ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode21

『HAN RIVER NIGHT』

― 同じ景色を見ることで、知らなかった一面に気づく。 ―

Day:Sunday(共同生活21日目)



Scene7

📖 404 Diary(第5回)

Sunday|22:00 PM



404 HOUSE。



玄関のドアが閉まる。



「ただいま。」



「疲れたけど楽しかった。」



「写真、後で送って。」



帰宅したメンバーの声が、リビングに広がる。



いつもの家。



でも。



今日だけは少し違った。



全員の中に、

漢江の夜がまだ残っている。



川に映った光。

冷たい風。

笑い声。



そして。



誰の隣で、その景色を見ていたか。



22:00



スタッフから通知が届く。



📖 404 Diary



第5回テーマ。



「今日、一緒に見た景色を覚えていたい人へ」



リビングの空気が少し静かになる。



それぞれ、

いつものように部屋へ戻っていく。



でも。



今日は少しだけ違った。



ペンを持つ前に、

誰かの顔が浮かぶ。





ミンギュ



机の前。



白いページを見つめる。



今日の漢江を思い出す。



夜景を見るチアキの横顔。



楽しそうに笑っていた表情。



「綺麗ですね。」



その言葉。



特別な会話ではなかった。



でも。



あの瞬間だけ、チアキの声が少し柔らかく聞こえたことを、ミンギュは覚えている。



ただ景色を褒めただけなのに、

隣にいる自分まで、その景色の一部になれたような気がして、

胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。



嬉しい。



そう思う一方で、

あまりにも自然に笑うチアキを見て、

自分だけが少し意識しすぎているのではないか、とも感じる。



ペンを取る。



一度書いて、

少し考える。



そして、ゆっくり言葉を選ぶ。





チアキ



部屋の明かりは少し暗い。



窓の外を見る。



遠くに街の光。



今日見た漢江とは違う景色。



でも。



頭の中には、

まだ水面に揺れていた光が残っていた。



風が思ったより冷たくて、

笑ったときに少し肩がすくんだこと。



そのたびに、隣にいた誰かがさりげなく距離を合わせてくれたこと。



「楽しかった。」



小さく呟く。



楽しかったのは本当。



でも、ただ楽しいだけでは終わらない何かが、

胸の奥に静かに沈んでいる。



誰と見たかで、

同じ夜景でもこんなに印象が変わるのだと気づいて、

少しだけ戸惑う。



Diaryを開く。



誰かに伝えるための言葉。



でも。



自分自身にも確認するように書いていく。



書きながら、

あの時間を思い出すたびに、

嬉しさと、説明しきれない落ち着かなさが交互に顔を出す。





ウォヌ



静かな部屋。



今日の夜を思い返す。



ソヨンと見た漢江。



会話は多くなかった。



でも、

不思議と心地よかった。



言葉よりも、

同じ時間を共有したことが残っている。



ソヨンが川面を見つめる横顔は、

普段より少しだけ無防備に見えた。



その静けさが心地よかった反面、

何も言わなくても伝わるものがあるのか、

それとも自分がそう思いたいだけなのか、

少しだけ考えてしまう。



穏やかで、落ち着く。



そう感じるほど、

逆に胸の奥に小さな余韻が長く残っていた。





スングァン



写真を整理しながら笑う。



たくさん撮った写真。



みんなの自然な表情。



「いい写真多いな。」



いつもの明るい声。



でも。



一人になると、

少しだけ静かな顔になる。



誰かが笑った瞬間を撮るたびに、

その場の空気まで閉じ込められた気がして、

見返すほどに胸が温かくなる。



けれど同時に、

自分が撮っていたのは景色だけじゃなく、

誰が誰を見ていたか、という視線の重なりだったのだと気づいてしまう。



この家で過ごす時間が、

思っていたより大切になっていた。



それを認めるのが少し照れくさくて、

笑いながらも、指先だけは写真を何度も止めてしまう。





それぞれの部屋



11人が、

それぞれ違う場所でペンを走らせる。



「楽しかった。」



「ありがとう。」



「また一緒に見たい。」



書く言葉は違う。



でも。



共通していることがあった。



今日の景色だけではなく。



その景色を一緒に見た人の存在が、

心に残っていた。



同じ漢江の夜を見ても、

ある人は景色の美しさを強く覚え、

ある人は隣にいた相手の声を思い出し、

ある人は言葉にできない距離の近さに気づく。



誰かにとってはただの夜景でも、

誰かにとっては少しだけ特別な沈黙になる。



その違いが、

この家の夜を静かに揺らしていた。



23:00 PM



Diaryを書き終える。



封筒へ入れる。



名前は書かない。



誰の元へ届くかは分からない。



それでも。



届けたいと思う言葉がある。



最初の頃は、

ただルールだから書いていた。



でも今は。



誰かに届くことを、

少しだけ願っている。



今日の夜景を思い出すたび、

同じ景色を見ていたはずなのに、

心に残ったものが少しずつ違うことを、

それぞれがうすうす感じている。



その違いをまだ言葉にはできないまま、

けれど確かに、

誰かの存在が夜の記憶を変えていた。



【STAFF NOTE】

同じ景色を見た夜。



人は、

景色そのものよりも、

その時に隣にいた人を覚えている。



まだ恋とは呼べない。



でも。



「また一緒に」

と思う気持ちは、

確かにそこにある。



次回 Scene8【UNSEEN】

『夜のDiary』

スタッフだけが見る、

書き終えた後の表情。



言葉にはしなかった想いが、

静かな夜に残る。




ノベルに戻る I Addict