ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode15

『返事の向こう側』

― 返ってきた言葉が、少しずつ人を変えていく。 ―

Day:Monday(共同生活15日目)



Scene4

『いってらっしゃい』

Monday|12:30 PM



チアキはネイビーの制服姿で、自室からキャリーケースを引いてリビングへ降りてきた。

髪はきれいにまとめられ、姿勢はまっすぐ。

404 HOUSEで見せる柔らかな雰囲気とは少し違う、客室乗務員としての凛とした表情だった。



「行ってきます。」



その一言に、リビングにいたメンバーが一斉に顔を上げる。



「もう出る時間?」

ソヨンが尋ねる。



「はい。」

「少し早めに空港へ向かきます。」



「今日は国内線だったよね?」

ユナが聞く。



「はい。夕方には戻ってきます。」



「国内線でも忙しそう。」

チェリンが感心したように言う。



「便数が多い日は、あっという間です。」



チアキが笑顔で答える。



その時、玄関のドアが開いた。



「ただいま。」



昼休憩のため、一度会社を抜けて戻ってきたミンギュだった。

ネクタイを少し緩めながらリビングへ入ると、制服姿のチアキと目が合う。



「あ、もう出る?」



「はい。」



チアキが頷く。



ミンギュは自然と玄関まで歩いていった。



「チアキ。」



昨日から少しずつ慣れ始めた呼び方。

もう”ちゃん”を付けないことにも、以前ほど照れはなかった。



「気をつけて。」



その一言に、

玄関が一瞬だけ静かになる。



チアキは少し照れたように笑った。



「ありがとうございます。」



その返事を聞いたスングァンが、小さく吹き出す。



「まだ敬語(笑)。」



リビングから笑い声が広がる。



「チアキらしいよね。」

ソヨンが微笑む。



ジョンハンも穏やかに頷いた。



「無理に変える必要はないですよ。」



「そのままのチアキでいいと思います。」



チアキは少し照れながら頭を下げた。



「ありがとうございます。」



「……やっぱり敬語ですね。」



そう言って自分でも笑う。



その笑顔につられて、

みんなも笑顔になる。



スンチョルが自室から顔を出した。

午前中のリモート会議がちょうど終わったところだった。



「もう出るのか。」



「はい。」



「気をつけて。」



「ありがとうございます。」



スンチョルは玄関まで来ると、

何も言わずにキャリーケースを持ち上げ、外まで運んだ。



「ありがとうございます。」



「このくらい。」



短い言葉だけ交わし、

キャリーケースをチアキへ渡す。



「じゃあ……。」



チアキはみんなを見渡した。



「行ってきます。」



「いってらっしゃい!」



今度は全員の声が重なる。



玄関のドアが閉まり、

家の中に静けさが戻る。



ミンギュは閉まったドアを見つめながら、

ぽつりと呟いた。



「夕方には帰ってくるんだよね。」



「うん。」

ウォヌが答える。



「だから今日はちゃんと”おかえり”って言える。」



「もう毎日言ってるけどね。」

スングァンが笑う。



「でも、なんか楽しみじゃない?」



その言葉に、

誰も否定しなかった。



“誰かが帰ってくる。”



それだけで、

自然と待つようになっている。



404 HOUSEは、

少しずつ”共同生活の家”から、

“帰る場所”へ変わり始めていた。



【STAFF NOTE】

共同生活15日目。



昨日変わったのは呼び方。



今日変わったのは、

「いってらっしゃい」の温度だった。



以前は挨拶だった言葉が、

今は”無事に帰ってきてほしい”という気持ちを含み始めている。



そしてチアキは、

今日も変わらず全員に敬語で微笑む。



変わる人。

変わらない人。



その両方があるからこそ、

404 HOUSEの距離はゆっくりと縮まっていく。



次回 Scene5

Monday|夕方

『返事の意味』

仕事や外出先でも、

朝読んだ404 Diaryの返事が頭から離れない。

あるメンバーは返事の一文をスマホに残し、

あるメンバーは、文字の癖を思い返しながら、

「この書き方、どこかで見たことがある……」

と、小さな違和感を抱き始める。




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