ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode23

『変わり始めた視線』

― 気づかない優しさが、少しずつ特別になっていく。 ―

Day:Tuesday(共同生活23日目)



Scene5

『待っていた人』

Tuesday|22:30 PM



404 HOUSE。



夜の静かなリビング。



仕事を終えたメンバーが、

それぞれの部屋で過ごしている時間。



テレビの音。



キッチンから聞こえる冷蔵庫の音。



誰かが廊下を横切る、かすかな足音。



いつもの夜。



でも、

今日は少しだけ違っていた。



グループチャット



スマホが震える。



404 HOUSEのグループチャット。



チアキからのメッセージ。



チアキ

「すみません。
今日は少し遅くなります。」



仕事が長引いたこと。



帰宅時間が少し遅れること。



短い連絡。



以前なら、

それだけで終わっていたかもしれない。



でも今は違う。



「帰る場所に、ちゃんと伝えておきたい。」



そんな気持ちが、

チアキの中に自然に生まれていた。



数秒後。



返信が届く。



スニョン

「俺も!」





続けて。



スニョン

「レッスン終わりで帰るから少し遅くなる!」





スングァンがそのメッセージを見る。



思わず笑う。



「同じタイミングじゃん。」





リビング



ソファにはミンギュ。



スマホを手にしたまま、

何気なく画面を見ているようで、

視線はすぐにグループチャットの表示に止まった。



チアキの名前。



その一行を見ただけで、

胸の奥がわずかに静かになる。



遅くなる。



それだけのことなのに、

「気をつけて帰ってきてほしい」と思ってしまう。



昔から、

誰かを気にかけることはあった。



疲れていれば水を渡す。



寒そうなら上着を勧める。



困っていれば、さりげなく手を貸す。



それはミンギュにとって、

ごく自然な優しさだった。



けれど最近は、

その優しさが向かう先だけが、

少しずつはっきりしてきていた。



チアキが遅くなると聞くと、

ただ「そうなんだ」と流せない。



玄関の音を、

無意識に気にしてしまう。



帰ってきた顔を、

最初に見たいと思ってしまう。



そんな自分に気づくたび、

ミンギュは少しだけ目を伏せる。





「チアキ、遅くなるって。」





スングァンが言う。





ミンギュ

「見た。」





声はいつも通り。



けれど、

スマホを持つ指先だけが、

ほんの少しだけ強くなっていた。





スングァン

「ふーん。」





少し間。





「じゃあ寝れば?」





ミンギュ

「なんで?」





スングァンは笑う。



「いや、別に。」





「普通に眠い時間じゃん。」





ミンギュはソファにもたれる。





「まだ寝る時間じゃない。」





そう言いながらも、

背もたれに預けた肩は、

どこか落ち着かない。



膝の上に置いた手が、

一度だけ、無意識に指先を組み替える。





スングァン

「でもさ。」





少しだけ声を落とす。



「チアキが帰ってくるまで起きてるつもりでしょ。」





ミンギュ

「違う。」





即答。





でも。



その否定は、

少しだけ早すぎた。





スングァンは笑う。



「最近、分かりやすいよ。」





ミンギュ

「何が?」





「前だったら、誰かが遅く帰ってきても気にしてなかった。」





「でも今は。」



スングァンは玄関の方を見る。





「帰ってきたか、ちゃんと確認してる。」





ミンギュは何も言わない。





窓の外を見る。





雨上がりの街。



濡れた道路に、

街灯の光が静かに反射している。





「……同じ家にいるからだろ。」





小さな声。





それは言い訳にもならないほど、

やわらかくて曖昧だった。





スングァンは少し笑う。





「そういうことにしとく。」





Wednesday|00:00 AM



時間が過ぎる。





リビングの時計。



秒針の音。





ミンギュは本を開いている。



でも、

ページはしばらく変わっていない。



文字を追っているふりをしながら、

耳はずっと玄関の方へ向いていた。





スングァンが気づく。





「読んでないじゃん。」





ミンギュ

「読んでる。」





「10分同じページ。」





ミンギュは本を閉じる。





「……うるさい。」





スングァンは笑う。





でも、

その表情はからかっているだけではなかった。





誰かが帰ってくるのを、

自然に待っている。





それがもう、

この家の日常になっていること。





そしてミンギュにとっては、

その「誰か」がチアキであることが、

いつの間にか当たり前になっていた。





Wednesday|00:30 AM



玄関の方から、

小さな物音。





鍵が回る音。





ミンギュが顔を上げる。





その動きは、

自分でも驚くほど早かった。





スングァンも気づく。





二人の視線が、

自然に玄関へ向かう。





ミンギュは立ち上がりかけて、

ほんの少しだけ止まる。





急いでいると思われたくなくて、

けれど、遅れたくもなくて。





そんな小さな迷いが、

肩の動きにだけ残る。





「帰ってきた。」





小さな声。





その声には、

待っていたことを隠しきれない温度があった。





そして。



玄関のドアが開く。





次回 Scene6

『おかえり』



深夜の404 HOUSE。



「ただいま」と「おかえり」。



何気ない言葉が、

少しずつ特別な意味を持ち始める。




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