ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode27

『近づく理由』

― 一緒にいる理由が、少しずつ変わっていく。 ―

Day:Saturday(共同生活27日目)



Scene4

『チアキ × ミンギュ』

Saturday|14:00 PM



午後の陽射しが、

キッチンの大きな窓から差し込んでいた。



まな板を叩く包丁の音。



鍋から立ち上る湯気。



炊きたてのご飯の香りが、

家の中へゆっくりと広がっていく。



リビングでは、

楽しそうな笑い声が時折聞こえる。



その声を背中に聞きながら、

二人は並んで料理をしていた。



「この野菜、これくらいの大きさで大丈夫?」



ミンギュが手を止め、

切った野菜を見せる。



チアキは少し身を乗り出し、

まな板を覗き込んだ。



「はい、ちょうどいいです。」



「本当?」



「すごく切り方がきれいです。」



その一言に、

ミンギュは少し照れたように笑う。



「褒められると緊張するな。」



「本当のことですよ。」



チアキも小さく笑った。



穏やかな空気が流れる。



無理に会話を続けなくても、

沈黙は気まずくなかった。



包丁の音だけが、

一定のリズムで響いている。



しばらくして、

ミンギュが静かに口を開いた。



「チアキって、人に頼むの苦手?」



チアキの手が、

ほんの少し止まる。



鍋をかき混ぜながら、

ゆっくり考える。



「……そうですね。」



「昔から、自分で何とかすることが多かったので。」



「頼るより、自分でやった方が早いって思ってました。」



少し笑う。



「その癖が、まだ抜けなくて。」



ミンギュは頷きながら聞いていた。



否定も、

慰めもしない。



ただ、

相手の言葉を受け止める。



「でも。」



チアキは、

リビングから聞こえてくる笑い声へ視線を向けた。



スングァンの笑い声。



スニョンの大きなリアクション。



ジョンハンとユナの穏やかな会話。



ソヨンが笑う声。



この家の日常。



「今は、少し違います。」



チアキは静かに言った。



「前より、頼ってもいいのかなって思えるようになりました。」



「みなさんが、自然に助けてくださるので。」



その言葉を聞いたミンギュは、

少しだけ目を細めた。



「それなら良かった。」



短い返事。



でも、

その声には安心したような温かさがあった。



少しの沈黙。



鍋の蓋が、

小さく音を立てる。



ミンギュが火加減を調整しながら、

ふと笑う。



「でもさ。」



「頼られるの、結構嬉しいよ。」



チアキは驚いたように顔を上げる。



「そうなんですか?」



「うん。」



「頼ってもらえるって、信頼されてるってことだと思うから。」



その言葉に、

チアキは何も返せなかった。



ただ、

少し照れたように笑う。



「じゃあ……。」



少しだけ間を空けて、

遠慮がちに口を開く。



「このお鍋、向こうに運ぶの手伝ってもらってもいいですか?」



ミンギュは、

一瞬だけ驚いた顔をした。



そして、

すぐに笑顔になる。



「もちろん。」



「任せて。」



二人で鍋を持ち上げる。



同じタイミングで歩き出す。



肩が少し近づく。



どちらも、

もうその距離を気にしなかった。



窓の外では、

初夏の風が木々を揺らしている。



柔らかな陽射しが、

二人の背中を静かに照らしていた。



【STAFF NOTE】



人は、

「頼ってもいい」と思えた時、

相手との距離が少しだけ変わる。



助けることも。



助けられることも。



そのどちらにも、

信頼は宿っている。



そして、

言葉にしなくても伝わる安心感は、

いつの間にか二人の間に生まれていた。



次回 Scene5

『それぞれのペア』



家のあちこちで、

それぞれの時間が流れていく。



語り合う人。



笑い合う人。



静かに寄り添う人。



同じ一日でも、

思い出の形は一人ひとり違っていた。




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