ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode1

『404 HOUSEへようこそ』



Scene1

『最初の入居者』

ソウル郊外。

都会の喧騒から少し離れた場所に、一軒の大きな家が建っていた。

白い外壁。
大きなガラス窓。
広い庭。
夜になるとライトアップされるウッドデッキ。

一見すると、誰かの別荘のような場所。

しかし、玄関横に設置された黒いプレートには、こう書かれていた。

ROOM 404

「404」

存在しないページを意味するエラーコード。

けれど、この家に集まる11人にとっては、まだ誰も知らない未来へ進むための、新しいページ。

スタッフは早朝から準備をしていた。
リビングには11個の名前が書かれたカード。

キッチンには11人分の食器。
冷蔵庫には、初日の夕食のための食材。

そして壁には、この3ヶ月間のルールが貼られていた。



ROOM 404 RULE

共同生活期間は3ヶ月。

参加者同士の恋愛は禁止。

連絡先交換は禁止。

外部との個人的な接触は禁止。

毎週、自分自身について語るインタビューを行う。



恋愛リアリティ番組なのに、恋愛は禁止。
それがこの番組最大のテーマだった。

「恋をする前に、人を知ること」
「誰かに選ばれる前に、自分自身と向き合うこと」



【STAFF NOTE】

撮影初日。

スタッフの間でも、この番組がどう進むのか予想できなかった。

普通の恋愛番組なら、最初の数日で好意の方向性が見えてくる。

しかしROOM 404では、それは禁止されている。

だからこそ、カメラが追うものは、視線ではなく、
言葉でもなく、もっと小さな変化だった。



午前10時。

最初の車が到着した。

黒いバンから降りてきた男性。
背が高く、落ち着いた雰囲気。

彼は玄関前で一度立ち止まり、家を見上げた。

チェ・スンチョル。

芸能事務所でアーティストを支えるA&Rプロデューサー、32歳。

スンチョルはスタッフに軽く頭を下げる。

SC「よろしくお願いします。」

声は低く、穏やかだった。

ST「緊張していますか?」

スタッフが聞くと、彼は少しだけ笑った。

SC「していますね。」

その言葉はスタッフには少し意外だった。

ST「意外ですね。」

スタッフの言葉にスンチョルはまた優しく微笑む。

SC「そうですか?僕は普段、人を見る側の仕事なので…」

少し間を置いて、

SC「自分が見られる側になるのは慣れていないです。」

と答えた。



家の中へ入り、リビングを見渡すスンチョル。

11人が座れるように、大きなソファーや椅子がたくさん並んでいる。

その中の一つに座る。
まだ誰もいない。
静かな部屋。
彼は無意識に時計を見た。



【Interview ー スンチョル】

「僕が最初に来たので、リーダー役を期待されるかもしれませんね。」

「でも……」

少し考える。

「今回は…、誰かを引っ張るためじゃなくて、自分自身を見るために来ました。」

その言葉にスタッフも優しく微笑んだ。



30分後。

二人目の参加者が到着した。

長いコート。
柔らかい表情。
静かな笑顔。

ユン・ジョンハン。

心理カウンセラー、31歳。

玄関に入ると、すぐに先に来ていたスンチョルへ声をかけた。

JH「こんにちは。一人目ですか?」

SC「はい。」

ジョンハンはどこか安心したように微笑む。

JH「よかった。少し安心しました。」

二人は自然に握手をした。

初対面なのに、なぜか2人の間に気まずさはなかった。



その後も、少しずつ人が集まっていく。

明るい声で入ってきたのは、クォン・スニョン。

HS「こんにちは!緊張してる人いますか?僕だけじゃないですよね?」

スニョンは到着して5秒で場を和ませた。
スンチョル、ジョンハンも笑いながら、僕たちも緊張してますよ。と答えた。



静かに本を片手に入ってきたのは、チョン・ウォヌ。

WN「……こんにちは。」

短い挨拶。
しかし、全員の名前カードを一度確認していた。

誰がどこに座るのか。
誰が緊張しているのか。

彼は何も言わず静かに観察していた。

HS「まだ女性陣現れないですね!」
SC「そうですね。」



昼過ぎ。

家の前に一台の高級車が停まった。

白いシャツ。
シンプルな服装。
爽やかな雰囲気。

車から降りてきたのは、キム・ミンギュ。
外資系企業マーケティングマネージャー、29歳。

MG「こんにちは!」

ミンギュは明るく挨拶すると、自然に全員へ声をかけた。



最後の男性参加者。

