ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode23
『変わり始めた視線』
― 気づかない優しさが、少しずつ特別になっていく。 ―
Day:Tuesday(共同生活23日目)
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Scene1
『いつもの朝』
Tuesday|08:00 AM
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404 HOUSE。
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朝の光が、
リビングの大きな窓からゆっくり差し込む。
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キッチンから聞こえる、
包丁の音。
食器が触れ合う音。
コーヒーの香り。
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共同生活が始まった頃は、
誰かが起きている気配にすら気を遣っていた。
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今は。
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朝の音が、
この家の日常になっている。
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キッチン
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チアキが朝食を準備している。
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片手でフライパンを動かしながら、
もう片方の手でスマホを見る。
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今日のフライトスケジュール。
明日の勤務予定。
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確認する項目は多い。
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それでも。
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テーブルの上には、
いつものように人数分の朝食。
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飲み物。
パン。
簡単なおかず。
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仕事へ向かう人が、
そのまま持っていけるように準備されたもの。
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誰かに頼まれたわけではない。
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ただ、
「いつものこと」として。
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ミンギュ
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キッチンへ入ってくる。
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寝起きの少し低い声。
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「おはよう。」
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チアキが振り向く。
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「おはようございます。」
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いつもの挨拶。
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でも。
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その距離は、
最初の日とは全く違う。
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ミンギュはテーブルを見る。
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並んだ朝食。
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そして、
チアキを見る。
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少し眠そうな顔。
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でも、
いつも通り笑っている。
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ミンギュ
「チアキ。」
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チアキ
「はい?」
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ミンギュは少し迷ってから言う。
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「いつ寝てるの?」
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チアキ
「え?」
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ミンギュ
「昨日も帰ってくるの遅かったのに。」
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「朝はいつもいるし。」
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チアキは少し考える。
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そして、
小さく笑う。
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「寝てますよ(笑)」
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ミンギュ
「でも。」
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視線をテーブルへ向ける。
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「朝は誰より早い。」
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チアキは少し困ったように笑う。
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「習慣なので。」
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その言葉。
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いつものように軽く返しただけ。
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でも。
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ミンギュには、
その「習慣」が、
誰かのために続けられているものだと分かった。
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毎朝あるもの。
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綺麗に並んだ食事。
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帰ってきた時に片付いているリビング。
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足りないものがない冷蔵庫。
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当たり前ではなかった。
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誰かが、
毎日気にしているから存在しているものだった。
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ミンギュ
「……いつもありがとう。」
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チアキの手が止まる。
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少し驚いた顔。
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チアキ
「急にどうしたんですか?」
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ミンギュは少し視線を逸らす。
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「いや。」
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少し照れたように笑う。
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「普通に思っただけ。」
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短い言葉。
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でも。
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チアキは少し嬉しそうに笑った。
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「ありがとうございます。」
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その表情を見て、
ミンギュも少し笑う。
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スングァン
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いつの間にか、
リビングに来ていたスングァン。
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二人の会話を聞いていた。
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スングァン
「最近ミンギュ、そういうこと言うようになったよね。」
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ミンギュ
「何が?」
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スングァン
「前は気づいても言わなかったじゃん。」
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ミンギュは少し考える。
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「そうかな。」
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スングァンは笑う。
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「そうだよ。」
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「前なら『ありがとう』って思って終わってた。」
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「今はちゃんと言うじゃん。」
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ミンギュは答えない。
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ただ。
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朝食を運ぶチアキを見る。
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笑顔。
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自然な動き。
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誰かのために動いている姿。
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その姿を、
以前より長く見ていることに、
本人はまだ気づいていなかった。
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【STAFF NOTE】
優しさは、
大きな言葉や特別な行動だけではない。
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毎日繰り返される小さなこと。
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誰かが気づかないところで続けていること。
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それに気づいた瞬間。
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「当たり前」だった存在は、
少しずつ特別になっていく。
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次回 Scene2
『それぞれの一日』
火曜日。
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11人はそれぞれの場所へ向かう。
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離れている時間に、
誰を思い出すのか。
まだ誰も知らない。
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