ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode14
『届かない名前』
― 伝えたい想いはある。でも、その名前だけはまだ書けない。 ―
Day:Sunday(共同生活14日目)
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Scene9【UNSEEN】
Sunday|11:55 PM
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404 HOUSE。
深夜。
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リビングの照明は落とされ、
家の中は静かな寝息に包まれていた。
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モニタールーム。
十数台のカメラ映像が並ぶ。
スタッフたちは、一日の映像を確認していた。
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「今日もいい表情が多かったですね。」
若いスタッフがモニターを見つめながら言う。
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ディレクターは頷き、
映像を少し巻き戻した。
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画面には、
漢江の遊歩道を歩く11人。
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「ここ。」
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ディレクターが映像を止める。
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画面の中央には、
チアキとミンギュ。
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二人は特別な会話をしているわけではない。
笑い合っているわけでもない。
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ただ、
並んで歩いている。
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映像がゆっくり再生される。
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チアキが少し歩く速度を落とす。
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すると、
ミンギュも何も言わず、
同じ速度に合わせる。
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少しすると今度は、
チアキが景色を見るために立ち止まる。
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ミンギュも自然に立ち止まり、
同じ景色を見る。
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「……無意識ですね。」
スタッフが小さく呟く。
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ディレクターは静かに頷いた。
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「人は意識している相手よりも、
気になっている相手に無意識で合わせる。」
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「だから本人は気づかない。」
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画面が切り替わる。
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リビング。
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写真を見返していた時間。
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「チアキ、この写真見て。」
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ミンギュが自然に名前を呼ぶ。
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その瞬間だけ、
部屋の空気が少し止まった。
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「ここも。」
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ディレクターがもう一度映像を止める。
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「言い直したけど、
最初に出た呼び方の方が本音なんですよね。」
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スタッフはメモを取る。
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17:48
ミンギュ、初めて自然に「チアキ」と呼ぶ。
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別の映像。
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カフェ。
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チアキとソヨン。
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二人は笑いながら話している。
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話す割合は、
ほとんど半分ずつ。
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聞く人と話す人ではなく、
“会話”になっている。
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「女性同士の距離も縮まりましたね。」
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「うん。」
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「チアキは聞き役になることが多かったけど、
最近は自分の話もするようになってきた。」
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また画面が変わる。
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コンビニ帰りのスングァンとジョンハン。
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アイスを食べながら笑う二人。
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スングァンが話し、
ジョンハンが笑う。
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しかし、
その後の数秒間。
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スングァンが何も話さない時間があった。
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ジョンハンも、
何も話さなかった。
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沈黙。
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それでも、
気まずさはない。
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「この二人も変わった。」
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「スングァンが黙っていても平気な相手が増えてきました。」
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最後の映像。
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404 Diary。
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それぞれが、
一人でペンを走らせる姿。
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誰も名前は書かない。
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誰も相手を口にしない。
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それでも、
書き終えたあとに微笑む人。
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何度も書き直す人。
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ページを閉じたあと、
しばらく表紙を見つめる人。
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その表情だけで、
言葉以上のものが伝わってくる。
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ディレクターは最後のメモを書いた。
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共同生活14日目
呼び方が変わった。
会話が増えた。
沈黙が心地よくなった。
そして、
“一緒にいること”が特別ではなく、
“当たり前”になり始めている。
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スタッフがモニターを消す。
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静まり返った404 HOUSE。
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誰も知らない場所で、
スタッフだけが気づいていた。
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目線は、
少しずつ長くなっている。
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隣に座る距離は、
少しずつ近くなっている。
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名前を呼ぶ声も、
少しずつ自然になっている。
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けれど、
誰一人として、
まだその気持ちに名前をつけてはいない。
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恋愛禁止。
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だからではない。
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まだ、
自分自身も知らないからだ。
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カメラは最後に、
木箱の中へ大切にしまわれた11冊の404 Diaryを映す。
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明日の朝、
そこにはそれぞれの返事を書くための言葉が待っている。
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誰かを笑顔にした一日。
誰かの心に残った一日。
そして、
まだ誰にも届いていない”名前”。
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画面は静かに暗転する。
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END OF EPISODE 14
次回予告
Episode15
『返事の向こう側』
Monday|共同生活15日目
第3回404 Diaryの返事が、それぞれの送り主のもとへ戻ってくる朝。
短い返事なのに、何度も読み返してしまう人。
返事を書いた相手の表情を思い浮かべる人。
そして、一人のメンバーがふとつぶやく。
「……この字、どこかで見た気がする。」
名前を書くことは禁止。
けれど、言葉の癖や文字の温度から、少しずつ”誰か”の輪郭が見え始める。
想いはまだ隠されたまま。
それでも404 HOUSEでは、新しい一週間とともに、心の距離が静かに動き始める。
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