【02. ビール3つと柚蜜ハイ1つ】

終業時間まで後30分ちょっと。
集中したおかげで、残業をしなくても終わりそう。

「私って優秀だわ。」
WN「俺より?」

独り言だったのに、隣のウォヌに聞かれたと思ったら、ニヤリと笑いながら俺より?なんて、分かりきったことを聞いてくる。

「………嫌い。」
WN「酷い、傷付いた。」
「はいはい。」

全然傷付いてないくせに、何を言うか。
鼻で笑ってるウォヌに肩パンをくらわせるも、ウォヌは呑気に机から飴を取り出すと、無造作に私に口にその飴を放り込む。

SC「困ったなぁ。まだこんなにあるの?」

スンチョルチーム長の声がして椅子ごと声のした方に視線を移すと、新人ことスアちゃんの机に積まれてる減ってない資料を見ながら困ったように頭を抱えてるスンチョルチーム長と、シュンとした顔のスアちゃんがいた。

その周りにはジョシュア先輩もいる。

嫌な予感がして、そっと自分のパソコンに視線を戻す。

SC「もう少し終わってると思ってたんだけど…。」
『すみません。頑張ってるんですけど…。』

はい?頑張ってる?
ずーっと喋ってたくせに?

「…嘘つけ。ずっとくっちゃべってたくせに。」
WN「心の声だだ漏れ。」
「あ、すまん。」

でも、男はスアちゃんの様な若くて可愛い子に弱い。しかも巨乳。
実際、相手がスアちゃんじゃなかったら、資料が山積みの時点で怒っていただろう。

JS「僕も手伝ってあげるよ。だから頑張ろう!」
『え?でも…先輩達にご迷惑をかけるわけには…。』

…うん、私も先輩だし、私にはめちゃめちゃ迷惑かかってるんだけどな!!!

「お?私は先輩じゃないんか?」
WN「ぶっ…。」

吹き出したウォヌに猫パンチを繰り出しながら、チーム長達のやり取りを盗み見る。
よく見ればジフニも呆れた様な、すげー顔してんな。

SC「仕方ない。予定ない奴は悪いけど残業して手伝ってやってくれ。工藤はどうだ?今日も残業頼めるか?」

…それは私にはどうせ予定がないと?

JS「ちあきちゃんが居てくれたらすぐ終わるね!」

は?いや、私やるなんて一言も言ってませんけど?
それにもう既に尻拭いしてるんですけど?

WN「こいつ既に新人の尻拭いしてますけど、さらにさせるんですか?」
MG「ひょん!言い方ー!」

いや、いいぞ!もっとやれ!うぉぬ!

SC「そうなんだけど、まだスアは入ったばっかりだし…」
WN「入ったばっかりってもう入社して2ヶ月経ってますよね?それにこいつはその子の倍以上の仕事こなしてます。いつまでも甘やかしてると仕事覚えないですよ。」
SC「…そうだな。工藤悪かった。じゃあ俺、シュア、スアでやろう。他居たら手伝ってくれ。」

良かった。これ以上仕事振られたらブチ切れて辞めるところだった。

「…ありがと。」
WN「今より老けたら困るからな。」
「……お礼返せ。」

結局スアちゃんの尻拭いは、私、ウォヌ、スニョン、ジフニ以外の皆んなでやるみたい。

私はウォヌにちょっと、ほんのちょっとだけ手伝ってもらって、何とか終業時間までに終わった。

「…終わったぁ。」
HS「お!すげーじゃん!」
WN「俺のおかげ。」
「……え?」
WN「ん?」

ウォヌの無言の圧に負けて小さく頭を下げると、満足げに微笑む。
お代官様かよ、お主苦しゅうない的な。

WZ「お疲れ、行くか?」
HS「何だよジフナァ、行く気満々じゃん!」

ジフニの肩に腕を回し、お先ですと残ってる人たちに挨拶をして出て行くジフニとスニョン。

WN「行けるか?」
「うん。お疲れ様でした。」
SG「ヌナまたねー!日曜日に!」
MG「ちあきヌナ帰っちゃうの!?ってか日曜日って何!?」
「スングァナまたね!」
MG「え!?ヌナ俺は!?」

