【act.01 WZ】

練習が終わって帰る準備をしてるとマネヒョンが俺の方に向かって来た。

『ウジ、ちょっといいか?』
WZ「あ、はい。なんですか?」

荷物をしまっていた手を止めマネヒョンに視線を移す。

そんな俺の元になぜかホシとスングァニがやって来る。

『これからちょっと時間あるか?代表が呼んでるんだけど。』
WZ「まあ、宿舎戻るだけなんで。」
SG「ヒョン、何かしたの?」

眉間に皺を寄せ聞いてくるスングァニ。
何かしたか?と聞かれて考えてみたけど、特に心当たりは無くて肩をすくめると、マネヒョンが『ああ、違う違う。』と笑う。

WZ「ん?」
『ウジに頼みたいことがあるんだよ。』
HS「代表直々にって凄いな、ジフナ!」

いや、どんな頼みかも分からないのに凄くも何も…。

SG「どんな頼み事なんですか?」
WZ「何でお前が先に聞くんだよ。」

俺より先に内容を聞くスングァニに、マネヒョンは一瞬言うか悩んだようだけど「ひょーん!」って腕を掴まれ懇願してくるスングァニに負けたようで、はぁっと深いため息を吐いてから俺を見る。

『今ローンチしようとしてる新人グルに加入させるメンバーを決めてて、ほぼ決まってるんだけどどうしても1人だけ迷ってる子がいるらしくて。その子の評価をウジにしてもらいたいらしい。』
WZ「…え?」

マネヒョンの言葉に凄いじゃん!なんてホシとスングァニが喜んでるけど、俺は素直に喜べない。
だって、もしかしたら俺が1人の人間の将来を左右するかもしれないのに、手放し喜べるわけがない。

WZ「ヒョン、それ絶対にしないとダメですか?」
『ダメって訳じゃないけど…、代表も社員の人達も困ってるらしいんだよ。』

だからって何で俺に…。

SG「評価には参加しないから僕らも行っちゃだめですか?」
HS「お!いいじゃん!俺らも行こうよ!」

まあ、俺からしたらメンバーが居てくれた方が心強いけど…。
でもデビュー前だよな?いいのか?

JH「どうしたの?」

わらわらと寄ってくるメンバーに、今マネヒョンから聞いたばかりの話を伝えるホシとスングァニ。

DK「え、いいじゃん!僕も見てみたい!」

俺も俺もなんて騒ぎ出すメンバーにマネヒョンは深い溜め息を吐くと、ちょっと待ってろといい練習室を出て行く。

きっと代表に確認の電話をしに行ったんだろう。

WN「ジフナは乗り気じゃなさそうだね。」

盛り上がってるメンバーとは対照的な俺に気付いたウォヌが苦笑いを浮かべてる。

WZ「まあな。俺には荷が重い。」
SC「ジフナだけの意見で判断する訳じゃないだろうし、気を楽にしていいだろ。」

そうなのか?
ただの1つの意見として聞いてくれるだけならいいけど…。

『オッケー出た。ただしこの事は他言無用だ。いいな?』

はい!っと揃った返事に、マネヒョンは本日3回目となる深い溜め息を吐いた。

荷物をそのままに練習室を出て向かったのはシアタールーム。
中に入ると、代表、そして新しくローンチされる新人グルの担当となる社員の方々、ボムジュヒョンや他のボーカルの先生方も居た。

『遅くなってすみません。』

謝るマネヒョンに続いて俺らも静かに頭を下げる。

『いや、いいんだ。こっちこそ練習終わりに急に来てもらって悪かったね。取り敢えず座って。』

代表の言葉にシアタールームのふかふかの椅子に腰を埋める。

『話はドンジェから聞いてると思うが、来年デビューさせようとしてるグループのメンバーを決めている所で、メンバー5人は確定したんだが、1人だけ迷ってる子がいてね。その子のことをどう思うかSEVENTEENのプロデューサーもしてるウジに聞きたかったんだよ。折角だし、みんなの意見も聞かせてくれ。』

俺より張り切って返事をするメンバーに代表は優しく微笑み、スクリーンに視線を戻す。

『先ずはデビューが決まってるメンバーを見てくれ。』

代表の言葉のあと、部屋が暗くなりスクリーンに練習室が映し出される。

スクリーンに1人ずつ映し出され、歌と踊りを披露するデビューが確定してる子たち。

元々日本でアイドルをしてて、IZ*ONEのメンバーだったサクラ、チェウォン、プレディスの練習生だったユンジン、後は知らない子が2名。

5人のパフォーマンスが終わった。

『ここからが本番だ。』

そう呟いた代表の表情に違和感を感じながらも再びスクリーンに視線を戻す。

“じゃあ次、#name1#ちあき”
“はい”

#name1#ちあき?この子も日本人か。

画面の隅から姿を現した女の子。
目を引くほど特別可愛いとか、綺麗とかそんな感じは無い。
どこか冷めたような、でもふんわりした雰囲気がある。

代表たちが迷ってる原因は何なんだろう。

“曲は?”
“日本の曲です”

日本の曲か…。月末評価で母国の歌を選曲するは珍しいと思う。
メンバーもそう思ったのか珍しいねなんて呟いてる。

“ねぇ言って ちゃんと言って
私に聞こえるように 大きな声で
もう泣かないでいいように”

WZ「…っ!!!」

歌い出した瞬間思わず息を飲んだ。
何なんだこの子は…。
こんな子が居たなんて…。

『どうだった?』

歌が終わって代表が声を掛けてくる。
メンバーは凄い上手でビックリしたとか、鳥肌が立ったとか言ってる。

『そうだよな。ウジは?どう思った?』

俺は……
話したいのに衝撃で声が出ない。

DN「ヒョン!何で泣いて…ってホシヒョンも泣いてるの!?」

…え?俺泣いてる?
自分の頬に手を当てると水滴が手に付いた。

WZ「泣いてること気付かなかった…。」
DN「え?」
SG「ウジヒョン…。」

歌詞の意味は分からない。
だけど、彼女の気持ちが痛いくらい伝わって来たし、上手いって言葉では表しきれないと思った。

でも、どこか既視感があるだよな…。
何なんだろうか…。

『素直に教えてくれ。』
WZ「はい、俺は…上手いって言葉では表しきれないくらい凄いと思いました。ずっと鳥肌も止まらなかったし、泣いてたのは無意識でした。でもそれくらい彼女の歌には人を魅了する何かがあると思います。」

俺の言葉に、代表は小さく何度も頷く。
きっと代表も俺と同じ気持ちなんだろう。

だからこそグループに入れるか迷っているだと思う。

『他には?』
WZ「彼女の歌唱力は、他のメンバーとは段違いです。確実に浮くと思います。なので彼女ならグループよりソロの方が俺は合ってると思います。」

俺の言葉に代表は『やっぱりそうだよな。』と独り言のように呟いて頭を掻きむしった。

何をそんなに迷う事があるのだろうか。
彼女は間違いなくソロ一択しかない。
それともソロじゃだめな理由でもあるのだろうか。

HS「…代表。」

ずっと大人しかったホシが声を絞り出した。

『どうした?』
HS「この子のダンス映像はありませんか?」
MG「見たい!」

代表はホシを見てやっぱりなと言うような表情をしたあと、スタッフに耳打ちをする。

『じゃあ、かけますね。』

ダンスはどうなんだろう。
彼女なら踊らなくてもいいとは思うけど…。




ノベルに戻る I Addict