【03. 俺、黒のレース】

HS「よし、本格的に飲むぞ!」

スニョンがネクタイを緩めると、本格的に飲みモードに突入の合図。

飲み始めは、大体いつも仕事の愚痴から。
どこどこの取引先の何とかがあーだとかこーだとか。

今日もそんな感じでスタートした。

HS「まだ皆んな残業してるのかな?」
WZ「どうだろうな。」

私たち以外のほぼ全員がスアちゃんのせいで残業してる。華金なのに。

HS「でもウォヌかっこよかったよな!ちあきの為にチーム長にハッキリ言った時、一瞬ひやっとしたけど。」
WN「こいつあのまま残業させられてたら、もっと老けるだろ。」
HS「間違いねぇ。」

間違い大有りだわ!
まあ、ウォヌがハッキリ言ってくれたおかげで、私は美味しくお酒が飲めてるんだけどね。

一応感謝しとこう。
ウォヌに向かって手を合わせる。

WZ「何でウォヌに向かって祈ってんだよ。」
「違うよ、感謝の意味を込めてお手を合わせてるんだよ。」
WN「俺、神様かよ。」
「は?いや、君はどっちかと言うと魔王様だよ。」
WN「…は?」

ほら、魔王様じゃん。
そんな低い声で真顔で「は?」とか怖いわ!

HS「感謝するならもっと可愛くしてやれよ。」
「…ジフナ、代わりに頼む。」
WZ「何で俺だよ。」
「私よりジフナの方が可愛いから。」

色白くてもちもちだし。
言ったら怒るから言わんけど。

HS「でもチーム長達も酷いよな!あの子の仕事全部ちあきに押し付けてるじゃん。お前も断ればいいのに。」

わかってるよ、断れば良いことくらい。
でも、そう言うの苦手なんだよ。

WN「こいつ頼まれたら断れないタイプだよ。」
HS「は!?え!?おまっ、まじ!?」

有り得ねえ!みたいに目かっぴらいてるスニョンにおしぼりを投げつける。

「うるせー!」
WZ「でも断らないとマジ倒れるぞ?いつもウォヌが居るわけじゃないし。」
「…うん。」

そうだよな、今日はたまたま飲む約束したからウォヌが断ってくれたけど、いつも約束ある訳じゃないし、自分でも断らないとな…。

そうは思っても、「頼む!」って頭下げられたら断れないんだよな。

HS「俺らには直ぐ断るのに。」
「それはお前等だからな!てかさ、そもそもあの子がちゃんと仕事してくれたら良い話じゃない?クオズ居ないと喋ってばっかりじゃん!」
HS「ミンギュなんて毎日鼻の下伸び伸びだよな。」

ミンギュ君を思い出し呑気に笑ってるスニョン。

WZ「お前も最初ニヤニヤしてただろ。」
HS「え!?し、してねぇーよ!」

俺してないよな?って確認する様にウォヌ、私と順番に視線を向けるスニョン。

WN「してた。」
「してた。しかも俺には可愛い彼女が居るんだ!って自分に言い聞かせてたじゃん。」
HS「……うっ…、忘れてくれ。」
「無理だわ。」

あんな面白い場面、そうそう忘れたくないよね。
呪文の様に俺には彼女がってスマホの中の写メ見てたあのシーンは忘れない。

HS「で、でも実際さ、スアちゃんが入って来た時、ときめいただろ?可愛いし、女子力の塊だし、スタイルもいいし。」
WN「ちあきと違って巨乳だし。」
HS「そうそう。」
「…悪かったな貧乳で。」

澄ました顔して結局ウォヌも巨乳好きかよ。
絶対、淡白なくせに!

HS「ちあきは小さくていいんだよ!」
「40万くれたら豊胸して来てやるぞ。」
HS「…え?」

え?じゃねぇーわ!
いや、まあ実際自分が男だったらそりゃ小さいより大きい方がいいよね…。

HS「まあ性格があれだけど。」
「性格があれでも、スニョンに彼女が居なかったらミンギュ君と一緒に絶対鼻の下伸び伸びに1票。」
HS「え?」
WZ「俺も。」
WN「間違いないな。」

俺一途だから!って叫んでるスニョン。
まあ一途だとは思うけど、君は素直だからね。

HS「でもウォヌもジフナも一瞬ときめいたんだろ?」
WZ「全然。俺ああ言う女全開のあざとい女無理。」

サラッと言ってのけるジフニ、さすが釜山男子。

「かっこいいぞ、ジフナ!」
HS「う、ウォヌは!?ウォヌはときめいたよな?巨乳好きだろ?」
「…ほほう。」
WN「いや、全く。え、てか俺って巨乳好きなの?」

…え?何で私に聞いてくんの?

