ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode4
『距離の測り方』
⸻
Scene4
『夜のテラス』
⸻
午後8時45分。
ROOM 404 テラス。
⸻
夕食を終えた11人は、
夜風を感じながらテラスに集まっていた。
⸻
ソウル郊外の夜景。
⸻
街の明かりが静かに揺れている。
⸻
誰かが淹れた温かいお茶。
⸻
誰かが持ってきたクッション。
⸻
もう、
「借りてもいいですか?」と聞く人はいない。
⸻
自然と手に取り、
自然と戻す。
⸻
共同生活4日目。
⸻
少しずつ、
家族ではないけれど、
“同居人”らしい空気が生まれていた。
⸻
「恋愛禁止って意外と難しい?」
⸻
「そういえば。」
⸻
スングァンが夜景を眺めながら口を開く。
⸻
「この番組って。」
⸻
「恋愛禁止じゃないですか。」
⸻
「そうですね。」
ユナが頷く。
⸻
「でも。」
⸻
スングァンは笑う。
⸻
「意外と難しいルールなのかな?」
⸻
チェリンが首を傾げる。
⸻
「どういう意味ですか?」
⸻
「例えばですよ。」
⸻
「本当に好きになったら。」
⸻
「我慢するんですか?」
⸻
その質問に、
何人かが笑う。
⸻
「まだ4日目です。」
ソヨンが苦笑する。
⸻
「そんな空気じゃないですよ。」
⸻
「確かに。」
ミンギュも笑う。
⸻
「まだ普通に生活に慣れるので精一杯です。」
⸻
スニョンが肩を組む真似をする。
⸻
「僕なんて恋愛より洗濯物ですよ!」
⸻
「タオルの枚数ですね。」
ジョンハンが笑う。
⸻
「そうです!」
⸻
テラスに笑い声が広がる。
⸻
もし好きになったら?
⸻
ジウォンが腕を組む。
⸻
「でも。」
⸻
「仮定の話なら面白いですね。」
⸻
「もし好きになったら?」
⸻
スンチョルは少し考える。
⸻
「ルールは守ります。」
⸻
即答だった。
⸻
「スンチョルさんらしい。」
ユナが笑う。
⸻
「でも。」
⸻
スンチョルは夜景を見る。
⸻
「気持ちは止められないかもしれません。」
⸻
静かになる。
⸻
「それはそうですね。」
ジョンハンが頷く。
⸻
「感情はルールでは動かないので。」
⸻
「でも。」
⸻
「行動は選べます。」
⸻
その言葉に、
ウォヌが静かに視線を上げた。
⸻
チアキは?
⸻
「チアキさんは?」
⸻
チェリンが尋ねる。
⸻
「恋愛禁止って言われたら。」
⸻
「どうします?」
⸻
チアキはマグカップを両手で包みながら考える。
⸻
「……難しいですね。」
⸻
少し笑う。
⸻
「でも。」
⸻
「今は。」
⸻
「誰かを好きになることより。」
⸻
「ここで普通に笑って過ごせることの方が大事かもしれません。」
⸻
その言葉は、
飾りのない本音だった。
⸻
「それ、分かる。」
ソヨンが優しく頷く。
⸻
「まずは安心して暮らしたいですよね。」
⸻
「はい。」
チアキも微笑む。
⸻
カメラだけが映していたもの
⸻
話題は自然と変わる。
⸻
好きな映画。
⸻
休日の過ごし方。
⸻
旅行したい国。
⸻
笑い声が絶えない。
⸻
その時。
⸻
固定カメラが、
何気ない瞬間を映していた。
⸻
チアキが笑う。
⸻
その笑顔につられるように、
ミンギュも笑う。
⸻
目が合う。
⸻
ほんの一秒。
⸻
お互いに、
すぐ視線を逸らす。
⸻
誰も気付かない。
⸻
少し離れた場所では、
ウォヌが話を聞きながら、
ふとチアキへ視線を向ける。
⸻
ちょうどその瞬間、
チアキもウォヌの方を見る。
⸻
また、
一秒ほど目が合う。
⸻
ウォヌは小さく頷き、
チアキも微笑み返した。
⸻
それだけ。
⸻
会話はない。
⸻
意味もない。
⸻
……そう見えた。
⸻
【Interview】
ミンギュ。
⸻
「恋愛禁止。」
⸻
「正直、まだあまり意識していません。」
⸻
「まだ誰かを異性として見るというより。」
⸻
「一緒に生活する仲間という感じです。」
⸻
少し考える。
⸻
「でも。」
⸻
「この先どうなるかは。」
⸻
「分からないですね。」
⸻
【Interview】
ウォヌ。
⸻
「人との距離は。」
⸻
「近づこうとして近づくものではないと思います。」
⸻
「気付いたら。」
⸻
「隣にいる。」
⸻
「そんなものかもしれません。」
⸻
【Interview】
チアキ。
⸻
「恋愛禁止だから安心して参加できた部分はあります。」
⸻
「恋愛をしなきゃいけない場所だったら。」
⸻
「たぶん来ていなかったと思います。」
⸻
「だから今は。」
⸻
「この時間を大事にしたいです。」
⸻
【STAFF NOTE】
共同生活4日目。
⸻
「恋愛禁止って難しい?」
⸻
誰もが笑って、
「まだそんな感じじゃない」と答えた。
⸻
その言葉に嘘はない。
⸻
まだ恋ではない。
⸻
けれど。
⸻
カメラは、
人より少しだけ正直だ。
⸻
ほんの一秒長く合う視線。
⸻
相手が笑うと、
自然と笑ってしまう表情。
⸻
何も起きていない。
⸻
それでも、
何かが静かに始まりかけていた。
⸻
深夜。
⸻
編集室でスタッフが映像を見返している。
⸻
その日誌には、
こんな一文が残されていた。
⸻
Episode4 Scene5
【UNSEEN】
『共同生活4日目』
→
ノベルに戻る I
Addict