ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode20

『404 HOUSE DAY』

― 一緒に暮らすからこそ分かる、知らなかった一面。 ―

Day:Saturday(共同生活20日目)



Scene5

『夕食』

Saturday|18:30 PM



404 HOUSE。

夜。

役割交換ミッションの最後は、全員で夕食。

テーブルには、ミンギュとスンチョルが作った料理が並んでいる。

いつもとは少し違う食卓。

それでも、そこにいる11人の空気は、どこか落ち着いていて、いつも通りだった。



「いただきます。」

全員で手を合わせる。



チアキは料理を一口食べる。

その瞬間、目を少し見開いた。

味が、想像していたよりずっとやさしくて、丁寧だった。

「……。」

ミンギュが少し不安そうに様子を見る。

「どう?」

チアキは顔を上げる。

そして、迷わず笑った。

「すごく美味しいです。」

その言葉に、ミンギュの表情がふっと緩む。

「本当?」

「はい。」

チアキはもう一度うなずく。

「味付けもちょうどいいですし、野菜の切り方もすごく丁寧で……。」

料理を見つめながら、自然と感想がこぼれる。

「すごいです。」



スンチョルが笑う。

「そんなに褒められると思わなかった。」

チアキは首を振る。

「本当に美味しいです。」

「二人とも、料理上手なんですね。」



その言葉に、

ミンギュとスンチョルは少し照れたように笑う。

褒められることに慣れていないのか、嬉しそうなのに、どこか落ち着かない様子だった。



「でも。」

チアキが続ける。

「毎日これを作るのは大変ですね。」



その一言で、

食卓の空気が少しだけ変わる。

さっきまでの軽い笑いが、静かな実感に変わっていく。



ミンギュが箸を置く。

「……うん。」

「今日やってみて分かった。」

「作るだけじゃないんだよね。」



スンチョルも頷く。

「食べる時間を考えたり。」

「足りるかどうか気にしたり。」

「片付けまで含めて毎日やるのって、思ってたよりずっと大変だった。」



チアキは少し驚いた顔をする。

自分がいつも自然にやっていたことを、そんなふうに見てもらえたことが意外だった。



「そんな……。」

「普通のことですよ。」



スングァンがすぐに反応する。

「その“普通”がすごいんだって。」



スニョンも笑う。

「毎日やってた人が言うと、説得力ある。」



チアキは少し困ったように笑う。

褒められるたびに、胸の奥がくすぐったくなる。

当たり前だと思っていたことを、誰かがちゃんと見てくれていた。

その事実が、静かにあたたかかった。



「でも、今日は本当に助かりました。」



ミンギュを見る。



「ありがとうございます。」



その一言に、

ミンギュは少し照れながら笑う。

「いや。」

「こっちこそ。」



少し間を置いて。

その沈黙は、気まずさではなく、言葉を探すためのやさしい間だった。



「チアキ、いつもありがとう。」



突然の言葉。



チアキが目を瞬く。

「え?」



ミンギュは少し恥ずかしそうに笑う。

「毎日、当たり前みたいにやってくれてたから。」

「料理も。」

「家のことも。」

「誰かが困らないように、ちゃんと見てくれてたことも。」



スンチョルも頷く。

「最初は気づかなかった。」

「でも、今日やってみて分かった。」



「この家が自然に回ってたのは、誰かが支えてくれてたからなんだって。」



チアキはすぐに言葉を返せなかった。

胸の奥が、じんわりと熱くなる。

ありがとうと言われることに、こんなふうに静かに満たされるなんて思っていなかった。

自分ではただ、できることをしていただけだった。

誰かのために動くことが、いつの間にか自分の役目になっていた。

でも今、その積み重ねをちゃんと見つけてもらえた。

それが、少しだけ嬉しかった。



チアキは小さく息をつく。

そして、やわらかく笑った。

「……ありがとうございます。」



その声は少しだけ静かで、でも確かにあたたかかった。



「私も、みんながいるから楽しくできています。」



その言葉のあと、食卓に短い沈黙が落ちる。

けれどそれは、何もない静けさではなかった。

誰かの気持ちが、ちゃんと届いたあとの、やさしい余韻だった。



食卓に、静かな温かさが広がる。



恋愛とは違う。



でも。



大切に思う気持ち。

一緒に暮らす相手への感謝。

そのひとつひとつが、確かにここにあった。

404 HOUSEの中に、少しずつ積み重なっていた。



【STAFF NOTE】

共同生活20日目。



誰かの存在は、

いなくなった時だけ大きく感じるものではない。



今日のように、

「ありがとう」と言葉にした瞬間にも、

その大切さに気づく。



404 HOUSEは、

少しずつ“住む場所”から、

“帰る場所”へ変わっている。



次回 Scene6

『夜のリビング』

映画鑑賞。



眠る人。

笑う人。



11人で過ごす、

何気ない夜。




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