ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode23

『変わり始めた視線』

― 気づかない優しさが、少しずつ特別になっていく。 ―

Day:Tuesday(共同生活23日目)



Scene6

『おかえり』

Wednesday|00:30 AM



玄関のドアが開く。



冷たい夜の空気が、

少しだけ家の中へ入り込む。



「ただいま。」



小さな声。



でも。



その一言だけで、

静かだった404 HOUSEに温度が戻る。



玄関



チアキが靴を脱ぐ。



その後ろから、

スニョンも入ってくる。



「ただいま。」





リビングから、

すぐに声が返ってくる。



「おかえり。」





チアキが顔を上げる。



ミンギュ。



そしてスングァン。



まだ起きていた二人。





チアキは少し驚く。



「まだ起きてたんですか?」





スングァンが笑う。



「チアキが遅くなるって言ったから。」





ミンギュを見る。





「ね?」





ミンギュ

「違う。」





すぐ否定する。





「普通に起きてただけ。」





スングァン

「はいはい。」





チアキは思わず笑う。





その笑顔を見て、

ミンギュの表情が少し柔らかくなる。



いつもなら、無理をしてでも平気そうに笑う彼女が、今はちゃんと笑っている。



その小さな違いだけで、胸の奥の張りつめていたものがふっとほどけた。



リビング



スニョンが鞄を置く。





「今日、駅でチアキに会ったんです。」





スングァン

「え?」





「一緒に帰ってきたの?」





スニョン

「うん。」





チアキ

「偶然です。」





その言葉を聞いて、

ミンギュは小さく頷く。





「そうだったんだ。」





ただの確認。





でも。



その声には、

少し安心したような響きがあった。



チアキがひとりで遅くなったわけじゃないと知って、ミンギュはようやく肩の力を抜けた。



それだけのことなのに、なぜかほっとしてしまう自分がいた。



キッチン



チアキは冷蔵庫から水を出す。





ミンギュは、

何気なく時計を見る。





もう深夜。





「疲れたでしょ。」





チアキが振り返る。





「少しだけです。」





一瞬。



いつもの「大丈夫です」が出そうになる。





でも。



今日は違った。





「……少し疲れました。」





その言葉に、

ミンギュは少し目を丸くする。





小さな変化。





でも。



それを聞けたことが、

なぜか嬉しかった。



彼女が少しだけ本音を見せてくれた気がして、ミンギュは思わず息を止める。



守られているのではなく、頼ってくれたようで。



その感覚が、静かに心を温めた。



「そっか。」





「今日は早く寝て。」





チアキは笑う。





「ミンギュさんもですよ。」





「俺?」





「はい。」





「最近、皆さんのこと気にしすぎです。」





その言葉に、

ミンギュは一瞬黙る。





自分では気づいていなかった部分。





でも。



否定できなかった。





「……そうかな。」





チアキ

「そうですよ。」





柔らかい笑顔。





その表情を見て、

ミンギュは少し視線を逸らす。



笑っているだけなのに、どうしてこんなに目が離せないのか。



気づけば、彼女の小さな変化を探している。



それが安心に変わり、いつの間にか、もっと見ていたいと思っていた。



リビング



スングァンはその様子を少し離れた場所から見ている。





以前なら。



ただ同じ家に住む人たちだった。





でも今は。



誰かの帰宅を気にする。



誰かの疲れに気づく。



誰かの小さな変化を見る。





そんな関係になっていた。





スニョンが笑う。





「じゃあ、俺先に寝ます。」





チアキ

「今日はありがとうございました。」





スニョン

「またありがとう(笑)」





チアキ

「癖なので(笑)」





小さな笑い声。





深夜の404 HOUSEに、

優しい空気が残る。





廊下



部屋へ向かうチアキ。





その背中を、

ミンギュは一瞬だけ見る。





疲れているのに笑っていたこと。





「大丈夫」と言わなかったこと。





そんな小さな変化が、

なぜか心に残る。





ただの気遣いのはずなのに、胸の奥ではそれが少しずつ特別になっていく。



ミンギュは、自分がもう彼女の些細な言葉や表情に反応していることを、静かに自覚し始めていた。



【STAFF NOTE】

人は、

大きな出来事で恋をするとは限らない。



「帰ってきた。」



「よかった。」



そう思った瞬間から、

少しずつ特別になっていく。



次回 Scene7

【UNSEEN】



深夜の404 HOUSE。



誰にも見られていない場所で、

また一つ、小さな優しさが残される。




ノベルに戻る I Addict