【07 変わらぬ笑顔ーなまえー】

ウォヌさんが私の為に貸してくれたジャケットは、私がよく知るオッパのものだった。

時間がなくてちゃんと話せなかったけど、オッパもアイドルとしてデビューしてたんだ…。
言ってくれれば良かったのに。

いや、そもそもさっき楽屋に挨拶に来てたんだったら私が気付くべきだったのか。

自分の心配しかしてなかったもんな…。

ジフニオッパのジャケットに袖を通す。
いくら小柄なオッパとは言え、やっぱりちょっと大きいけど、テーピングが隠れるから有難い。

オンニ達に何か言われるだろうかと思ったけど、オンニ達は私に興味がないから、ジャケットについて何かを言ってくることはなかった。

『じゃあ移動するぞ。』

マネオッパの声にだるそうに立ち上がるオンニ達。

FY『ずっと座ってんの怠いんだよねー。』
MN『色んな人に会えるのはいいけど、客席から見えるからいい子にしてないといけないしね。』
SR『…行こ。』

文句を言いながら廊下に出たのに、出演者が見え始めると急に人が変わったようにニコニコし始めるオンニ達。
二重人格じゃないかってくらいの、変貌ぶりはいつ見ても感心する。

ステージ袖に集まる出演者達は、スタッフさんの指示に従って並び始める。

久し振り!なんて、デビュー年が一緒のEXOやNUESTと話してるオンニ達。
私は友達も知り合いも殆どいない。

少女時代のオンニ達や、SHINeeオッパ達が私に構ってくれるのは、私が少女時代に憧れて、SHINeeのファンで、SMにも合格してたからって話をテレビで話したからだ。

だから話すようになったけど、EXOとは正直挨拶ぐらいしか交わさない。
と、言うか交わせないに近いか…。

「おい!ジフナ、お前ジャケットは?」

少し離れた距離にいるのに分かるくらい、大きな声でオッパに話しかけてるのは、私の大ファンだって言ってくれた、確か…ホシさんって人。

WZ「無くても別にいいだろ。」
HS「いやお前だけ着てないのは変だろ。」

え?
人混みの隙間からSEVENTEENの皆さんを見つめると、確かにオッパだけシャツのままだ。
てっきり予備のジャケットがあるから、私に貸してくれたんだとばかり思ってたのに、どうやら違うらしい。

WZ「いいんだよ。」
HS「いや、でもお前寒がりじゃん?」

そう、オッパは寒がりだ。
会場内にいくら暖房が効いてるとは言え、ステージ袖はどちらかと言えば寒い。

やっぱり返しに行くべきだ。

オンニ達に視線を移せば、まだEXOやNUESTと話してるから私が居なくなっても気付かないだろう。

WZ「いいんだって。しつこい。」
HS「いやだってウリジフナが風邪でも引いたら…」
WZ「引かないって。」

ゆっくりオッパに近付くと、バチっと目が合った。
私が何をしようとしたか直ぐに察したオッパはゆっくりと首を振る。

"寒くない?"
そう口パクで伝えると、オッパはコクリと頷く。
"ありがとう!"
そう伝えれば、昔と変わらない笑顔で微笑んでくれた。

『オープニング始まります!名前を呼ばれたら出て来て下さい。』

歌謡祭が始まり、映像と共にグループ名が呼ばれる。
私たちより先に呼ばれたオッパ達が堂々とステージに上がって行く。

オッパがアイドルか…、どんなステージになるか楽しみだなぁ。

『カルミア!』
SR『はぁーい!』

ステージに上がると、会場の熱気が上がったのが分かる。
エアリーの皆んなの声が1番届く。

オープニングが終わり一度ステージを降りる。
準備のある人達は楽屋に戻り、まだ出番じゃない出演者は会場に行きステージを見る。

同業者のステージを近くで見れるのは楽しいけど、見られるのは緊張する。
エアリーの前だったら緊張はしないんだけどな…。

私たちはまだ出番じゃないからそのまま会場に入る。
その瞬間また歓声が上がる。

私たちはEXOの隣に座った。
勿論私はEXOから1番離れた、端っこの席だけど。

オッパ達を探したけど、準備があるのか会場には居なかった。

YJ『なまえ、このジャケットどうしたの?』
「…え、あ、えっと……。」

なんて言おうか、オッパに借りたと正直に言うべきか?

