ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode25

『近づくほど見えなくなるもの』

― 近い存在ほど、自分の気持ちに気づけない。 ―

Day:Thursday(共同生活25日目)



Scene1

『帰宅』

Thursday|13:30 PM



404 HOUSE。



昼の光が、

リビングの床にゆっくり差し込んでいる。



夜とは違う、

穏やかな時間。



キッチンから聞こえる食器の音。



テレビから流れる小さな音。



誰かの笑い声。



そこには、

いつもの404 HOUSEの日常があった。





その時。



玄関のドアが開く。





「ただいまです。」





チアキ。



国際線勤務を終え、

少し疲れた表情で帰ってくる。



長時間のフライト。



慣れている仕事。



それでも、

身体には少しだけ疲れが残っていた。



肩から下ろす鞄。



靴を脱ぐ動き。



髪を整える仕草。



いつもと変わらないように見える。



でも。



長く一緒に暮らしている人には、

その小さな違いが分かるようになっていた。



チアキ自身も、

玄関をくぐった瞬間にようやく気づく。



ああ、今日は少し無理をしていたんだな、と。



機内で張りつめていた気持ちが、

ここに戻ってきた途端にふっと緩む。



疲れているはずなのに、

胸の奥には不思議と重さだけではないものが残っていた。



帰ってこられた。



そう思えたことへの、

静かな安心感だった。





Living Room



ソファにいたメンバーが顔を上げる。



スングァン。



チェリン。



ウォヌ。





一番に気づいたのは、

スングァンだった。





「チアキ帰ってきた!」





その声に、

チアキが少し驚いて笑う。





チェリンも振り返る。





「おかえり!」





チアキは少し照れたように、

いつもの言葉を返す。





「ただいまです。」





短い会話。



でも。



その言葉の意味は、

最初の頃とは変わっていた。





最初は、

ただの挨拶だった。





今は。



「帰ってきてくれて安心した。」



そんな気持ちが、

少しだけ混ざっている。





Living Room



スングァンが時計を見る。





「俺、そろそろ行かないと。」





チェリンも立ち上がる。





「私も仕事です。」





チアキ

「頑張ってください。」





スングァン

「チアキは今日は休んでね。」





その言葉に、

チアキは少し目を丸くする。





「ありがとうございます。」





以前なら、

きっと笑って、

「大丈夫です。」

と答えていた。





でも今は。



その優しさを、

そのまま受け取ることができる。





「気をつけて行ってらっしゃい。」





「行ってきます。」





二人を見送る。





玄関のドアが閉まる。





静かになった404 HOUSE。





チアキはリビングを見渡す。





少し前までなら、

仕事から帰ってきても、

また次の予定を考えていた。





でも今は。



ここに戻ってくると、

自然に肩の力が抜ける。





張りつめていたものがほどけていく感覚に、

チアキは小さく息を吐く。



疲れているはずなのに、

不思議と嫌な疲れではなかった。



むしろ、

ようやく安心して休める場所に戻れたのだと、

身体のほうが先に理解しているようだった。





「……落ち着くな。」





小さな声。





誰にも聞こえない独り言。





でも。



その場所は、

確実にチアキにとって特別な場所になっていた。





【STAFF NOTE】



人は、

大きな出来事だけで距離を縮めるわけではない。





毎日の「おかえり」。



毎日の「行ってらっしゃい」。



何気ない会話。



小さな気遣い。





そういう瞬間の積み重ねが、

いつの間にか相手の存在を大きくしていく。





近くにいるからこそ、

当たり前になってしまう。





でも。



その当たり前の中に、

特別な感情が隠れていることもある。





次回 Scene2

『久しぶりの昼の404 HOUSE』



夜しか見ることのできなかった相手の姿。



休日の昼だからこそ見える、

知らなかった一面。



そして、

自然に差し出される優しさが、

少しずつ距離を変えていく。




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