ミンギュ君にはあっかんべーをしてウォヌと一緒に会社を出る。

WN「スングァニと何か約束してるの?」
「ん?うん。日曜日買い物行こーって。」
HS「お前スングァニと仲良いよな。」
「グァナ可愛いじゃん。」

妹みたいだし、女子力私より高いし。

HS「俺らも可愛いじゃん。」
「……え?何て?」
HS「絶対聞こえてるだろ!」

はいはい、もううるさいハムスターだこと。

私たち4人は同期で、何か分かんないけど意気投合して、よく飲みに行ったりしてる。
休みの日もたまに集まったり。

今日は2ヶ月ぶり。
いつも行ってる行きつけの個室居酒屋。
いつ予約したんだか、しっかり予約してたスニョンに続いて座敷に入る。

HS「ビール3つと柚蜜ハイ1つ。」
「お、さすが!」
HS「当たり前だろ?でも、久し振りだな!2ヶ月ぶり?」
WZ「あの子入社してからちあき残業ばっかりだもんな。」

そうなんだよ。
今日はウォヌの奢りだし、しこたま飲んで鬱憤を発散してやろう。

HS「俺らは席離れてるからいいけど、ジフナは毎日しんどそうだよな。」
WZ「席替え頼んでる。新人とミンギュがうるさくて仕事進まないからって。ミョンホも文句言ってた。」

ミンギュ君は人見知りしないもんな。
元々お喋り好きだけど、さすがにちょっと最近仕事して無さすぎなんだよね…。

HS「ちあきもめっちゃ巻き添えくらってるしな。」
「…うん。誰が採用したのあの子。」
WN「クオズ。」

だろうな。

「…よし。今日はウォヌの奢りだししこたま飲む!」
WN「は?俺がいつ奢るって言った?」
「えー。」
WN「お前に奢って、俺に何の得があんだよ。」

損か得かって言われたらそりゃ損か。

「給料出たら昼奢ってやる。」
WZ「昼なんだ。」
「飲みは高いじゃん。」

私は出世頭のウォヌと違って低賃金なんでね。

WN「却下。」
「えー!いいじゃーん!私そんなに強くないから馬鹿みたいに飲めないし!」
WN「いや、そう言う問題じゃない。」
「ケチ!じゃあジフナ奢ってー!」
WZ「俺かよ。まあ、別にい…」

一応スニョンは彼女持ちだし、ウォヌがダメならジフニに奢ってもらうしかないじゃん?

WN「俺の言う事聞くなら奢ってやる。」

言う事?ウォヌの?
え、でも今ジフニ良いって言いかけなかったか?

WN「どうすんの?言うこと聞くのか?」
「え、そんなんでいいの?」
HS「そんなんって!結構危なくね?」
「そう?だってウォヌだよ?パシリにされるくらいじゃない?ね?」

確かめる様にウォヌを見上げれば「さあ?」と肩をすくめるウォヌ。
まあ、ウォヌだし危険なことは何もないでしょ。

WN「で?どうする?」
「乗った。」
WN「決まり。」

ハイタッチを交わすと、ちょうどお酒が運ばれて来た。

HS「じゃあ乾杯!」

グラスがぶつかる音、久し振りの柚蜜酎ハイ。

「あー!うまい!!!」
HS「酒飲むのも久し振りなの?」
「うん、1人だと飲まないからね。」
HS「え?お前家で1人で飲まないの?」

…え?何その有り得ないみたいな顔。
まあ驚いてるのはスニョンだけみたいだけど。

HS「え、もしやお前ら皆んな飲まないの?」
WN「いや、飲む。風呂上がりとか。」
WZ「俺も風呂上がりにたまに。」
HS「だよな?お前風呂上がり何飲むの?」
「水。」

水と答えたらスニョンから女子か!って突っ込まれたから女子だよ!って返しといた。




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