ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode15

『返事の向こう側』

― 返ってきた言葉が、少しずつ人を変えていく。 ―

Day:Monday(共同生活15日目)



Scene7

『誰かのために』

Monday|08:00 PM



夕食を終えた404 HOUSE。

ダイニングでは食器を片付ける人、

リビングでくつろぐ人、

それぞれが自然に動き始めていた。



「ごちそうさまでした。」



チアキが食器を持って立ち上がる。



「私、洗います。」



「じゃあ俺、拭きます。」



ミンギュも立ち上がり、

自然とキッチンへ向かった。



「ありがとうございます。」



二人はいつものように並んで後片付けを始める。



その頃、

ソヨンは冷蔵庫を開けて、

明日の朝食の準備をしようとしていた。



「あれ?」



中を覗き込み、

小さく首をかしげる。



「牛乳、なくなっちゃいましたね。」



その声に、

ミンギュが振り返った。



「あ。」



「そうだ。」



キッチンの隅に置いていた紙袋を手に取る。



「今日、帰りに買ってきました。」



袋の中から一本の牛乳を取り出し、

そのまま冷蔵庫へ入れる。



「え?」



ソヨンが驚いたように目を丸くする。



「いつの間に?」



「スーパーの前を通ったので。」



ミンギュは何でもないことのように答えた。



「明日の朝ないと困るかなって。」



「……。」



ソヨンは思わず笑顔になる。



「ありがとうございます。」



「助かります。」



「いや、大したことじゃないですよ。」



ミンギュは照れくさそうに笑い、

冷蔵庫の扉を閉めた。



そのやり取りを、

チアキは食器を洗いながら見ていた。



「ミンギュさん。」



「はい?」



「そういうところ、本当にすごいですね。」



ミンギュは少し困ったように笑う。



「そんなことないですよ。」



「たまたま思い出しただけです。」



「でも、その”たまたま”ができる人って、あまりいないと思います。」



チアキは素直にそう言った。



ミンギュは少しだけ照れ、

耳の後ろをかいた。



「褒められると恥ずかしいですね。」



「本当のことです。」



チアキは微笑む。



その様子を見ていたスングァンが、

ソファから声をかける。



「ミンギュさんって、昔からそうなんですか?」



「ん?」



「誰かのために何かするのが当たり前っていうか。」



ミンギュは少し考えてから答える。



「どうなんでしょう。」



「家でもそうだったので。」



「母親に、『自分が気づいたなら、自分がやればいい』ってよく言われてたんです。」



「だから癖みたいなものですね。」



「なるほど。」



ジョンハンが静かに頷く。



「当たり前だと思っていることほど、その人らしさが出ますよね。」



「今日のミッションを思い出しますね。」



ウォヌがぽつりと呟く。



「相手の当たり前を体験した日。」



「うん。」



ソヨンが笑う。



「今日見たのも、ミンギュさんの”当たり前”ですね。」



「でも、その当たり前が誰かを助けてるんですよ。」



ミンギュは照れ笑いを浮かべるしかなかった。



「なんか今日は褒められすぎですね(笑)。」



リビングに優しい笑い声が広がる。



特別な出来事ではない。



牛乳を一本買ってきただけ。



でも、

誰かが困る前に気づくこと。

誰かの明日を少しだけ考えること。



そんな小さな積み重ねが、

404 HOUSEの日常を支えていた。



チアキは冷蔵庫の中に並んだ牛乳を見つめ、

小さく微笑んだ。



「ありがとうございます。」



その一言は、

牛乳に向けたものではなく、

誰かを自然に思いやれるミンギュに向けた言葉だった。



【STAFF NOTE】

共同生活15日目。



誰かのために動く人は、

自分ではそれを”優しさ”だと思っていない。



だからこそ、

その行動は自然で、

見返りを求めない。



今日、

チアキが見つめていたのは、

牛乳ではない。



“誰かのため”を当たり前にできる、

ミンギュという人だった。



本人はまだ、

その視線に気づいていない。




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