ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode27

『近づく理由』

― 一緒にいる理由が、少しずつ変わっていく。 ―

Day:Saturday(共同生活27日目)



Scene7

『少しだけ二人の時間』

Saturday|9:15 PM



夕食を終えた404 HOUSE。



リビングでは、

今日撮った写真を見返して笑う人。

ソファで映画を探す人。

食後のお茶を淹れる人。



穏やかな笑い声が、

家中にゆっくりと広がっていた。



その少し離れたキッチン。



水の流れる音だけが、

静かに響いている。



チアキは袖を少しまくり、

洗い終えた皿を一枚ずつ丁寧に拭いていた。



そこへ、

ミンギュがやって来る。



「手伝う。」



チアキは振り向き、

ほんの一瞬だけ言葉を探すようにしてから、反射的に答える。



「大丈夫です。」



その瞬間、

二人の目が合う。



一拍置いて、

どちらからともなく笑ってしまった。



「また言った。」



ミンギュが声を漏らす。



「……言いましたね。」



チアキも照れたように笑う。



「もう癖です。」



「うん。」



ミンギュはそう返しながらも、どこか言い足りないように視線を落とした。



「でも今日は聞かない。」



そう言うと、

ミンギュはスポンジを手に取った。



「俺が洗う。」



「チアキは拭く。」



「これならいいでしょ?」



少し迷ったあと、

チアキは小さく頷く。



「……お願いします。」



その返事に、

ミンギュは少しだけ嬉しそうに笑った。



二人は並んで立つ。



食器が触れ合う小さな音。



蛇口から流れる水。



窓の外では、

夏の始まりを告げる夜風が木々を揺らしている。



沈黙が続いても、

不思議と気まずくならない。



むしろ、

隣にいる気配が、少しずつ当たり前になっていくのがわかった。



その時間さえ、

心地よかった。



しばらくして、

ミンギュが静かに口を開く。



「今日、楽しかった?」



チアキは皿を拭く手を止めず、

それでも少しだけ声をやわらげて答える。



「はい。」



「久しぶりに、みんなと一日中一緒にいられたので。」



「最近は仕事の時間が違って、すれ違うことも多かったですし。」



ミンギュも頷く。



「こういう日、いいよね。」



「家にいるだけなのに、なんか特別だった。」



「そうですね。」



チアキはリビングから聞こえてくる笑い声へ耳を傾ける。



スングァンの明るい声。



スニョンの大きな笑い声。



誰かが映画のタイトルで盛り上がっている。



何気ない、

404 HOUSEの夜。



「最近。」



チアキがぽつりと呟く。



「この家に帰ってくると、ほっとするんです。」



「前は仕事が終わると、『やっと帰れる』って思っていたのに。」



少し照れたように笑う。



「今は、『みんながいる家に帰ろう』って思うようになりました。」



その言葉に、

ミンギュはゆっくりと頷いた。



「俺も。」



短い一言。



でも、

その声には、ただの同意以上のものが滲んでいた。



「もうすぐ404 Choiceだね。」



ミンギュが静かに続ける。



「なんか、不思議。」



「まだ共同生活は続くのに、ひとつの節目が来る感じがする。」



チアキも小さく頷く。



「そうですね。」



「少し緊張します。」



「でも。」



一度そこで言葉を切って、

チアキはほんの少しだけミンギュの方を見る。



「そのあとも、みんなと一緒に過ごせる時間を大切にしたいです。」



ミンギュは優しく笑った。



「うん。」



「せっかくだから、残りの毎日も楽しもう。」



「はい。」



その返事は、

以前よりずっと柔らかかった。



リビングから、

スングァンの声が聞こえる。



「二人ともー!映画始まるよ!」



「今行きます!」



チアキが答える。



ミンギュは蛇口を閉め、

手を拭きながら笑った。



「行こう。」



「はい。」



二人は並んでキッチンを出る。



歩幅が自然と揃う。



その距離は、

特別に意識したものではない。



けれど、

肩が触れそうで触れないその近さに、

もう前のような遠さはなかった。



27日間、

同じ家で過ごした時間が、

少しずつ当たり前に変えてくれた距離だった。



【STAFF NOTE】



人との距離は、

大きな出来事ではなく、

何気ない日常の積み重ねで縮まっていく。



「手伝う。」



「お願いします。」



以前なら言えなかった言葉が、

今では自然に交わせる。



404 Choiceは、

終わりではない。



三か月の共同生活の中で迎える、

最初の大きな節目。



その日を前に、

11人の心は少しずつ、

自分でも気づかない変化を重ねていた。



次回 Scene8【UNSEEN】



眠る前の404 HOUSE。



今日撮った写真を見返す11人。



何枚もの笑顔の中で、

ふと指が止まる一枚があった。



その理由を、

まだ誰も言葉にはできなかった。




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