ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode4

『距離の測り方』



Scene1

『朝のルーティン』



共同生活4日目。

午前6時42分。



ROOM 404の朝は、

もう少しだけ「家」らしくなっていた。



初日は、

誰もが遠慮していた。



「何か手伝いますか?」

「私がやります」

「大丈夫です」



そんな言葉が何度も交わされていた。



4日目。



「いつもの」が少しずつ生まれ始める。



午前6時50分

玄関。



ガチャッ。



静かに扉が開く。



スンチョルがゴミ袋を持って外へ出る。



誰にも言わない。

誰にも起こされない。



もう3日連続だった。



ゴミ集積所から戻ると、

玄関でスングァンと鉢合わせる。



「またスンチョルさんですか?」



「たまたま起きていたので」



「その”たまたま”が毎日なんですよ」



スンチョルは少し照れたように笑う。



「気付いた人がやればいいですから」



スングァンはカメラに向かって肩をすくめる。



「こういう人が一番止められないんですよね」



全員が笑う。



午前7時10分

キッチン。



コーヒーミルの音が響く。



ミンギュだった。



昨日と同じように、

11個のマグカップを並べる。



ブラック。

ミルクあり。

砂糖少なめ。



少しずつ、

みんなの好みを覚えてきた。



「今日も淹れるんですね」

チアキがキッチンへ入ってくる。



アッシュブラウンの癖毛を、

低い位置でひとつにまとめている。

仕事の時より少しラフなまとめ髪。



「習慣になりそうです」

ミンギュが笑う。



「チアキさんは紅茶ですか?」



「今日はコーヒーにします」



「昨日遅かったですもんね」



「覚えてたんですか?」



「もちろんです」



チアキは少し驚きながら笑った。



「ありがとうございます」



【Interview】

ミンギュ。



「コーヒーを淹れる理由ですか?」



「そんなに深い意味はないです」



「朝、誰かが『ありがとう』って笑ってくれると」



「家の空気が柔らかくなる気がするので」





午前7時25分

リビング。



軽快な音楽が流れる。



「おはようございます!」



今日もスニョンだった。



「また始まりましたね」

ウォヌが本から目を上げずに言う。



「朝は音楽です!」



「昨日と同じ曲ですか?」

チアキが笑う。



「違います!」



「今日は”木曜日に合う曲”です」



「木曜日専用?」



「あります!」



スングァンが笑いながらツッコむ。



「そんなプレイリスト初めて聞きました!」



スニョンはリビングを歩きながら、

自然と肩でリズムを取る。



すると、

ソヨンもつられて少し体を揺らした。



「ほら!」



「笑いました!」



「朝は笑った方が健康です!」





午前7時40分

ソファ。



ウォヌは今日も読書をしている。



昨日とは違う文庫本。



チアキが横を通る。



「今日は何を読んでるんですか?」



ウォヌは表紙を見せる。



「エッセイです」



「小説じゃないんですね」



「人の考え方を読む方が好きな日もあります」



チアキはタイトルを見る。



「面白そうですね」



「読みますか?」



「え?」



「読み終わったら貸します」



少しだけ、

ウォヌの表情が柔らかい。



「ありがとうございます」



「楽しみにしています」



二人はそれ以上話さない。



でも、

沈黙が気まずくない。





午前8時

ダイニング。



ジョンハンが全員の顔を見回す。



「スニョンさん」



「はい?」



「腕、大丈夫ですか?」



「え?」



「昨日、木材を運ぶ時に少しかばっていましたよね」



スニョンは驚く。



「見てたんですか?」



「少しだけ」



「昔の怪我なので、大丈夫です!」



ジョンハンは安心したように頷いた。



その様子を見ていたユナ。



「ジョンハンさんって、本当に人を見ていますね」



「職業病です」



「でも、悪い癖じゃないです」





午前8時15分

朝食。



今日は、

ソヨンがスクランブルエッグ。



チアキがサラダ。



ミンギュがトースト。



スンチョルがスープを温める。



自然と役割が分かれている。



「誰も決めてないのに」

チェリンが笑う。



「いつの間にか担当がありますね」



「確かに」



「ミンギュさんはコーヒー」



「スンチョルさんはゴミ出し」



「スニョンさんは音楽」



「スングァンさんは朝のおしゃべり」



「ウォヌさんは読書」



「ジョンハンさんは体調管理」



「ソヨンさんは料理補助」



「ユナさんは冷蔵庫の在庫確認」



「ジウォンさんは生活費の管理」



スングァンが周りを見る。



「じゃあチアキさんは?」



全員がチアキを見る。



チアキは少し困ったように笑った。



「私は何でしょう……?」



ソヨンがすぐに答える。



「気付く担当です」



「うん」

ミンギュも頷く。



「誰かが忘れたことを一番最初に見つける人」



「あと、さりげなくフォローしてくれる人」



チアキは少し照れたように首を振る。



「そんな担当あるんですか?」



「あります」

スンチョルが穏やかに言う。



「この家には必要な担当です」



一瞬、

テーブルが静かになる。



チアキは何と言えばいいか分からず、

小さく「ありがとうございます」とだけ答えた。



【Interview】

ソヨン。



「最初は『優しい人』という印象でした。」



「でも今は少し違います。」



「チアキさんって、自分が何かをしたことをアピールしないんです。」



「だから気付いた時には、もう助けられていることが多くて。」



「そういう人と一緒に暮らすと、すごく安心します。」



【STAFF NOTE】

共同生活4日目。



役割は、

話し合って決めるものだけではない。



朝起きる時間。

コーヒーを淹れる人。

音楽を流す人。

場を和ませる人。



そして、

誰かの小さな変化に気付く人。



いつの間にか、

11人は「参加者」ではなく、

同じ家で暮らす”住人”になり始めていた。



この日。



初めて、

小さな意見の違いが生まれる。



それは決して喧嘩ではない。



一緒に暮らすからこそ避けられない、

“生活”の話だった。



Episode4 Scene2

『家事分担の見直し』




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