ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode24

『待っている理由』

― 誰かを待つことが、当たり前になる。 ―

Day:Wednesday(共同生活24日目)



Scene5

『それぞれの夜』

Wednesday|Evening



一日の終わり。



404 HOUSE。



朝は少し違って感じた家も、

夜になると、いつもの明かりに包まれていた。



リビングの照明。



キッチンから聞こえる食器の音。



誰かの笑い声。



見慣れた風景。



それでも。



そこにいるはずの人がいないだけで、

空気は少しだけ静かだった。





Living Room



スングァンとスニョンがソファに座りながら、

スマホを眺めている。





「チアキ、まだ仕事中かな。」





スングァンがぽつりと呟く。





隣にいたウォヌが顔を上げる。





「長いフライト?」





「うん。」





スニョンは画面を見つめたまま、小さく息をつく。





「大変だよね。」





普段から、

疲れた顔をあまり見せないチアキ。





だからこそ、

いない時間になると、

その大変さを余計に想像してしまう。





「いつもなら、通りすぎるときに肩を軽く叩いて、『ちゃんと食べた?』って聞いてくるのに。」





そう言って、

スングァンは少しだけ笑う。





その何気ない一言が、

今はひどく恋しかった。





ウォヌは何も言わず、

ソファの背にもたれる。





チアキが静かに温かいお茶を置いていく、

あの気づかれないくらい自然な優しさを思い出していた。





彼女がいるときは当たり前だった気遣いが、

いなくなって初めて、

どれほど支えになっていたのかを知る。







Kitchen



ミンギュとスニョンは夕食後の片付けをしている。





洗ったグラスを棚へ戻す。





ふと、

キッチンカウンターを見る。





いつもチアキが立っていた場所。





誰かのために飲み物を用意していた場所。





何気なく揃えられていたもの。





今日だけは、

そこだけが少し空いて見えた。





ミンギュはスマホを見る。





通知は一件。





チアキから。





『無事到着しました。』





短いメッセージ。





それだけなのに、

胸の奥がふっと緩む。





ミンギュは少し考えてから、

返信を打つ。





『よかった。』





送信画面を見つめる。





それだけでいいのか、と一瞬迷う。





けれど、

今は余計な言葉を重ねるより、

ただ無事を知れたことのほうが大きかった。





送信。





画面に表示される。





既読になるまでの数秒が、

妙に長く感じた。





いつもなら、

味見をしたチアキが「ちょうどいい」と笑ってくれる。





その一言を思い出すだけで、

料理の匂いまで少しやわらかくなる気がした。





彼女がそこにいるだけで、

この家の夜は少し安心できたのだと、今さら気づく。







Living Room



スングァンとスニョンがミンギュを見る。





「返信した?」





ミンギュが顔を上げる。





「何が?」





「チアキ。」





一瞬、

ミンギュが黙る。





「……見てたの?」





スニョンは笑う。





「分かるよ。」





「最近のミンギュ、分かりやすいから。」





ミンギュは少し眉を寄せる。





「何が。」





「前はさ。」





スングァンはソファにもたれる。





「誰かが大変そうでも、気づいてても自分の中で終わらせてたじゃん。」





「でも最近は。」





少し笑う。





「ちゃんと言葉にするようになった。」





ミンギュは返事をしない。





否定もしない。





ただ、

スマホを見つめる。





そこにあるのは、

短いやり取りだけ。





けれど、

その短さの中に、

以前にはなかった確かな温度があった。











404 HOUSEの時間がゆっくり過ぎていく。





ジョンハンはリビングで本を読む。



ウォヌは静かに作業をする。



スンチョルは仕事の資料を確認する。





誰も、

大きく「チアキがいない」とは言わない。





それでも。





ふとした瞬間に、

視線が向かう。





いつも座っている場所。



いつも声が聞こえる場所。





そこにいないことが、

じわじわと寂しさになっていく。





ジョンハンはページをめくりながら、

ふと視線を止める。





チアキが隣からのぞき込んで、

「その続き、気になる」と小さく笑う顔を思い出していた。





ウォヌは作業の手を止める。





何も言わずにそっと置かれる、

あたたかい飲み物の温度を、

指先がまだ覚えている気がした。





スンチョルは資料の端に目を落とす。





そこにあるはずのない、

「休んで」と書かれたメモを探してしまう。





彼女がいると、

誰かの疲れも、沈黙も、少しだけ軽くなっていた。





だからこそ、

いない夜は、ただ静かなだけでは終わらない。







ミンギュ



部屋へ戻る前。



もう一度だけ、

スマホを見る。





新しい通知はない。





それでも。





「ちゃんと着いたならよかった。」





小さく呟く。





誰かに聞かせるためではない。





自分自身に言い聞かせるような声だった。





そして、

その言葉の奥にあるものを、

ミンギュはもう隠さなかった。





無事でいてほしい。



疲れていないでほしい。



早く帰ってきてほしい。





そう思うたびに、

この家で彼女を待つことが、

ただの習慣ではなくなっていく。





明日の朝、

また帰ってくる場所に彼女がいる。





その当たり前を、

自分はもう待っているのだと気づく。





【STAFF NOTE】



心配する気持ちは、

いつも大きな言葉になるわけではない。





「無事かな。」



「疲れていないかな。」



「ちゃんと休めているかな。」





そんな小さな気持ちが積み重なって、

誰かを待つ理由になっていく。





次回 Scene6

『404 Diary(第6回)』

Wednesday|22:00



直接伝えられない感謝を、

一枚の紙に書く夜。



離れていても、

思い浮かぶ人がいる。




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