【10 ヒーロー ーなまえー】

ステージに上がる。
黄色い歓声が会場を包み込む。

HOPEが応援してくれるから、私はどんなに辛くても絶対にステージに上がることを諦めない。
諦めたくない。

肩の痛みなんてHOPEの声援で吹き飛んでしまう。
後少しでステージも終わるという時に、ファヨンオンニがわざと肩にぶつかって来た。

あたりの痛さに一瞬表情が歪んでしまった。
そんな私に気付いたHOPEの心配する声が聞こえて、慌ててカメラに向かってウィンクをした。

大丈夫と伝えるために。

真っ先にステージを降りるとマネオッパが険しい表情で待っていて、終わったと思った。

『なまえ、お前肩怪我してんのか?』
「大丈夫です。」
『大丈夫じゃないだろ!見せてみ…』
FY『あんたのせいでステージ台無しになるところだったじゃない。ちゃんとしてよね。』

マネオッパの言葉を遮り、ファヨンオンニが不機嫌そうに私の前に立つ。
今これ以上肩を触られたら、きっと治るのに時間がかかる。

「…すみません。」

ファヨンオンニとマネオッパに頭を下げ、逃げるように楽屋まで走る。

残りはエンディングのみ。
それまでに痛みを紛らわせないと…。

ペディンを羽織り、水とウォヌさんからもらった氷嚢、自分の鞄を持って楽屋を飛び出す。

今肩どうなってるんだろう…。
使われてない控室を見つけて中に入ってペディンを脱ぎ衣装を脱ぐと、テーピングしてても分かるほど肩は青紫に腫れて上がっていた。

これは病院かな…。
取り敢えず痛み止め飲もう…。

本当は6時間あけないといけないけれど、今はそんな事言ってる場合じゃない。

痛み止めを飲み、氷嚢を当てる。

鏡に映る自分の姿を見て、ふっと笑いが込み上げて来る。
何でこんなボロボロになってまで続けてんだろうって、もう何回も思った。

だけど、約束したから。お母さんと。
それに、おっぱもデビューしてた。

もう一つの約束も、これで果たせるかもしれない。
だから、頑張らないと。

使われて居ない控え室にいても会場の歓声が聞こえて来た。
私はあの歓声があるから頑張って来れてる。

麻酔のようなファンの歓声が、私は大好きだ。
もう少し、あの歓声のために頑張ろう。

スマホが震える。
ユンジェオンニからのカトクだ。

そろそろエンディングだからステージ袖に集まるようだ。

よし、頑張ろう。

ゆっくりと立ちあがろうと壁に手を付いた瞬間、ぐわんと頭が大きく揺れた。

…え?
あれ…なんで?

立とうとしても足に力が入らない。
それどころか目眩もする。

…マネオッパに言わないと……

スマホのロックを解除しようにも、手が震える。
助けを…呼ばないと…。

這いつくばって控え室のドアノブに手を伸ばす。
…が、届くはずもなく。

鞄の中身も床に散らばってる。

それでも、とにかくここから出なきゃ…。
そんな思いで椅子の背もたれに身を預け立ち上がろうと試みる。

…あとちょっと……

ガシャン!!!

椅子が倒れて大きな音がなった。
こんなに大きな音がしたんだから誰か来てくれる。

…コンコン

ほら!
控えめにノックされたドア。

「……けて。」

助けて。

そう言いたいのに声が出ない。
変な汗も出て来た。

「…あ、開けますよ…?」

ドアの外から恐る恐る声が聞こえて、ゆっくりとドアが開き、薄暗い部屋に廊下の灯りが差し込む。

「…誰かいま…うぎゃあああ!!!ってなまえさん!?」

…今うぎゃあって……。

少しだけ視線を上げる。
あ、この人…、オッパのグループの…、名前、なんだっけ?

「なまえさん!!!どうしたんですか!?てか、何でこんなところに!?それより大丈夫ですか!?起きれます!?お、起こしますよ?」

少し緊張した表情のまま、私の体を支えて体を起こしてくれた。

「…ありが、と…。」
「いいえ!それより誰か呼んできます!なまえさん達のマネージャーさん!それかうちのマネヒョン呼んできます!」
「…って。」

勢い良く立ち上がろうとする彼の袖を少し引っ張る。
私が今会いたいのはマネオッパじゃない。

こんな時、会いたいのはいつだってただ1人。

「ん?」
「…ナ、オッパ…」
「え?今なん…」


「なまえ!!!」


廊下に響く程の大きな声。
真っ白なほっぺが少しだけ赤くなってる。
息が切れてるところを見れば、必死に探してくれたのが分かって嬉しくなる。

「……ッパ…。」

駆け寄ってきて私を抱き締めるオッパにそのまま寄り掛かる。
オッパはやっぱり私のヒーローだなって思った。





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