【02 SC】
開けっ放しになったままのなまえの部屋の前から、動き出せないミンギュとジュン。
そんな2人の後ろで、泣きそうな表情のままそっと寄り添うように立っているミョンホとスングァニ。
泣き崩れたジアは今ハニとシュアがやっと部屋に連れて行った。
他のメンバーは暗い表情を浮かべたまま、リビングや自室に向かう。
なまえの部屋に元から物が少ないのは、ミンギュやドギョムから聞いて知っていた。
当の本人は女の子にしては珍しく物欲もなく、化粧っけも無かった。
どこに行くにも、いつもスエットかジャージだったし、自分でメイクをしている姿も見た事は無かった。
髪の毛だっていつも黒髪のショートヘアで、伸ばすことも染めることもしなかった。
誕生日に欲しいものを聞いても、答えてくれた事は一度もなかった。
本当になまえはここに居たんだろうか。
まるで初めから誰も使っていなかったかのようにさえ思えるほどに、俺の目に映るなまえの部屋は綺麗だった。
その後も誰も口を開かないまま、気が付けば夜になっていた。
ジア、ドギョムは自室にこもり、ミンギュ、ジュン、ミョンホ、スングァニはなまえの部屋に居る。
ジョンハニとジョシュアはジアに付き添ってる。
なまえは何で俺らに何の相談もなく急に活動休止なんてしたのだろう。
ずっと考えているけど、答えは出ない。
HS「…ずっと考えてたんだけどさ、俺、アイツのこと…何にも知らないや…。」
静まり返る部屋にホシの呟くような声が響いた。
言われて見ればそうかもしれない。
俺は、なまえの何を知っているんだろう。
年齢と出身国、あとは?アイツの好きな物はなんだ?何をするのが好きなんだ?何が嫌なんだ?
悩みはあったのか?
そもそも今まで、ちゃんとなまえと話したことがあっただろうか。
向かい合って、腹を割って話した事があっただろうか?
考えて見ればそんな事一度も無かった。
真っ直ぐに目を合わせたこともない。
ずっと敬語だし、オッパって呼ばれた事すらない。
SC「俺もだ…。おっぱって呼ばれた事もない。」
HS「俺も…。タメ口で話してくれた事もないわ…。」
なんで俺はなまえと向き合わなかったんだろう。
ジアとは同じ歳ってのもあるし、練習生期間もウジやホシと同じくらいだから、ちゃんと向き合って来たと思う。
男グループに居る女の子って立場的に、何度も辛い目にあってるから、だから俺らが支えなきゃいけないと思って。
でも、俺はなまえの事は支えてやれてなかった気がする。
なんとなくなまえとはずっと距離があったし、なまえにはジュンやミンギュが居るからいいやってどっかで思ってた。
WN「俺、収録以外でまともに話した事すらない…。」
確かにウォヌとなまえが話してるところは見たことがないかもしれない。
VN「ヌナがおっぱって呼ぶのは、ジュニヒョンだけだし、タメ口で話すのは俺にだけだよ。それもたまに…。」
HS「…え?ディノやスングァンにも敬語だっけ?」
驚いてるホシにボノニとディノは小さく頷く。
俺も知らなかった。年下にまでまだ敬語だったなんて。
DN「ボノニヒョンは僕たちが学校行ってる時ヌナと家に居たからだよね。」
VN「うん…韓国語教えたりしてたから…。」
でも、僕も何もヌナのこと知らなかった…。
そう言って俯いてしまったボノニの肩を、ディノがそっと抱いた。
ああ、俺は本当になまえのことを何も知らないんだな…。
でも、明日からどうするんだ?
これからカムバもアジアツアーもあるのに。
ボーっとこれからの事を考えてると、宿舎のドアが開く音がした。
MG「なまえ!?」
廊下からなまえって呼ぶミンギュの声がして慌てて行ったのに、そこにはなまえではなくマネヒョンが居た。
MG「ヒョン!なまえは!?」
『これから話すから皆をリビングに集めてくれ。』
マネヒョンの言葉にスングァニはジア達とドギョミを呼びに行った。
直ぐにリビングに全員が揃った。
ジアはずっと泣きっぱなしのようで、見てるこっちが辛くなるほど目もかなり腫れている。
『今朝も言ったけど、なまえは暫くの間、活動を休止する。』
SG「暫くって?1週間?2週間?」
『期限は分からない。なまえ次第だ…。』
なまえ次第…。
マネヒョンの冴えない表情から、もうなまえは戻って来ないんじゃないかとさえ感じる。
WZ「…活動休止の原因は?」
『原因か…、原因は、そうだな……心身疲労ってやつだ。』
心身疲労?
ジアの嗚咽が聞こえてくる。
そう言えばなまえから疲れたって言葉を聞いたことがない。
大丈夫か?と声を掛けても大丈夫です。としか返ってきたことがない。
DK「なまえは僕たちのこと嫌いになったのかな…。」
『そうじゃないんだ…。』
泣きそうなドギョムの問いかけに、マネヒョンは表情を歪ませ否定をする。
マネヒョンは当たり前に全て知っているのだろう。
でもこの感じだと俺らに全てを話すつもりは無さそうだ。
JN「なまえは…今何処にいるんですか?」
『なまえは今、日本にいる。』
MG「日本の何処!?俺、なまえに会っ…」
『だめだ。会うな。詳しい場所も教えない。』
MH「…なんで?」
『なまえがそれを望んでない。』
少し冷たくそう言い放った後、ヒョンは明日からのスケジュールを伝え帰って行った。
DN「ヌナ…戻って来るよね?」
ディノの問い掛けに、誰も答えられなかった。
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