YJ『ウジさんのでしょ?』
「…え?どうして…」
YJ『SEVENTEENが着てるジャケットと形似てたし、ウジさんだけ着てなかったし、それに、なまえにしては大きいから。』

そうか、そうだよね。
ちゃんと見れば分かるよね…。
ってことはオンニ達にも…バレてる?

EXOと盛り上がってるオンニ達をそっと見ると、ユンジェオンニが『大丈夫。』と呟く。

YJ『あの人達は気付いてないから。』

そっか、良かった…。
ホッと胸を撫で下ろしたけど、ここには沢山のお客さんがいる。
ネット記事にならなきゃいいけど…。

結局私は自分のことしか考えてなかった。
オッパだって何言われるか分かんないのに…。

YJ『優しいよね。』
「…え?」
YJ『SEVENTEENの眼鏡の人と、ウジさん。私もなまえを追いかけようとしたんだよ。肩腫れてるし。手当しようと思って。そしたら先に眼鏡さんがなまえの手当してくれてて、私に気付かず走ってって、ジャケット手に持って来てさ、また直ぐウジさんが走って来て。』

そうか、一部始終見られていたのか。

YJ『知り合いなの?』
「え?」
YJ『眼鏡さんと。』
「え、いや、さっき初めて会いました…。」

そっかと呟き、ユンジェオンニはその後しつこく聞いてくることは無かった。

次々と披露されるステージ。
次は誰かななんて、ボーッとステージを見てると、次々とシルエットが映し出される。

FY『あ!SEVENTEENだ!』
SH(スホ)「え、何、好きなの?」
MN『可愛かったもん!』
BK(ベッキョン)「俺も可愛いでしょ?」

隣から変なやり取りが聞こえるけど無視して、私はステージに釘付けになった。

歌も、ダンスも、曲も、全てがパーフェクトだった。
何より、一糸乱れぬダンスが本当にすごい。

練習量も凄いんだろうけど、仲がいいからだろうなって思った。
お互いにぶつからないように、ちゃんと配慮出来てるからこそ、あれだけの人数でも大胆に踊れるんだと思う。

…オッパ、可愛いな。
後で言おう、怒られるかもしれないけど。

SEVENTEENのステージが終わると同時に、私達とEXOが準備のために会場を抜ける。

KI(カイ)「じゃあ後でねー!」
SH「頑張れよ!」
SR『オッパ達もね!』

フリフリと手を振ってるEXOとオンニ達を置いて、急いで楽屋に戻る。
さっさと着替えてオッパにジャケット返しに行かないと。

「お疲れ様です。衣装下さい。」
『あ、はい。これです。』
「ありがとうございます。」

スタイリストさんに手伝ってもらいながらステージ用の衣装に着替える。

『あの、このジャケットって…』
「借り物なので。」

着替えが終わったと同時に楽屋のドアが開きオンニ達が戻って来た。

オッパのジャケットを隠しながらステージ用のメイクに変える為、移動する。
オンニ達は機嫌がいいみたいで、私は視界に入ってないようだ。

メイクを直してもらいながら、久し振りにオッパとのトーク画面を開く。

最後のやり取りは今年の初めで終わっていた。
ジャケット返しに行くね。とだけ打って電源ボタンを押す。

メイクの直しは直ぐに終わった。
髪型はもうこのままでいい。

痛み止めが効かないせいで、腕も上がらないし。

ペディンを羽織り、オッパのジャケットをなるべく皺にならないように隠す。

『15分後にステージ袖な。』

マネオッパにそう言われ、コクリと頷いてから楽屋を出る。
オッパの楽屋何処なんだろう…。

「なまえ。」

名前を呼ばれ顔を上げると、オープニングの衣装に着替えたオッパが壁に寄りかかって立っていた。

「オッパ!」

嬉しくて駆け寄ると、ニコニコと微笑みながら私の頭を撫でてくれるオッパ。
昔と変わらない笑顔に泣きそうになる。

WZ「泣いたらメイク取れるぞ。」
「うん、だから我慢してるの!」

涙がこぼれないように上を見ながらそう言えば、オッパはまた優しく笑った。




ノベルに戻る I Addict