ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode22

『昨日の続き』

― 特別な一日の後、日常の中に残る感情。 ―

Day:Monday(共同生活22日目)



Scene7【UNSEEN】

『残った写真』

Monday|深夜



404 HOUSE。

日付が変わる少し前。

リビングの明かりは落ち、家の中には冷えた静けさが広がっていた。

昼間の笑い声も、夕食のときの会話も、もうどこにも残っていない。

それでも、完全に眠りきった空気ではない。

どこかの部屋で、まだひとり起きている。



ミンギュ



自室。

ベッドに腰かけたまま、ミンギュはスマホの画面を見つめていた。

映っているのは、昨日の漢江で撮った写真。

何度も開いたはずなのに、指先はなかなか離れない。

画面の光が頬に淡く映り、暗い部屋の中でその写真だけがやけに鮮明だった。

夜景を背に、全員が並んでいる。

笑っているスングァン。

楽しそうに話しているスニョン。

自然体で立つウォヌ。

そして少し離れた位置で、ふっと笑っているチアキ。

最初に会った日の、少しこわばった表情とは違う。

肩の力が抜けていて、目元までやわらかい。

その変化が、ミンギュには妙にうれしかった。

画面を少し拡大する。

チアキの笑顔が近づくたび、胸の奥が静かに熱を持つ。

「……」

声にならない息が、喉の奥でほどけた。

昨日の夜風の冷たさも、川の水音も、まだ身体のどこかに残っている気がした。

隣で聞こえた笑い声。

ふと視線が合った瞬間の、あの短い安心感。

特別な会話をしたわけじゃない。

約束を交わしたわけでもない。

それなのに、帰ってきてからも何度も思い出してしまう。

写真の中のチアキを見るたび、胸のあたりが少しだけ落ち着かなくなる。

ミンギュはスマホを閉じかけて、結局また開いた。

最後にもう一度だけ、画面を見つめる。



チアキ



同じ頃。

チアキの部屋は、机の上の小さな灯りだけが淡く空間を照らしていた。

閉じられた404 Diary。

その隣に置かれたスマホの画面には、グループチャットに送られた写真が映っている。

チアキはその中の一枚を、静かに見つめていた。

全員で並んだ写真。

その輪の中に、自分もいる。

それが、まだ少し不思議だった。

最初の日は、ただ迷惑をかけないようにと考えていた。

誰かの邪魔にならないように。

距離を間違えないように。

そうやって、ずっと周りを気にしていた。

でも今は違う。

誰かの「おかえり」という一言が、思っていた以上にあたたかい。

ドアが開く音や、廊下を歩く足音に、自然と安心している自分がいる。

写真の中で笑っている自分の顔を見て、チアキは小さく息をついた。

胸の奥がじんわりとほどけていく。

ここにいていいのだと、ようやく身体が覚え始めているようだった。

スマホを伏せると、チアキは少しだけ目を細めた。

「……楽しかったな。」

誰にも届かないほど小さな声だった。

それでも、その言葉を口にした瞬間、頬のあたりがふっとゆるむ。



404 HOUSE



別々の部屋で、別々の夜を過ごしている。

それでも、ふたりは同じ一日の記憶を胸に抱いたまま、眠りへ向かっていた。

特別な夜が終わっても、残るものがある。

言葉にしきれなかった温度。

見つめた時間の長さ。

ふとした笑顔の余韻。

そうしたものが、日常のすき間に静かに残っていく。



【STAFF NOTE】

人は、大きな出来事だけで恋に落ちるわけではない。

何気ない視線。

自然にこぼれた笑顔。

気づけば何度も思い返してしまう、ささやかな瞬間。



その小さな積み重ねが、感情の輪郭を少しずつ変えていく。



共同生活22日目。

404 HOUSEは、ただ一緒に暮らす場所から、誰かを意識し始める場所へと、静かに変わり始めていた。



次回予告

Episode23

『変わり始めた視線』

共同生活23日目。

いつもの日常。

けれど、小さな出来事をきっかけに、誰かを見る目が少しずつ変わっていく。

言葉にするにはまだ早い。

それでも、気づかないふりをするには、もう少し近すぎる距離になっていた。




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