗だろ?」

「ボクはロウソクや飾り付け担当っス!」



ケーキのくだりで、「オレの家のお抱えシェフが作った逸品だ。ありがたく食うんだな」と万丈目君が得意げに話した。

なんだかんだ言っていたけれど、万丈目君もヨハンのお誕生日をお祝いするのに割と乗り気だったみたいだ。



「うわぁ、全部旨そうだな!どれから食おう」



ヨハンが迷っているうちに、十代は彼より先にがつがつと料理を食べ始めている。さすが、早い。



「なぁ、ユリが作ってくれたのはどれなんだ?」

「えっとね、このグラタンとハンバーグと…あそこにあるキッシュ!あとそこのサラダには木苺が入ってるの」

「分かった。ユリが作ってくれたやつから食うよ」



そう言ってにこっと微笑む。
料理を取りながら、「ユリの手料理はオレが一番最初に食べたいからな」と囁いてくれて、私は嬉しくて顔が綻ぶのを止められなかった。




パーティーも滞りなく進み、豪華なバースデーケーキも小さな山となってきた頃。

みんな思い思いに食べ過ぎたのか、膨れたお腹に満足しながらソファで寛いでいた。



「ユリ、ちょっといいか?」

「うん?」



他のみんなには気付かれないくらいの声でヨハンに呼ばれる。そのまま二人でこっそりと部屋を出た。

外はもうすっかり夜になっていて、辺りには虫が鳴く声が静かに満ちている。ヨハンは私に向き合うと、その両腕を私の背中に回して抱き寄せた。



「ユリ、ありがとう。祝う計画してくれてたんだってな。本当に嬉しいよ」

「うん。喜んでもらえてよかった」

「あのさ。みんながいるから出来なかったけど、ずっとしたかった。…キス」

「…!」

「今ならこっそりできるな」



私の頭の後ろにそっと手を回すと、ヨハンは顔を傾けて私の唇にその唇を重ねた。柔らかくて甘くて、私はこの感触と温もりが大好きだ。



「…ん」



軽かったキスも、重ねるごとに湿った音を含むようになっていく。最後に少し長く唇を重ねると、お互いに見つめ合った。



「…もっとしてたいけど、戻らなくちゃな」

「うん。主役がいなくなっちゃうのはまずいもんね」

「なぁ。パーティーが終わったらさ」



ー後でもっと、キスしていいか?

熱っぽい視線を向けられて、どくどくと心臓が大きな音を立てる。私はようやくこくりと頷いて見せると、ヨハンは安心したように笑ってくれた。



「よし、戻ろうか」

「うん。あ、待って」



踵を返そうとしたヨハンを呼び止めて、私は彼の唇に触れるだけのキスを落とした。



「お誕生日おめでとう、ヨハン」



これこらもずっと、一緒にいさせてね。

彼は嬉しそうに微笑むと、ぎゅっと私の身体を抱きしめて、「ありがとう。大好きだよ、ユリ」と囁いてくれた。





Happy Birthday to Johann !
2020.6.11
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