【01 悪夢の日々 ーなまえー】

少女時代に憧れ、SHINeeに恋した幼い少女は、自ら試練の中に足を踏み入れた。

だから、逃げたりなんかしない。
絶対に…。

FY(ファヨン)『うっわ、最悪。エバ、あんたこれ乾燥機かけたでしょ。』

ファヨンオンニの手には何処かのブランドのTシャツ。
でもそれを乾燥機に入れたのは、私ではなくオンニ自身。

「え、いや…。」
FY『は?なに、日本人の分際で口答えすんの?』
「…すみません。」
FY『あー!もうマジで胸糞悪ぃ!』

Tシャツを持ったまま右の手の甲で私を払いのけるオンニの手が左頬に直撃する。

SR(ソラ)『顔はやめな、明日は歌謡祭だし、来週はKMAがあるんだから。』
FY『だってオンニ見てよこれ!わたしのお気に入りのGUCCIのTシャツ縮んだんだよ?』
MN(ミニョン)『うわ、最悪。お前洗濯すらまともに出来ないわけ?』
「…すみません。」

縮んだTシャツを私に叩きつけ、苛々したまま自室に戻って行ったファヨンオンニと、それを拾うためにしゃがんだ私を蹴っていくミニョンオンニ。

痛い、辛い、死にたい…。
だけど、負けたくない…。
負けちゃいけない…。

SR『あんたのその目、まじで腹立つ。まだ希望とか抱いちゃってんの?もう無駄な抵抗やめて、さっさと日本帰りなよ。』

ソラオンニが呆れたように言い放つ。

この地獄はもう3年続いてる。
契約更新まであと4年。

それまでは絶対に逃げたくない。
どんなに辛くても…。

YJ(ユンジェ)『…エバ、大丈夫?』

オンニ達が居なくなった隙を見て、さっと駆け寄って来てくれるユンジェオンニ。

「…大丈夫です。すみません。掃除があるので。」
HY『私もてつだー…』
FY『ユンジェ!あんたもこっちおいでよ!』

自室から顔を覗かせてユンジェオンニを呼ぶファヨンオンニに、私は無言でリビングに戻る。

ユンジェオンニだけは、唯一私を気にしてくれる。
でも、私に構えばあの人たちが怒るから、だから放っておいてと何度も伝えてる。

大丈夫だよ、後4年くらい耐えてみせるから。

どんどん酷くなる私への扱い。
宿舎のことは全部私がすることになってるし、練習室の掃除や片付けも私の担当だ。

今みたいにちょっとした暴力もある。
さすがに見えるところには傷をつけることはないけど…。

衣装も私だけ違う。
それはオンニ達がスタイリストさん達に苦情を言うから。

誰も私を助けられない。
だから助けも求めない。

明日に傷が残らないように、殴られた頬を冷やしながら家事をこなし、午後からの練習に備えた。

明日の歌謡祭の練習を終える。

SR『掃除よろしく。』
「分かりました。」

お腹空いたね!何食べる?なんて言いながら練習室を出て行ったオンニ達。

「…はあ、やっと1人になれた。」

練習後の掃除の時間は苦じゃない。
あの人たちから解放される唯一の時間だから。

みんなでの練習の後、私はいつも個人練習をする。
メインダンサーだからって理由もあるし、みんなが起きてる時間に宿舎に帰ると機嫌を損ね、怒られるから。
最低でも日付が変わるまでは宿舎に戻れない。

「…ふぅ、疲れた。」

パタリと床の上に大の字になる。

本当は、私はこのグループに入る予定じゃなかった。
オンニ達4人でデビューって決まってたのに、アー写を撮ってる時に華がないって理由で、なぜか私が急遽追加された。

練習生期間が1年ちょっとと短いのに加え、日本人ってことでオンニ達から嫌われてた。
でもデビューして少し経てば、少女時代先輩達みたいに仲良くなれると思ってた。

だけどそんなのは夢物語で、実際はどんどん嫌がらせが酷くなる一方だ。


私が死ぬか、脱退するまで続くんじゃないかと思う。
ゆっくりと体を起こして、鏡に映る自分を見る。

体は傷だらけだし、顔は今朝殴られて青くなってる頬に、寝不足で隈も凄い。

「…死にたい。」

それでも応援してくれるファンがいるから。
だから逃げちゃだめなんだ…。

「…っ。よし、練習しよう。」




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