「いや、私ウォヌの性癖知らないけど。」
WN「え?」
「え?じゃなくて、何で私がウォヌの性癖知ってる前提なんだよ!おかしいだろ!」

ふふっと笑うウォヌは何か言いたげに口を開きかけたけど、スニョンが物凄い勢いで割って入って来た。

HS「え!?お前ら2人ともスアちゃんにときめかなかったのかよ!どうなってんだよ!」
WZ「別に。タイプじゃないだけだし。」
WN「そう言うこと。」

確かに、ジフニもウォヌも女子力キラキラって子より、家庭的な感じの方がイメージにはあってるよな。

HS「タイプじゃ無くてもあの見た目はときめくだろ。」

うん、まあスニョンの言ってる意味も分からんでもない。
タイプじゃないアイドルにときめくみたいな。

「スニョア。」
HS「ん?」
「浮気はすんなよ。」
HS「は!?し、しねーよ!」

顔を真っ赤にしてお酒を一気に飲み干すスニョンに、私たちは顔を見合わせて笑った。

HS「て、てかお前はスングァニとどうなんだよ!」

……は?え?

「どうって?別に何もないけど?」
HS「だってよく2人で買い物行ったりしてるじゃん?それってデートだろ?」

うーん、デートって言われたらデートともとれるけど、どっちかと言うと、女子力皆無な私の女子力をスングァニが一生懸命上げるための、施術に近いしと言うか…。

HS「ほら、黙った!やっぱしデートじゃん!」
「うん、いや、違うでしょ。」
HS「じゃあどこに買い物行くんだよ!いっつも何してんだよ。」
「え、普通に服見に行ったり、化粧品見に行ったり、下着見に行ったりとか。カフェで女子トークしたり。」

女の子同士の買い物となんら変わらないんだけどな。

HS「し、下着!?」
WZ「え、あいつ下着屋にも行くの?」
「うん。何なら私より先に入って行くよ。ヌナはどうせセクシーなの持ってないでしょ!って。」
WN「え、持ってないの?」
「は?持ってないよ、彼氏も居ないし。いらん。」

そもそも彼氏がいた時ですらそんなに気にしたことは無かった。
一緒にいるのは好きだけど、正直そう言う行為が好きじゃないってのもあると思うけど。

HS「じゃあお前の下着は、スングァニが選んでるの?」
「あー、うん。そうだね。てかこの前全部捨てられたからね。」

まだ彼氏居ないからこれくらいのでって、それでも私にしては可愛らしいレースの下着をスングァニは選んでくれてる。

そして古い下着は運気を下げるとかで、この前家に来た時に全部捨てられた。

HS「捨てられたって…え!?じゃあお前今履いてないの!?ノーパ…」
「は?バカか。履いとるわ。痴女扱いすんな。」

何だよかったってホッと胸を撫で下ろしたスニョン。

てか、何でこんな会話になってるんだ?
スニョンはジフニに男女で下着屋って行く?って興奮気味に聞いてるし。

「今度彼女と行ったらいいよ。選んであげたら喜ぶんじゃない?」
HS「おふっ!そ、そうだな!」

いや、本当スニョンは分かりやすい。
こんなに分かりやすいと彼女は楽しいだろうな。

WN「黒。」
「ん?」
WN「俺、黒のレース。」
「…は?いや、ウォヌの好みは聞いてないんだけど。」
WN「俺の言うこと聞くんじゃないの?」

…冗談なのか、本気なのかウォヌの表情は本当に読めない。スニョンとは真逆のポーカーフェイスだ。

「まあいいけど、見る機会なくない?」
WN「さあ?」

いや、絶対ないだろ。
まあ、いいや。

「じゃあ、すっごいえっろいのにするね。」
WN「俺そうそう驚かないけど。」
「…鼻の下伸び伸びになっても知らんぞ。」
WN「ふっ、楽しみにしてるわ。」

鼻で笑うウォヌは余裕たっぷりにそう言って、グラスを空にした。




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