ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode28

『言葉の向こう側』

― 少しずつ”特別”になっていく日常。―

Day:Sunday(共同生活28日目)



Scene7

📖『404 Diary(第7回)』

Sunday|10:00 PM



夕食を終え、

食器を片付けた404 HOUSE。



リビングに流れていた笑い声は、

少しずつ静かな夜へと変わっていく。



テーブルの中央には、

見慣れた木箱が置かれていた。



その隣には、

十一枚のカードとペン。



スタッフからのアナウンスが流れる。



『404 Diary 第7回』



今回のテーマ。



「最近、一番安心した瞬間」



リビングの空気が、

少しだけ静まる。



誰も急いでペンを取らない。



一人ひとりが、

今日だけではなく、

ここ数日の出来事を思い返していた。



窓の外では、

夏の虫の声が静かに響いている。



風がカーテンを揺らし、

柔らかな照明がテーブルを照らしていた。



チアキはカードを手に取り、

ゆっくりとペンを握る。



「安心した瞬間」。



その言葉を見つめたまま、

少しだけ考え込む。



玄関を開けた時に聞こえる、

「おかえり」。



それは、夕立に降られて帰った夜だった。

チアキが両手に買い物袋を下げたまま玄関に立つと、

ミンギュはすぐに気づいて、

「持つよ」と袋を半分引き受けた。

濡れた前髪を見て、

無言でタオルを肩にかけてくれる。

そのあと、キッチンで温め直したお茶をマグカップに注ぎ、

「先に飲んで」と差し出してくれた。



疲れて帰ってきた夜、

待っていてくれた誰か。

何も言わず荷物を持ってくれた手。

「一緒に行こう。」



そんな何気ない仕草が、

胸の中に静かによみがえる。



小さく微笑むと、

チアキはゆっくりとペンを動かし始めた。



少し離れた席では、

ミンギュもカードを見つめている。



書こうとして、

止まる。



また書こうとして、

少し笑う。



思い浮かぶのは、

一つの出来事だけではなかった。



「おかえり。」



夜更けにソファでうとうとしていたミンギュの肩へ、

チアキが黙って毛布をかけてくれた。

起こさないようにテレビの音まで小さくして、

「寒くない?」と小声で聞いてくれる。

そのまま、テーブルの上に置いてあった冷めかけのスープを

電子レンジで温め直して、

「食べるなら、今のうち」と笑った。



「ありがとうございます。」



「今日は楽しかったです。」



何気ない会話ばかりなのに、

気づけば、

そのどれもが心に残っている。



ミンギュは静かに息をつき、

ゆっくりと文字を書き始めた。



スングァンは、

ペンをくるくると回しながら天井を見上げる。



「安心かぁ……。」



「意外と難しい。」



スニョンが笑う。



「考えすぎじゃない?」



「思ったままでいいんじゃない。」



「それもそうか。」



二人は笑い合い、

再びカードへ向き合った。



ジョンハンは迷うことなく書き始める。



ウォヌは一文字ずつ、

丁寧に言葉を選んでいた。



ソヨンは小さく微笑みながら、

静かにペンを走らせる。



ユナ、

ジウォン、

チェリンも、

それぞれの想いを綴っていく。



部屋に響くのは、

ペン先が紙を滑る小さな音だけ。



書き終えたカードは、

誰にも見られないよう二つ折りにされ、

一枚ずつ木箱へ入れられていく。



送り先も、

内容も、

まだ誰にも分からない。



それでも、

書き始めた頃より、

一人ひとりの言葉は確実に長くなっていた。



“ありがとう”だけでは伝えきれない。



“楽しかった”だけでは足りない。



そんな想いが、

少しずつ文字になり始めていた。



木箱の蓋が静かに閉じられる。



今夜もまた、

誰かの言葉が、

誰かの明日を少しだけ変えていく。



【STAFF NOTE】



共同生活が始まって28日。



最初は遠慮ばかりだった言葉が、

今では自然と誰かを思い浮かべながら綴られている。



“安心する場所”は、

家ではなく、

そこにいる”人”へと変わり始めていた。



そして、

その想いはまだ、

誰も”恋”とは呼ばない。



次回 Scene8【UNSEEN】



スタッフインタビュー。



「共同生活を始めた頃と比べて、一番変わったことは?」



それぞれが答える、

28日目の本音。



まだ本人さえ気づいていない気持ちが、

静かに映し出される。




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