ブ・スングァン。
ラジオDJ、28歳。

彼の声は韓国人なら一度は皆聞いたことがあるくらい、人気のラジオDJ。

玄関を開けた瞬間、

SG「こんちには…ってすごい……!なんか、本当に番組みたいですね?」

と言って全員を笑わせた。

男性陣はこれで全員ですとスタッフが告げると、スングァン、スニョンを中心に、自然と男性陣同士で会話が盛り上がった。



午後。

遂に女性参加者たちが到着する。



白い車から降りてきたのは、キム・ユナ。28歳。

美容ブランドのCEOをしている彼女は、堂々とした雰囲気で家の中に入ってきた。

YN「キム・ユナです。よろしくお願いします。」

自信に満ちた笑顔で挨拶をする彼女に男性陣も、笑顔で挨拶を返した。



次に到着したのは、パク・ソヨン、27歳。

獣医師で、動物が好き。
車から降りるや否や、柔らかい声で

SY「道、大丈夫でしたか?」

と、到着したスタッフにも声をかけた。



次に到着したのは、イ・チェリン、24歳。

インスタグラマーインフルエンサーの彼女は、参加者の中で1番若く、またとても華やかだ。

CL「うわぁ!家、すごく綺麗……!」

スマホを取り出しそうになり、すぐ笑った。

CL「撮影中だからダメですね!」



チェリンとほぼ同時に到着したのは、ナム・ジウォン、30歳。

弁護士で、落ち着いた表情を浮かべたままスタッフに頭を下げ、周囲を静かに見渡した。



午後3時42分。最後の車が404 HOUSEの前に到着する。

スタッフが時計を見る。

「最後の参加者です」

ドアが開いた。

白いニットにタイトなデニム。

アッシュブラウンの腰までありそうなロングウェーブヘアの自然な髪。

小さなスーツケースを持った女性がゆっくり降りてくる。

山内 チアキ、26歳。

日本から来た唯一の参加者。
国際線客室乗務員。

チアキは玄関前で一度深呼吸した。

韓国語で、小さく。

「……よろしくお願いします。」

マイクが拾うギリギリの音量で誰に向けたのかわからない挨拶をする。



スタッフが声をかける。

ST「緊張していますか?」

チアキは少し笑った。

「はい、しています。すごく。」

日常会話程度の韓国語ならできる彼女。
しかしやっぱり緊張はするのだろう。

「でも……、楽しみでもあります。」

家を見上げ、チアキはそう言うと、また小さく微笑んだ。

ふぅっと深呼吸をしてから、スタッフに「開けますよ?」と一度確認してから、ゆっくりと玄関を開ける。

11人の視線がチアキに一気に集まり、一瞬、静かになる。

チアキはゆっくりと、しかし透き通った声で

「初めまして。山内 チアキです。よろしくお願いします。」

そう言って綺麗にお辞儀をした。
チアキのお辞儀の綺麗さに言葉を失う。

最初に声をかけたのはスングァンだった。

SG「もしかして、日本の方ですか?」

「はい、日本人です。」

SG「韓国語、すごく上手ですね!」

スングァンに褒められて、少し照れたように微笑むチアキ。

「ありがとうございます。でも、まだまだ勉強中です。」
SG「いや、僕より上手かもしれません!」

スングァンの言葉にドッと笑いが起きる。
少し緊張していた空間が、一瞬にして和んだ。



ミンギュはそのやり取りを小さく笑いながら見ていた。

すごく、自然な人だな。

チアキを見て、心の中でそう思った。



ジョンハンは、彼女が入ってきた瞬間、全員に挨拶する前に、まずスタッフへ頭を下げたことに気付いていた。



ウォヌは、彼女のスーツケースについた航空会社の小さなタグを見た。

仕事柄、移動が多い人なのだろう。
そう考えただけだった。



スンチョルは、最後に来た彼女が緊張していることに気付いた。

けれど、「大丈夫?」と声をかけるほど近づくことはしなかった。

まだ初日だから。



この時点では、まだ誰も知らなかった。

3ヶ月後。

この家で一番大きく変化する人間が、この静かに笑う日本人女性だということを。



【STAFF NOTE】

初日の映像を編集していたスタッフは、ある場面で一度手を止めた。

チアキが玄関に入った直後。
誰も気付いていない数秒間。

彼女は全員の表情を確認していた。

緊張している人。
無理に笑っている人。
話しかけるタイミングを探している人。

その時点では、それはただの癖に見えた。

しかし後にスタッフは気付く。
彼女は3ヶ月間、ずっと同じことをしていた。

誰より先に。
誰かの小さな変化を見つけていた。




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