ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode29
『離れて気づくもの』
― 人は、いなくなってからではなく、残していったものを見て気づく。―
Day:Monday(共同生活29日目)
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Scene2
『行ってきます』
Monday|01:00 PM
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昼過ぎ。
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夏の日差しが404 HOUSEの窓から差し込み、
リビングを明るく照らしていた。
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チアキは制服に着替え、
玄関でスーツケースの持ち手をゆっくり伸ばす。
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国際線勤務。
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次にこの家へ帰ってくるのは、
明日の夜になる予定だった。
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「忘れ物ない?」
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ユナが後ろから声をかける。
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チアキはバッグの中をもう一度確認し、
小さく頷いた。
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「うん、大丈夫。」
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女子たちの前では、
その返事もすっかり自然になっていた。
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チェリンが笑う。
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「その『うん』、もうかわいいから隠さなくていいのに。」
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「もう……。」
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チアキは照れ笑いを浮かべる。
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「皆に言われるから余計に意識しちゃう。」
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その様子を見て、
リビングにいたメンバーも笑顔になる。
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「そろそろ行きます。」
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チアキがスーツケースを引くと、
その音に気づいたように、
それぞれ部屋にいたメンバーが自然と玄関へ集まってきた。
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仕事へ向かう準備をしていたスンチョル。
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本を閉じたウォヌ。
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キッチンから出てきたジョンハン。
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テレビを見ていたスニョンとスングァン。
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いつの間にか、
十一人全員が玄関に揃っていた。
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「行ってらっしゃい。」
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ジョンハンが穏やかに微笑む。
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「気を付けてください。」
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ウォヌが静かに言う。
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「無理するなよ。」
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スンチョルの落ち着いた声。
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「ちゃんと寝るんだよ。」
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ソヨンが優しく笑う。
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「海外のお菓子、期待してる!」
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スングァンが冗談交じりに言うと、
玄関に笑い声が広がった。
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「またそれですか(笑)。」
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チアキも笑う。
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「時間があったら見てきます。」
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その笑顔を、
ミンギュは少し離れた場所から見つめていた。
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「……。」
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何か言おうとして、
少しだけ迷う。
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そして、
いつものように自然な声で口を開いた。
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「気を付けて。」
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「いってらっしゃい。」
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短い言葉。
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けれど、
チアキはその声に振り返り、
目を合わせて微笑んだ。
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「はい。」
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「行ってきます。」
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玄関のドアが開く。
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外から流れ込む夏の風が、
チアキの髪をそっと揺らした。
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一歩、
また一歩。
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スーツケースを引きながら歩き出す後ろ姿。
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「行ってらっしゃーい!」
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スングァンが最後まで大きく手を振る。
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チアキも振り返り、
笑顔で手を振り返した。
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ドアが静かに閉まる。
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その瞬間、
家の中は少しだけ静かになった。
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誰かがいなくなる。
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それは寂しいことではない。
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「また帰ってくる。」
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みんなが、
そう信じられるようになっていた。
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【STAFF NOTE】
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共同生活29日目。
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「行ってきます。」
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「行ってらっしゃい。」
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毎日のように交わされる、
何気ない挨拶。
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けれど、
その言葉には、
「待っているよ」という気持ちが、
少しずつ込められるようになっていた。
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次回 Scene3
『残っていたもの』
Monday|03:30 PM
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静かになった404 HOUSE。
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けれど、
チアキが残していった優しさは、
家のあちこちに残っていた。
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