ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode26

『言葉にならない距離』

― 気づいているのに、まだ名前をつけられない感情。 ―

Day:Friday(共同生活26日目)



Scene4

『それぞれの小さな変化』

Friday|18:30 PM



404 HOUSE。



夕方。



外が少しずつ暗くなり始める時間。



窓の外には、

オレンジ色の光が広がっている。



一日の仕事を終えたメンバーが、

少しずつ帰宅してくる。





Entrance



玄関のドアが開く。



「ただいま。」



「おかえり。」



その言葉が、

いつの間にか自然になっていた。





Living Room



最初に帰ってきたミンギュは、

ソファに荷物を置くより先にスマホを手に取る。



画面を開く指先が、

ほんの少しだけ急いでいる。



グループチャット。



そこには、

チアキの勤務予定。



帰宅予定時刻。



何気なく目に入るはずの文字を、

ミンギュは一度見ただけで終わらせない。



親指がスクロールを止めたまま、

視線だけが何度も同じ行をなぞる。





「……。」





以前なら、

確認することもなかった情報。



でも今は、

画面を閉じたあとも、

ふとした拍子にその時間を思い出してしまう。





スングァンが横から覗き込む。



「また時間見てる?」





ミンギュは顔を上げる。



「見てない。」





スングァンは笑う。



「まだ何も言ってないのに。」





ミンギュは何も返さない。



でも。



スマホを閉じる前に、

もう一度だけ画面に目を落とす。



その視線は、

さっきより少しだけ長く止まっていた。





Kitchen



スンチョルが帰宅。



リビングにいるメンバーを見渡す目が、

無意識に人数を数えるように動く。





「今日はみんな揃う?」





何気ない一言。





でも。



以前なら、

自分の予定だけを考えていた。



今は、

誰がまだ帰っていないのか、

誰の靴が玄関にないのかを、

入ってきた瞬間に確かめてしまう。





「ソヨンは夜勤前だから、食べていくと思う。」





ユナが答える。





スンチョルは頷く。





「じゃあ、夕飯少し残しておこう。」





その言葉に、

誰も驚かない。





それが、

この家の日常になっていた。





Living Room



ジョンハンは、

帰宅したメンバーの顔色を順に見る。





チアキはまだ帰っていない。





でも。



誰かがドアを開けるたび、

ジョンハンの視線は自然と玄関へ流れる。





連日の勤務。



きっと疲れているだろうと、

口に出す前に、

少しだけ眉を寄せてしまう。





「毎日大変だよね。」





誰に言うでもなく、

小さく呟く声は、

いつもより少しだけ柔らかかった。





Kitchen



ウォヌは冷蔵庫を開ける。





そして、

一本の飲み物を取り出す。





机の端へ置く。





その位置は、

誰が見ても偶然には見えない。





けれどウォヌは、

それを置いたあと、

一度だけ玄関のほうへ目をやる。





誰のためか。



言葉にはしない。





でも。



戻ってきた時に、

手に取る瞬間が少しでも軽くなればいい。





それだけ。





Living Room



スニョンが帰宅する。



少し疲れた顔。



でも。



リビングに入った瞬間、

誰かと目が合うたびに、

肩の力がふっと抜けていく。





「なんか、家に帰ってきたって感じする。」





スングァン

「最初の頃じゃ考えられないね。」





スニョンは頷く。





「うん。」





「最初はみんな静かだった。」





今は違う。





誰かが笑って。



誰かが心配して。



誰かが帰りを待っている。



その“待つ”は、

ただ時間をつぶすことじゃない。



玄関のほうへ向いたままの視線や、

テーブルの上で落ち着かない指先や、

聞き逃さないように少しだけ静かになる声に、

ちゃんと形を持ちはじめていた。





Entrance



夜。



玄関のドアが開く。





チアキが帰宅する。





「ただいま。」





「おかえり。」





その言葉が、

いつの間にか自然になっていた。





Interview(短編)



スタッフ。

「最近、誰かの変化に気づいた瞬間はありますか?」





スンチョル



「みんなですね。」





「最初は、自分のことで精一杯だったと思う。」





「今は、誰かが席を立つ音とか、玄関のほうを見る回数とか、そういう小さな動きまで見てる。」





ウォヌ



「気づくことが増えました。」





「前なら見過ごしていた、飲み物を置く手つきとか、返事の前に一瞬止まる目線とか。」





ジョンハン



「誰かが無理してる時。」





「言葉にする前に分かるようになった気がします。」





「声の高さが少し違うとか、笑っていても指先が落ち着かないとか。」







404 HOUSE



それぞれ違う方法。



それぞれ違う距離。





でも。



同じ家で暮らした時間が、

少しずつ人を変えていた。





【STAFF NOTE】



優しさは、

特別な瞬間だけに生まれるものではない。





飲み物を置くこと。



帰宅時間を気にして、

何度も玄関へ目を向けること。



食事を残しておくこと。





何気ない行動の中に、

その人への想いは現れる。





本人も気づかないほど自然な変化が、

少しずつ誰かとの距離を近づけている。





次回 Scene5

『リビングの会話』



夜。



11人が揃うリビング。



最初の日の印象を振り返る中で、

今だから言える言葉がこぼれていく。




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