ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode23

『変わり始めた視線』

― 気づかない優しさが、少しずつ特別になっていく。 ―

Day:Tuesday(共同生活23日目)



Scene2

『それぞれの一日』

Tuesday|午前



朝食を終えた404 HOUSE。



リビングには、

出かける準備をする音が響いている。



スーツの袖を整える音。

鞄のファスナーを閉める音。

玄関に並ぶ靴。



いつもの朝。



でも。



最初の日とは違う。



「行ってきます。」



その言葉を言う相手がいること。



「気をつけて。」



そう返してくれる人がいること。



それだけで、

家を出る瞬間の温度が少し変わっていた。



ミンギュ



玄関で靴を履くミンギュ。



チアキがキッチンから顔を出す。



「ミンギュさん、お仕事頑張ってください。」



以前なら、

「ありがとうございます。」

それだけで終わっていた。



でも今は、

少しだけ会話が続く。



ミンギュ

「チアキも午後から仕事だよね。」



チアキ

「はい。」



ミンギュ

「無理しないで。」



短い言葉。



でも、

そこには以前にはなかった気遣いがあった。



チアキは少し驚いたように目を瞬く。



「ありがとうございます。」



ミンギュは小さく頷く。



「じゃあ、行ってきます。」



「行ってらっしゃい。」



ドアが閉まる。



その後もしばらく、

チアキは玄関の方を見ていた。



閉じたドアの向こうに足音の余韻が薄く残っている気がして、チアキは胸の奥がじんわり温かくなるのを感じる。朝の空気に混じるコーヒーの香りと、まだ少しだけ残る玄関の静けさが、たった一言の「無理しないで」を、思っていた以上に特別なものへ変えていた。



スンチョル



少し後。



スンチョルも出発の準備をする。



リーダーとして予定を確認しながら、

時計を見る。



「今日も忙しそうですね。」



チアキが言う。



スンチョルは笑う。



「まあ、いつものこと。」



そして少し間を置く。



「でも帰ってきた時に誰かいるって、意外といいね。」





チアキは頷く。



「分かります。」





短い会話。



でも。



同じ感覚を共有できることが、

少し嬉しかった。





「行ってきます。」



「行ってらっしゃい。」



玄関が静かになる。



チアキはその静けさの中で、さっきまで聞こえていた笑い声の残響をそっと思い返す。窓から差し込むやわらかな光と、手のひらに残る食器のひんやりした感触が重なって、誰かに帰りを待たれる安心が、少しずつ日常の輪郭になっていくのを感じていた。



404 HOUSE



午前の光が、

静かになったリビングへ差し込む。



チアキは食器を片付けながら、

ふと部屋を見渡す。



少し前まで、

誰もいなかったこの空間。



今は、

誰かの帰りを待つ場所になっている。





テーブルの上には、

昨日の夜の会話の余韻。



ソファには、

誰かが座っていた跡。



小さな生活の痕跡。





チアキはスマホを手に取る。



写真フォルダ。



そこには、

一昨日のHAN RIVER NIGHTの写真が残っている。



夜景。



笑顔。



11人で並んだ姿。





少し前なら、

自分がその輪の中にいることを想像できなかった。



でも今は。



その写真を見ると、

自然に笑顔になる。





「……変わったな。」



小さく呟く。



チアキは画面を伏せるようにスマホを胸元へ寄せる。写真に残る夜の青い光と、朝のリビングに満ちるやわらかな明るさが重なって、気づかないうちに受け取っていた優しさが、もうただの習慣ではないのだと静かに教えていた。



それぞれの場所へ



その頃。



ミンギュは会社へ。



スンチョルは打ち合わせへ。



ウォヌは作業へ。



スニョンはレッスンへ。



スングァンは収録へ。



ユナ、ソヨン、ジウォン、チェリンも、

それぞれの予定へ向かう。





離れて過ごす時間。



でも。



同じ家に帰るという約束が、

11人の中に少しずつ根付いていた。



チアキはその言葉を胸の中でそっとなぞる。遠ざかっていく背中を思い浮かべるだけで、まだ朝のぬくもりが指先に残っているようだった。さりげない気遣いが、気づけば帰る場所の意味まで変えていく――そんな静かな変化を、チアキは確かに感じ始めていた。



【STAFF NOTE】

一緒にいる時間だけが、

距離を縮めるわけではない。



離れている時に、

ふと思い出す。



「今、何をしているかな。」



そう思う瞬間が増えた時。



その人はもう、

ただの同居人ではなくなり始めている。



次回 Scene3

『突然の雨』

午後。



出勤するチアキを突然の雨が襲う。



いつものように「大丈夫」と言う彼女に、

誰かが気づく。



支える側だった人が、

少しだけ支えられる時間。




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