ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode23
『変わり始めた視線』
― 気づかない優しさが、少しずつ特別になっていく。 ―
Day:Tuesday(共同生活23日目)
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Scene4
『夜の帰り道』
Tuesday|23:45 PM
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夜の街。
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昼間降っていた雨は、
いつの間にか止んでいた。
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濡れた歩道に、
街灯の光がぼんやり映っている。
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車が通るたびに、
水たまりが小さく揺れる。
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少し冷たい夜風。
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一日の終わりを感じる空気。
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駅前
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チアキは仕事を終え、
駅から404 HOUSEへ向かって歩いている。
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肩には鞄。
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朝から続いた疲れ。
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それでも、
帰る場所があると思うだけで、
足取りは少し軽かった。
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「……。」
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ふと前を見る。
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駅の出口から出てきた人影。
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大きなバッグ。
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少し疲れた表情。
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でも、
見慣れた歩き方。
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スニョン
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「……チアキ?」
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チアキが顔を上げる。
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「スニョンさん。」
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偶然の再会。
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スニョンも少し驚いたように笑う。
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「こんな時間に?」
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チアキ
「仕事終わりです。」
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スニョン
「俺もレッスン終わり。」
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二人とも、
同じ方向へ向かうことに気づく。
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「帰る?」
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「はい。」
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自然に、
並んで歩き始める。
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夜道
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会話は特別なものではない。
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でも。
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以前なら、
少し気を遣っていた距離が、
今は不思議なくらい自然だった。
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スニョン
「今日、雨大丈夫だった?」
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チアキは少し驚く。
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「知ってたんですか?」
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スニョン
「昼、すごかったじゃん。」
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「出る時大変だったかなって。」
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チアキは少し笑う。
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「大丈夫でした。」
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その瞬間。
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スニョンが笑う。
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「それ。」
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チアキ
「え?」
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スニョン
「チアキ、すぐ言うよね。」
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チアキは思わず笑う。
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「皆さんにも言われます。」
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スニョン
「やっぱり。」
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少し笑ったあと。
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スニョンは真面目な顔になる。
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「でも。」
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「本当に大丈夫かは、言わなくても分かるようになりたい。」
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チアキの足が少しだけ止まりそうになる。
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優しい言葉。
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けれどそれは、ただ気遣われたというだけではなくて、
ふとした瞬間に胸の奥へ静かに残っていく種類の優しさだった。
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明るく見えるのに、
ちゃんと人の表情を見ている。
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何気ないようでいて、
その一言が少しだけ特別に感じられる。
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チアキ
「ありがとうございます。」
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スニョン
「またありがとう言ってる(笑)」
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チアキ
「……癖ですね(笑)」
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二人で笑う。
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帰り道
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スニョンはレッスンの話をする。
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「今日、新しい振り入れたんだけど。」
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チアキは興味深そうに聞く。
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「難しいんですか?」
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「めちゃくちゃ難しい。」
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少し大げさに言うスニョン。
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「でも、できた時はすごい嬉しい。」
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チアキは頷く。
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「仕事も似ています。」
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「大変でも、終わった時に誰かに喜んでもらえると嬉しいです。」
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スニョンは横を見る。
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街灯に照らされたチアキの表情。
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疲れているはずなのに、
穏やかに笑っている。
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「チアキってさ。」
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「はい?」
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「自分のことより、周りのこと考えてるよね。」
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突然の言葉。
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チアキは少し困ったように笑う。
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「そうですか?」
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スニョン
「うん。」
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「だから。」
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少し間を置く。
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「たまには頼っていいと思う。」
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その言葉は、
ジョンハンの言葉とは違う温度だった。
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押しつけるでもなく、
ただそっと隣に置かれるみたいな優しさ。
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静かな気づき。
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それはまだ名前のない感情だったけれど、
チアキの中で少しずつ、
“いつもの優しさ”では終わらないものに変わり始めていた。
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チアキは小さく頷く。
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「……努力します。」
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スニョン
「それも真面目すぎ(笑)」
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二人の笑い声が、
夜道に小さく響く。
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404 HOUSE前
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家が見えてくる。
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玄関の明かり。
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そこを見るだけで、
少し安心する。
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スニョン
「帰ろう。」
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チアキ
「はい。」
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二人は一緒に玄関を開ける。
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その瞬間。
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家の中から、
温かな光が漏れる。
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【STAFF NOTE】
優しさの形は、
人によって違う。
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気づいて声をかける人。
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黙って隣にいる人。
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笑わせてくれる人。
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同じ言葉でも、
届ける人によって、
残る温度は変わる。
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次回 Scene5
『待っていた人』
Wednesday|0:30 AM
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404 HOUSE。
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夜遅く帰ってくるチアキ。
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その帰宅を、
誰かが待っていた。
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